(あ、れ…?)

……なんだ、これ。

最初に思ったのはそれだった。



──ここ、ペットショップ波風の店主、波風ミナトとその妻クシナは旅行が趣味らしく、本日からの二泊三日の温泉旅行の件で昨日の夜から浮かれており、
「二〜三日の間良い子にしてるんだよー」なんて言われて放置される金の犬ナルトと銀の犬カカシとしてはそれもまぁどうでも良くて、いつものごとく身を寄せ合い、ナルトはカカシに包まれる如くして眠った。

……のだが、今はその翌日だ。

起きるとナルトは全裸だった。

「……」

横になった状態で自分の手を見つめる。
犬だから日常茶飯事的に全裸なのだが、一言で言うと状況がいつもと違った。
肉球はなくて、指が長くて、自慢の金色の毛並みがない。
というか、手だけじゃなく全てが…

「カカシ先生」

思わず探して呼んだ名前は声に出た。
声…それすらもワンとは言わず、言葉で。

身体を起こして、探して見つけたその姿は、いつものカカシの姿じゃなかった。

銀色の髪の毛で、きっとカカシだろうと思われるそれは――明らかに人間の姿。
今のナルトと同じ、人の姿で全裸である。

眼を瞑ってすうすうと寝息をたてている辺りどう見ても寝ているのだが、この摩訶不思議な状況はナルト一人では対処しきれなかった。
「良い子にしてるんだよー」と言われて、いつも通り普通に過ごしていたつもりだ。
悪いことなんかしていない。
なのに何で朝起きたらいきなり人間になっているのだ。

ミナトやクシナはもう出掛けた後らしく、ペットショップ内にはワンキャンと犬達の鳴き声が響くのみで、ナルトは泣きそうになって「カカシ先生」と――多分カカシであろう男の肩を掴んで揺さぶった。

「んー…」

「カカシ先生、カカシ先生!起きてくれってば!」

「……」

うっすらとその瞳が開かれて、眠そうに「何」と呟く。
それでカカシも自分の口から出た声に、ん?と思ったらしい。
暫し固まった後、人間のものとなっている自分の手のひらを見つめた。

「な、先生、おかしいだろ!?俺もなんだってばよ!」

「……」

俺も仲間!と半泣きで言えば、カカシはモゾモゾと身体を起こし、銀髪をガリガリ掻いて、難しい顔で眼を瞑る。

「……」

そして暫くの沈黙の後、また眼を開けたかと思うと、言った。

「……ナルト?」

「そう!!」

「もうどうしていいかわかんねぇ!」と喚き、ナルトはいつものごとく抱き着き、頭をカカシの胸にグリグリと擦り付ける。
しかし、そこはいつもとは違う人間の姿でのこと。
いつもみたいに銀色の毛並みに顔が埋もれることはなく擦り付けた先にあったのは逞しい人間の胸板で「なんかカテェ…」と眉を寄せて顔を離した。









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