『HAPPY BIRTHDAY KAKASHI』とチョコレートで書かれたハート型のスポンジケーキが目の前に置かれ、銀色の尻尾がフサリと揺れた。
レジの金額を確認しつつ、そちらを視界に入れた赤髪の女性が身を乗り出して声をかける。

「なーに、ミナト。犬にケーキなんてあげたら、お腹壊しちゃうんじゃないの?」

「大丈夫。これ犬用ケーキだから。前から予約してたんだよ」

普段ドッグフードしか与えられていない銀色の成犬は見慣れない食べ物に警戒し、確認するようにクンクンと鼻を鳴らした。
その隣、成犬に擦り寄るように小さな身体を寄せて、金色の子犬も物珍しい餌に瞳をキラキラと輝かせる。


――ここは、ペットショップ波風。
犬猫を中心に取り扱う、名の通りのペットショップである。

人の良い主人ミナトとその妻クシナ。
また、特別に二人が買い取った銀色の成犬……カカシと、金色の子犬……ナルト。
二人と二匹は相も変わらず幸せに暮らしていた。

そして、今日はカカシの二歳の誕生日であった。
生まれた時、カカシはまだこのペットショップには連れて来られていなかったのだが、ブリーダーらの報告によると、九月十五日生まれなのだ。

『すげーこれ!うまいのかなあ?』

一方、誕生日ではないナルトは、ケーキとカカシの顔を見比べながら千切れんばかりに尻尾を揺らしていた。

『どうだろうね。お前、先に食っていいよ』

犬であるカカシとナルトは誕生日などと細かいことは理解し得ないので、これはカカシの為の餌というより、自分達の為の餌なのだという認識だ。
ナルトがカカシの言葉に従い、意気揚々と口を開けて頬張ろうとすると「コラ、チビ。ダメだよ」とミナトの膝の上に抱き上げられた。

「これはカカシの誕生日ケーキなんだから、カカシに一番に食わせてやらないと。お前にもカカシの後でちゃんと食べさせてやるから少し我慢しなね」

「ワン」

その後で「ホラ、カカシ」と促され、カカシはしげしげとケーキを見つめた。
どうにもあまり美味そうに見えない。
しかし、見上げると微笑むミナトは、どう見てもカカシに食べるよう促している。

あぐ、と口を開けて一口目を頬張ると、それを見てミナトがナルトを下に下ろした。
ナルトはすぐさまカカシの傍に駆け寄る。

『カカシ先生、うまい?』

『……ん〜……』

咀嚼した口を開けたままナルトを振り向くカカシの鼻先や口元の毛並みには白いクリームがついていて、ついでに鼻筋に少し皺が出来ていた。

『まじぃの?』

『微妙……甘いんだよね。ホラ』

頭を下げ、ナルトに顔を寄せると、ナルトも顔を寄せ、カカシの鼻や口についているクリームをペロペロと舐め取った。
口を開けてやれば、口移しでそのスポンジを頬張る。
結局、ナルトが一番にいただいているような形だ。
ナルトが可愛くて仕方ないカカシは、ナルトが欲しがるのであればナルトに先に与えてやって、自分は後回しでもいいのである。

はぐはぐと口を動かし、口の回りのクリームも舐め取ったナルトは『美味いってばよ』と喜びに興奮してブンブンと尻尾を振った。








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