『もっと食いてえ!』

『いいよ。良かったねぇ』

勢い余ってケーキに顔ごと突っ込んだナルトが微笑ましく、カカシ自身はケーキを食べずにナルトの耳の付近を毛繕いがてら舐める。
カカシの誕生日の為にケーキを買ってきたミナトとしては、この光景は本末転倒で「ちょっとチビ……」とナルトをまた抱き上げようとしたのだが……

「……ウォン!」

そこはカカシが吠えることによって威嚇した。
せっかくナルトが喜んでいるのだから、邪魔をするなという意味だ。

「ああ……ハイハイ、分かったよ」

諦めたミナトは腰を上げ、ぼやきながらクシナの方に歩く。

「ねぇ、クシナ……。最近カカシのやつの優先順位ってナルトの方がオレ達よりも上じゃないか?」

「何言ってるのよ、ミナト。そんなの前からじゃない。ナルトが来てからずっとそうよ」

「はぁ、せっかく誕生日ケーキ買ってきたのになあ」

「まあ……でも幸せそうだからいいじゃない?」

悪戯っ子っぽく微笑んで言うクシナの目線の先には、顔中をクリームだらけにしたナルトの顔を甲斐甲斐しく舐めて綺麗にしているカカシの姿がある。
ナルトはまだケーキを食いたがっているのだが、ナルトの様相を気にしたカカシが押さえ付け、先に手入れをしているのだ。

「確かに、結果食べてることにはなるけどね」

ははは、と苦笑いしてミナトは後頭部を掻いた。



誕生日であろうとなかろうと、ケーキがあろうとなかろうと、
二匹からすれば、カカシの傍にはナルトが、ナルトの傍にはカカシが、互いの姿があるだけで日々は幸せというものだ。

ナルトは直接的にケーキを平らげたおかげで、カカシは間接的にクリームを舐めまくったおかげで、それぞれ腹を満腹にして眠る夜は、いつものように寄り添うことで温かく更けていくのだった。














END(20110915)





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