ガチャン!とグラスがぶつかるような音が立ち、わいわいと盛り上がっていた周囲の視線は、一挙に一箇所に集まった。 飲みの席のテーブルで、音の発生源を確認した近くの者は眉をひそめ、声をあげた。 「ちょっと、誰よ?ナルトにそんなに飲ませたの」 つんけんとして言ったのはサクラで、 「自分で飲んだんだよ。飲み比べなんてやめとけってオレは言ったんだ」 面倒臭そうに答えたのはシカマルだ。 話題に出ているナルトは、耳まで赤くしてテーブルに突っ伏していた。ガチャン!はその時に手を当て、空になったグラスが机上に転げ、皿に当たった音だった。 俗に言う「酔い潰れた状態」である。 医療忍者の性質なのか、少し離れた席に座っていたサクラは腰を上げ、ナルトの隣にやって来ると、介抱でもしようとするように背中に手を添えた。 「飲み比べって誰と?」 「キバだよ」 「居ないじゃない」 「キバなら、今、トイレに行ってるわよ」 言ったのは、いのだ。 いいタイミングで、トイレから戻って来たチョウジが「ダメだ。キバ、相変わらず吐いてるよ」と疲れた表情で言った。 上忍や中忍を交えた一月の新年会。 集まったのは、カカシ班、アスマ班、紅班、ガイ班、それに加えて一部の特別上忍といった面々だった。 ナルト達も現在、十八歳だ。年齢だけで言えば立派な大人であって、また木ノ葉の法律からしても大人扱い、飲酒も可とされる年頃だ。 なので、こうして現実に飲酒をして……し過ぎて、片や酔い潰れ、片や胃に入れたものを戻しているという現状となっている。 もはや大人と子供という境界線がなくなった今でも、ジェネレーションギャップというのは確実にあって、三十路を越えた者達と未だ十代の者達の席はほど良く遠い。 「……ったく、しょうがねェな」 シカマルがぼやきながら、突っ伏しているナルトの腕を掴んだ。 「ホラ、ナルト。送ってくから帰るぞ」 自分の肩に腕をかけさせ、ナルトを担ごうとする。……と、ナルトは碧眼をうっすらと開けた。 *** カカシは、ナルト達とは少し離れた席で飲んでいた。 こちらはこちらで、酔っ払った特別上忍のくノ一に絡まれ、面倒な有様だった。 同列に居る若者連中が少し騒がしいなと思っていたところ、「カカシ先生」と向こうからシカマルが呼んだ。 上体を後ろに傾け、「何?」と訊ねれば「ちっと」と手招きされる。 「指名が入ったから悪いね」 逃げる口実が出来たと腰を上げ、シカマルの方に行ってから、カカシは異状に気付いた。 ナルトがぐでんぐでんになっており、辟易した様子のシカマルがそれを支えている。 「どうしたの」 「キバと飲み比べしてて、潰れたみてェです。すみませんが、カカシ先生、こいつ送って行ってもらえませんか」 「……えっ」 カカシは目を見開いた。 カカシはナルトの師であるし、ナルトより身体も大きい。面倒を見るという意味では適役かもしれないが、ナルトの同期も成長した今、送って帰るだけなら彼らにだって出来るのに、何故にわざわざ自分を呼んだのか。 カカシが聞き返す前に、シカマルが「まあ見てて下さい」とナルトの肩に手をかけた。 「ナルト、帰るぞ」 すると、ナルトは酒で赤くした顔をしかめてかぶりを振り、シカマルの手を振りほどく。 「……イヤだ!カカシせんせェがいいんだってばよ」 「こんな調子なんですよ」 「……」 眉尻を下げ、困った顔になったカカシを蔑ろに、シカマルは再びナルトに声をかけた。 「ナルト。カカシ先生が送って行ってくれるってよ」 唖然としているカカシをよそに、シカマルのその声を聞くと、ナルトは嬉々として反応を示した。 前へ 次へ戻る1/3 |