春に咲いた美しい花々を祝う華祭り。色とりどりの花を人々は楽しみ、華やかな日を送る。
祭りは盛大に3日間行われ、その間に花束を恋人に贈ると永遠に幸せになれるという。

「この地域特有の行事みたいだね。花のアートもあるらしいよ」

クロはそういってチラシを僕たちの前に出した。
美しき華祭りと大きな文字で書かれた宣伝文句と煌びやかな花の写真、ルネは隣で目を輝かせていた。うん…可愛いなあ。

「よくそんなもの持ってたわね〜。」
「さっき配ってたんだよ」

ルネが喜ぶと思って、とクロがいうと喜びそうで悪かったわねとクロの頬をつねった。

「来週だね!」
「その頃には私、仕事終わってるわよ」
「僕たちも終わるよ」
「じゃあ皆でいけるじゃない!」

髪をすべらせてルネはまた後で連絡するわと言って走っていった。
たまたま宿で再会した僕たちは同じ街で仕事を探す事になった。街は賑わっていたし、何やら人手不足だったようなのですんなりと仕事は見つかった。ルネも同じだったみたい。そんなわけで、僕たちとルネは一緒の宿屋で寝泊まりをしている。
ルネが笑っていた。あれは、はしゃいでいてくれているんだろうか。僕はホッと胸を撫で下ろす。

「あたし忙しいからじゃあね、なんて言われたらどうしようかと思ったよ」

僕の一言にクロは笑った。何それ、絶対言わないよだって…。
そこでクロの言葉は止まる。何か言いたげそうな妙な顔をした。どうしたの?と聞き返すとやっぱり何でもないと笑った。僕はクロが自分の飲み込んだ言葉を咀嚼しているように見えた。ちょっと気になるなぁ…。

「ボクたちも依頼終わらせよっか」
「…それもそうだね、そろそろ待ち合わせの時間だし」





「…で、働力が足りないと?」
「そうなんだよねぇ、どうしてもアートの方に人を持ってかれちまってねぇ。別に大した内容じゃないよ、当日までに鉢植えを持って行ってもらったりするだけだから」

僕たちが受けた華祭り準備の依頼、この時期にはそう珍しい事でもないと花屋さんは言った。そこら中から花という花が集められ、展覧会をするらしいから準備もそれは大変だろう。一番の稼ぎ時だとも教えてくれた。
美しさを競い合いながら商売もする。うん、一大イベントだ。

「男手がいると助かるよ。よろしく頼むねぇ!」
「「はい!」」

顔合わせをしたあとすぐに手伝いを始めた。用は荷物運びの依頼だ。
指定されたエリアに花を持って行き、店の形を作る。ついでにちんまりと花の花壇を作るためにその植え替え、土運び。一見楽そうな仕事に見えるけど、やってみると大変も大変だ。買った花や苗を運ぶ労働力として早朝から競りの同行もしたし、土は重くて固い。花の管理は難しそうだったし、何より数えきれないほどの花を持って行くのには時間がかかった。これは確かに、女の人だけだとつらそう。
だけど、皆笑いながら作業をしていた。花をどのように飾ったらより綺麗に見えるか工夫したり、隣のスペースの人たちと会話を楽しんだり。その日の休憩の時は紅茶を出してくれた。ローズヒップティ、お花の紅茶なのさ、とお花屋さんは自慢げに話す。
うん、美味しい。

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