「はあ!疲れた」

宿に戻ればすぐにベットにダイブする。僕の癖だと前クロに言われた。疲れてるときこうすると気持ちがいいんだよね。

「まだ結構量あったね。明日でおわるかな」
「終わらなかったら明後日も裏仕事だもんね」
華祭りの準備が終わり、僕たちの仕事は残るところ本番の1日間だけになった。今日はお祭りの一日目。人がごった返したから急きょ通行の整備とかしてすごく疲れたなぁ。一週間なんてあっと言う間なんだとつくずく思う。ルネとはちょくちょく話し合って最後の日に周る約束をした。
背伸びをして首を回すクロは、終わらなかったらルネに殺されちゃうねと苦笑いする。殺される、か。うんある意味あってるかもしれない。今回は違うけれど、理由がどんなに不憫なものであろうとルネが怒ると僕たちは頭が上がらないんだ。

「ルネは行きたいところチェックしてるみたいだよ」
「あぁ〜広いもんね、この前通ったところ全部フードコートになるらしいよ。」
「あはは、よく知ってる」

ルネ、行きたいところチェックしてるんだ。可愛いなぁ。
ルネは昔ガーベラが好きだと教えてくれた。花の形や香りが好きなんだそうだ、色も沢山あるからと。そしてなにより、花言葉が好きなんだと言っていた。花言葉、なんだっけなあ。
一度だけ、旅をしてるなかで花畑に出た事があった。ルネはそこへ駆け出して、はしゃいでいた。当時、凛としていていつもつんつっけだったルネの笑顔をみるのはとても珍しい事だった。それをみていた僕はルネに何よ、と言われたのが思い出だ。ルネは顔を染めていた、いつだって照れているルネは可愛い。
あの時から既に、僕にとってルネは特別だったんだ。

「楽しみだね」
「うん」

今日はもう寝よう。目蓋を閉じれば、ぐっすりと眠れるはず…。




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「本当に申し訳ないねぇ、売り子が怪我をしちまってねぇ」

足りない鉢を運んでいる最中に依頼主に話しかけられたので、僕は足を止めて向き合った。彼女は申し訳なさそうに眉を垂らしている。

「あんただけ明日もお願いできるかねぇ」
「僕だけ?…明日ですか?」
「やっぱりだめかい?」
「……売り子さんいないと、大変なんですよね。いいですよ」
「本当かい!ありがとうねぇ、御礼は弾むよ!」
「うわぁあぁはいありがとうございます」

僕の腕を掴み大きく手を揺する彼女。今にもスキップしそうな依頼主さんは、僕に背を向けると走っていった。それを最後まで見送った僕はため息をつく。

「あぁ、もう。どうしよう…」


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「えぇええ!!仕事が入ったぁ?!」
「ごめんってば…」

昼にあった話を二人にすれば、案の定ルネは立ち上がって僕をにらんだ。ひぃ…。ごめん…。僕だって本当はルネと一緒にいたかったんだ…。そんな僕の内心なんて知る由もないルネは納得がいかないとばかりに続ける。

「約束したでしょ!!」
「ルネ、落ち着いてよ!急な仕事は今までだってあったじゃないか」
「クロックスは黙ってなさいよ!」
「えぇ?!ひどくない?!」
「大体クロックスに相談もなしにどうして決めちゃったのよ!」
「いやだって…」
「別に僕は怒らないけど」
「もう!クロックスさっきっからうるさい!」

相当楽しみにしてたのかな、僕はルネがここまで怒るとは思わなかった。クロもそうなのか僕らは顔を見合わせる。多少怒るとは思っていたけど仕事の事なら何かと理解があるのに…。もしかして…僕がいないと周らないとか、いうの、かな…?

「僕がいないからって周るのやめなくってもいいよ?」
「やめないわよ!!」

うわぁ…即答されるとちょっと傷つく…。怒りを露わにしてルネは椅子に座った。

「じゃあなんで」
「なんでもないわよ!…もういい!!!仕事何時におわるの」
「え、えっと夕方かな…?」

殆どイベントおわっちゃってんじゃない!!とルネは怒鳴った。あーだ、うーだぶつぶつ言い始めこっちの話に耳も貸してくれない。

「あたしとクロックスは先に周ってるからアンタあとで合流ね、それでいいでしょ」
「え、あぁ、う「じゃあね!!!」

ルネは荒々しい音を立てドアを閉めた。残された僕たちはしばらくドアを見つめ、同時に後ろに倒れる。
「うわああ…よくわかんないけどかなり怒ってるよ、なんでぇ…。」
「ずごいピリッとした空気になったね」
「うんなった…。」
「ルネ楽しみにしすぎ」

そういうとクロは口元を抑えてくくく、と笑った。最近クロは小さく笑うことが多くなった気がする。っというかルネの事でよく笑えるな、すごいな…。

「殺気すら感じたよね」
「僕の事殺そうとしてるよ」

でも、仕事とは言え、申し訳なかったと思う。約束したでしょ、って言った時のルネの顔少し辛そうだったなぁ。ルネは、色々予定立ててたから楽しみにしてた分ショックだったのかもしれない。あとでまた謝らないと。


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