恋愛中毒※
(突発短編)


期待、なんて華やいだものは無かった。綺麗とか可愛いとか、そんな思いは一切無かった。

「これって、本に対する感想と似ていない?」

舌で彼女の曲線を辿りながら私は訊いた。
耳から出発した舌の現在地点はは乳首の頂。

「私ってさ、面白そうだなって思う前に、読みたいって思うのよ」

乳首に飽きた私の舌は、臍を目指す。

「たぶんさ、直感で動く人間なんだよね」

臍の窪み具合が気に入らなかったのか、舌は新たな谷を目指して進む。

「でも、読んでみると大抵がっかりする。途中で結末が見えちゃう。つまんないの」


「………んっ!」

新作の本――ならぬ、新しい彼女が、漸く人間らしい反応を見せた。
私に繰(く)られて、ここまで我慢した女は初めてだ。

――本物の本は、読者の時を忘れさせ、時に、ステイタスすら奪い、新たな身分を錯覚させる。

「君が、それになれるのかな?」

舐めながら、わざと挑発気味に囁くと、彼女は私の長い髪をすき、

「…吐いても知らないから…」

と言った。

「…その反応見て、もう一つ思い出したわ」

知的好奇心ではなく、動物的な食欲。
彼女は、食事だ。
読みたい、食べたい――抱きたい。

「飽きるまで、吐くまで、嫌いになるまで…んっ」

言葉を遮られるのと同時に、私の髪がピンと癖を正された。

「…人は、起承転結の決まった本でも、味の決まった食事でもないもん…っ」

「え、え、ちょっと待っ………」


そして、私の体は自由を奪われ、先行き不透明な快楽に囚われた。











「…まあ、要は攻めてるつもりが攻められたと言う話だよね」

「そんな簡単な話なの!?」


end

後書き

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