時は迫っている。 41.そして0と…。 結局『フローリアン家(?)に戻るが勝ち!』ってコトで今度はホンマモンの鬼ごっことなってしまった(しかも役割が逆転した)ソレから割と本気で死に物狂いになりつつ帰還を果たした。だってアノ子メチャクチャ足速ェーんだもん怖ェェよ! (そして後でわかったコトなんだけどあの鬼ごっこが周りに「あいつら仲いいなー」的な勘違いを与えてたとか考えたくないよ!)。 そんでもって廊下での騒ぎを聞き付けたらしいアリエッタ…だけならまだ良かったものをうん、まあ何というか当たり前で予想通りだったよね。アリエッタ、というか人の訪問にも興味津々だったもんね居間でじっとしてるなんてどだい無理な話だったよね。嗚呼。 アリエッタに続きドアからひょこっと顔を覗かせてしまったフローリアンに廊下から猛ダッシュキメてる私に手足が届くハズもなく、咄嗟に極めて譜術に似せた魔術(第三系)で奥の部屋までぶっ飛ばしたのは言うまでも略。そろそろ私はフローリアンに土下座をするべきだったので恐怖の鬼にドアはちゃっかり閉めつつもその勢いのままリアルにスライディング土下座を決めた。膝が摩擦熱(フローリング)で表皮が剥けた。いやむしろ取れた。何でかバリアフリーだったのでそれで済んだもののスライディング土下座は実際やるとあまり滑らない場所ではつんのめってしまい違う意味でヤバイと判明した。嬉しくない。モロ打ち付けた額とかかりきらなかったブレーキについにはでんぐりがえってしまった私にフローリアンが呟いた「あ、白だ」に私が真っ白になった。灰的な意味で。エプロンは着けてたもののモザイクの意味を成すハズもなくワンピース型なラフすぎる部屋着(フリフリヒラヒラ)だったし軍服の下みたいにパンツなチラリズムを危惧してのスパッツなんざ仕込んでなかったし。いやだって、おぱんつに幻術は、ちょっと…。 てか誰だよフローリアンにそんな知識植え付けたの研究員(=刷り込み)なの?そしてそれを命じたのは…エッまさかの総長?いやでも真面目に考えて刷り込みにそんなん入れるとも思えんしてコトは次いでフローリアンと長くいる人物によって要らん知識が増えたってコト? そんな、馬鹿な…。(犯人=私) とりあえず、背後の仮面に見られてないコトだけは切に祈っておいた。あいや、白いのでなく。ドアは閉まってたんだし。ついでに言えばバックプリントでしたが何か? まあ総長辺りから話は通されてそうだけどそれはそれ。見られん事に越した事はなかろうよ。しかもアリエッタをも一緒とか何それ身の破滅。ていうか原作自体破滅。 そのアリエッタだが、まさかのパンツ発言にアリエッタも真っ白(灰的な以下略)になっていた。 …うん、確かにコノ顔でその発言はアリエッタには刺激が、とゆかショックがデカすぎる。 *** 前は一ヶ月(しかも60日)に一日だけなんて月もあった。貰えなかった月すらあった。休みの話だ。 それがどうだろう。最近ではこうして普通に二日連続での休みもゲット出来ちゃっている。こうして見てみるに私の休日は地味ーに、いや確実に増えてやしないか。 フローリアンだのシンクだの総長的にそして原作的にも外せない人物の事があったとはいえ、かれこれ私最近これといった任務にすら就いてない。 お声が、かからないのだ。 クラス的にはまだ需要はある。後方支援に呼ばれるしその他も種々あるありすぎる雑務エトセトラ、エトセトラ。私は音律士(扱い)、そして治癒術師もとい対外的には譜術士だから(本来は魔術師である)。 そして、今現在の私の配属部隊は……。 休み。 それが何を意味していたのか、私は結構失念していた事になる。 「あっ…」 「…げっ」 流石に休日の人間を巻き込む事は少ないもののそうも言っていられない場合もあるのが神託の盾騎士団。何せタマの取り合いすらも任務の一部。よって捕まんないように人気のない通路を選んでたんだけどそれが仇となった。相手も同じような事を考えていたからかもしれない。 あれからたったの一週間。今日も今日とて普通に、つまりは週一という意味で頂けてしまった休みに教会内の隠密向きって意味で選りすぐりの(脱出)ルートを選びながらフラフラしていた。だからそう、そこはほぼ知られてない譜陣だった。きっと知る人間は両の手でもあれば足りる。 それこそ導師に近しい人物でもない限り……。 昔から在るのだったら『詰め込む』時間的に間に合わなくて知らなかったかもだけど、そんな古いもんでもなかったから。 そして譜陣を抜けたいわゆるワープ先でたまたま鉢合わせた人物と目が合いはたと固まった。 というか、目を見開いて且つ一瞬ぱっと表情を明るくし……かけたのだけど、すぐに何かを思い出したのかハッとし強ばらせ、最終的に固まるのに落ち着いたのは向こうさん。無駄に動体視力なんざあるもんだからバッチリ目撃しちゃったんだけどえっと、つまりはどんな反応?てか第一印象?いや正確に言うと違うんだけども。 私といえば、「ヤベー『げっ』とか言っちまったよ仮にも相手」と冷や氷モンだったんだけど。だって無礼にも程がある。 “あの子”のとこには一応たまに行けてたから、今日は久しぶりに実家に戻ろうかとか思ってたのだ。実はお母さんも随分と寂しがってたし。 だけどそんな予定も全部おじゃん。いや未来なんだから決定ではないんだけど、しかしそうなる気配が今から凄くしていた。 だって目の前には見知りすぎた顔。 それも……。 「っ!」 「あっちょ、そんな走ったらお身体に――!」 案の定勢いよく駆け出そうと、ていうか逃げ出そうとしたんだろうけど(…ナマエさんショック!)数歩も経たない内にしゃがみ込んでしまった。だってイオンじゃないから。 イオン……“様”、だから。 「とりあえず休める部屋は、っと……それにしても意外に早かったわ、うん」 緑っ子コンプ。 *** 教会はまだしも神託の盾本部で私服は目立つ。とはいえどっかでわざわざ着替えるのも面倒ってコトで着たげないとお母さん泣いちゃうんでゴシックでロリータなカッコのままイオン様を姫抱きにして彼の私室へ飛び込んだ。“まだ”導師守護役なんだから許される筈だ。本来ここは関係者以外立ち入り禁止だからねー。 …いやでもたとえそうでなくなったとしても私がどういった立場にあったのかは周知の事実だから逆に禁止される事はこの先も無いのか。無いんだろうな。教団なんて事情を知らん教団員で99%構成されてんだ、私が締め出しくらってたら逆に怪しまれるもんな。いやそれならそれでいいんだけど。誰がテメェみてえな小娘に片棒渡すかボケェ(勿論こんなチンピラってはいない)って感じだろう腹に抱えた一物からの仲間外れなら大いに歓迎だ。 以前アリエッタも目撃してた訳だし今もイオン様はイオンと寸分違わず同じ衣装。だからいきなり私室に連れてっても平気だろうと判断しての救急搬送だ。まさか神託の盾本部の医務室に連れてく訳にもいかないし。 いやしかし突っ込んじゃうケド…お姫様だっこてカッコ的には逆なような、いやどちらもされる側…?イオンはともかくイオン様だし。ぶっちゃけ当時(プレイ時)なんて「むしろ彼のがヒロインじゃね…?」と容姿も容姿で思うコトもないワケじゃなかったし。少なくとも私は。ティアごめん。 しかし久方ぶりの『再会』がコレとかね、ハハハ…。……。 せめて制服で会いたかったわ畜生。 「具合はどうですか?」 ベッド脇に立つ私(いつでもトンズラ出来るよう準備は万端である)に、イオン様は案外すんなり上体を起こした。まあそれもそう、か。 ベッドに横たわらせて直ぐ様ね、かけちゃったしね。 治癒術。 「す、みません……ええ、もう大丈夫です。――流石、話に聞いていた通り、ですね……」 出どころ聞いたら終わりそう。 「…お見苦しいところをお見せしました。しかも運んで貰った上治癒術まで、」 「そんな、導師守護役なんですから当然です。えっと……イオン、様」 「…っ」 私が導師つまりはイオンという人物と一対一の状況での様付けに慣れておらず微妙に区切り気味+悪く言えば取って付けた感が否めないの差し引いたにしても、さっきも含めこの怯え様。ただでさえ顔色が優れないだろうに今じゃ顔面蒼白だ。こりゃ誰か……まあ総長とか総長とかその一味とか総長だろうけど、なーんか言われちゃってる系だよね。それもかなり厳しく。 ……さしずめ『ナマエ謡手とは会うな』、とかかな。まーですよねー。 だってエベノス様亡き今バレる率が最もなの、私だもんねえ。私だって敵なら口も酸っぱくもなるわ。 でもその配慮(企てともいう)、ウチらにはもう手遅れだもんねー…既に一度会っちまってんだよクソー! …そら当初、イオンの言ってたよーに会わせて貰えなきゃ会わせて貰えないで騒いでたんだろがテメェ(勿論こんなチンピラっては…)ってのは否定出来ませんけどォォ!? 「あの、イオン様…」 今度はさっきよりスムーズに出た。よっしゃその調子だ自分。 患者の容体からして私の存在は極めて邪魔だというのはわかる。さっさと退室すべきだった。 ただ、これだけは言いたい。 きっと顔を合わせる事ももう殆ど……は、神託の盾にいる以上何とも言えないけど。 でも少なくとも私が今の私を強制的に終了させられたならば。まあ以前の、それこそ10年以上も前の最初の私に戻るとでも言えば良いんだろうがしかしそうなったら確実に減るのは明々白々。 アリエッタ……原作でのってここ、この世ではって付く事になっちゃうけど、騒ぐのも納得だよ。今言ったようにここではそんな事なくなっちゃった訳だけど。あっても別のところから来る鬱憤だろう。中々会えないって点は同じかもしれないが決定的に違ってる。 嫉妬する相手はいない。 今の私。つまるところ配属部隊、 ――『導師守護役』を解任されたらそう簡単に、まして一対一でお話出来る機会なんてまず、ない。 しかもこの導師、つまりこの彼では。 『周り』が許す筈がない。 |