長い年の、ハジマリ。 21.新年度は何かと問題が起こる 「えーと、笹川笹川……あ、あった!やったあ三人全員A組だよ!花、名前ちゃん今年もよろしくね!」 「ハイハイ、よろしくー」 「…よ、ヨロシクー…(まあ予想はしてたケドーッ!)」 ハイ、新年度早々平穏からまた一歩遠ざかった気がしてならない本日より並中2年生になりました苗字名前です。 1年生では奴等と同じクラスだったがために予想外な頻度で巻き込まれた訳だから、クラス替えのある進級時つまり2年目の始業式である今日にイロイロな思惑から願掛けをした。 しかし先程の京子ちゃんのセリフでわかって頂けただろうが、見事にその魂胆は打ち砕かれたのだった。 二人とも何だかんだで中学生の割にしっかりしてたもんだから…あー…まあ、京子ちゃんはふわふわした性格故に不安な所もない訳じゃないけども、精神年齢ピー歳の私でも普通に話せるレベルなため結局ずるずると関係が続いてここまで来てしまっている。 この分だと今年も……目に見えている。 …すっごく今更だが、なぜ去年最初の私の席京子ちゃんの真ん前だったんだろか。 「じゃ、教室行くわよ京子、名前」 「あっ待って花、あそこ見て!胴上げしてる人達がいるよ!凄ーい!」 「(うわぁ…)」 京子ちゃんではないが、三人で胴上げって確かにある意味スゴくね?なんて感想です帰りたい(※生前)。 「あーアレね。あのノリは…やっぱロンシャンじゃん。アイツいっつもマフィアがどうとか…全く、つくならもっとマシな嘘つきなよって感じ。しかも無駄に煩いし。――げ、同じクラスじゃん」 あ、あー…そういやいたっけそんなヤツ。花ちゃん含む他の人達も本気にしてないけど(まあ普通はそうだろう)彼一応マジもんのマフィアなんだよな。見えないけど。 一方的で申し訳ないが右に同じく「…げ、同じクラスじゃん」な心境である。もはや視界にすら入れたくないのだが当分その夢は叶わない。 *** 場所は変わって2-Aの教室にて。 今回は目ぼしい(=原作的)人物と席は全員離れたが、逆に今更すぎて意味を成さない。 ある程度仲良くなった子供というのはたとえ席が遠くても群れを成すものだ――ってこれじゃあどこぞの風紀委員長みたいな表現じゃないか。 しいて挙げるのなら窓際に近い席なので日差しが暖房器具通り越して凶器なのが傷か。ヒトだった昔ならあったかくて居眠り向きだったのにねー。夏ヤバいのは変わんないけど。 「ホラ、席着けよー」 宛がわれた席について思考を飛ばしていた私の耳に、台詞だけなら教師の物と思われるものの残念ながら声質は久しぶりに聞いた某赤ん坊の幼児特有のモノが聞こえてきた。 エ、今授業中…(=逃げられない)。 授業中に教室外を風紀委員の目を掻い潜ってウロつくとか何ソレ無謀。出来なくはないのが救いだけど。でもやらない。バレた時が怖いので。 …うん。とりあえず無視だ無視、アレはちょいと見た目の変わった教師だと思うのだ思え思い込め自分! 担任に不幸があったとかで代理だからと、教壇に立つあからさまにちっちゃすぎる教師(オイオイ何したよ)(つかリボ山て)に何人かは突っ込むものの、知ってる子もいるようなので前にも出没したのだろう。 大方去年度沢田君のいた元A組(私もだけど)での出来事ってとこだろうか。 実は私は見るのは初めてなので恐らく正当防衛的ズル休みをかました時とかその辺りなんだろうが、まあそんなのはどうでもいい話である。 そしてヤツによって学級委員を決める流れになったが、沢田君かお調子者の彼のどちらかを多数決で選ぶ事になりつつも、結局嘆き弾の効果とやらで同情票により後者に決まった。 何ていうかもう、本気でツッコもうとしたら片手が壊れて止まんなくなったワイパーみたいになりそうだったから、早く決まりやがれと私はどちらがマシかという消去法的な意見でさっさと沢田君に一票を入れた(が、効果は無かった)。 その瞬間を獄寺君にバッチリ目撃され何かグッジョブ的な合図を送られたりしたが、とりあえずこの日の学業?はそれ以上は何もなく無事終了した。 …いやしかし、成り行きを眺める(けして見守ってはいない)だけのただのクラスメイトAだった私なはずなのに、平和といえば平和なハズなのに…! 物凄く疲れた一日だった。 あのノリについていくのは私がとうに無くした遠い昔の若さとやらがあったとしても私には難易度が高すぎる。ゲーム的に言うなら星MAX10個だ間違いない。 私の記憶が正しければだが…アレにしばし巻き込まれる沢田君以下愉快な仲間達マジどんまい。ちょうガンバ。 「じゃあ名前ちゃん、また明日ね!」 「じゃあね、名前」 「うん二人とも、また明日ー…」 「折角授業半日なのにあんま嬉しくなさそうね、名前」 「お弁当が食べられないからかな?」 そうなんですいやおべんとじゃなくてですね。 新学期の開始後数日間は半日授業だから時間的にはあっという間なのです。…がしかし、早めに帰れるのはそりゃ勿論嬉しいのだけれどもそれ即ち日光が一番活躍中の時間帯に下校ってコトにもなるので結局微妙にプラマイゼロなんだよな。えへへ…。 教室から私の中でついに二年目突破したワケだが、授業終了と同時にそそくさと立ち去るそんな私の背にかかった二人の(むしろ京子ちゃんの)見解に私もドンマイ。 *** 人にもよるだろうけど、忘れた頃にやってくるモノほど面倒くさいコトってないんじゃないでしょーか。 「クフフ…お久しぶりですね」 「………ドウモ」 また、だと…。 よくわからない内に、というかわからなすぎて疲弊した2年最初の登校日である今日、迎えた深夜。 就寝後やけに色々とはっきりしすぎた夢を見始めた私は「もしかして、もしか……する?」と、瞬時に仮の姿を取り顔も二回目の人生時のモノへと戻した。以前は寝間着状態だったから今回はラフな普段着に見えるようにもしとく。やり方?幻術的な何かです。 …てゆか、今考えると仮の姿だった(=ベイベ〜)とはいえ、寝間着姿をヤツに見られたとか。仮にも相手は初対面しかも異性、何よりヤツ。 げきょ(悲鳴)。 予想通りか何なのか。 姿を変えた直後、背後に人の気配。やっぱりというか、それは南国果実な彼のソレ。 気分的にはどっと疲れた日ではあったけれど、だからといって南国果実が湧いちゃう(?)理由にはならないと思うYO!そう主張してみる。全ては心の中の地団駄に終わるけど。 誰だよ『また』なんて考えすぎっつったの私だよ畜生。 「あれから半年以上経ちましたが…元気にしていましたか?」 「ええまあ…」 精神はボロ雑巾ですが。 「……何かあったんですか?大分目が死んでるみたいですが…」 そう言いながらパッと見からは特に邪気もなくちゃんと心配そうな目でこちらを見てくる南国果実。 …あの!冷酷果実が!まだ二回しか会ってないいわばほぼ初対面かつ流暢に喋る空飛ぶ赤ん坊っつーかなり怪しい生き物に対して、てかそれ以前に他人の心配とか!(失礼) 一応見た目だけなら赤ん坊姿なだけあって彼も人の子、って事で気にかけたりもするのだろうか?謎すぎる、怖い。親切が恐怖とかどんな仕様。 私自身自分でも言ってるけど普通こんな怪しい赤ん坊いたら関わりたくヌェーって思わんのか。思わないんだろうな。じゃなきゃここに留まる事もなく、私に見向きすらもしないだろう。…むしろ興味深い、とか?そ、そんなバナナ…。 こいつはパイナップルだが。 …まあ、アルコバレーノとか知ってるんだし今まで色んなモン見てきてるんだろうから異常な生き物とか目の前に現れてもあんま驚かないのか。…そこらへんケッコー同じくー、なハズなのに、予想外の出来事とかすぐびっくらこく私は何なんだって話だけどね! てか、コイツにそんな目させる程死んだ目って何。…あ、こんな目か。 今日の授業(仮)はアレだったけど私には直接的被害は無かったのに。…一年間のツケか。そうか。 それにしても何でコイツこんなにフレンドリーなの…いつの間にかのほほんと二人して湖の畔で白に統一されたお洒落ぇなテーブルとイスに紅茶とお茶菓子広げてなんちゃってティータイム状態。流されてる私も私だが。 因みにきっかけは、南国果実の「ただ突っ立って話すのもあれですから寛ぎませんか」の一言。ちっとも寛げません、隊長! ここ精神世界だからある程度強く念じられれば思い通りの品とか用意出来ちゃう、つまり出現させられるんだこれが。身にはならんとはいえ、便利である。青狸か。…ええいこの際どこだかドアでもいいから降ってきてくんないかな。ドアくれよ。 いつの間にだよとか用意された準備にそんな事を思っていれば今やショコラ的な飲み物片手に優雅に寛いでいらっしゃる果実君。器用そうだとは思ってたけどこんなほのぼのした幻覚まで彼にはお手のもののよう。 流石、精神世界での立ち回りには慣れっこですかそうですか。まあ私もだがな。因みに私も貰っちゃったんだけどなチョコ美味い。 現実じゃあないというのにある意味全てがリアル。味とかその最たるモノ。 まあでも現実での幻術は物を自在に出す、とかじゃないもんねえ。あくまでまやかし。てかそれってなんて魔法。某英国魔法学校じゃあるまいし。 しかし薄暗い過去さえ無ければホス…執事とかウェイターとかまじでお茶の子さいさいなんじゃなかろうか。髪型はさておき物腰は基本丁寧だしな。 でもコイツの基本装備薄ら笑いだから客足は微妙そうだ。私には何故か適用されてないけど(見守るような、ホホエミ……ホゲッ)。 いやでも、腐ってもイケメン顔だしイケるのか…イケるのか? てかさっきからどうでもよすぎる事ばっかだな、私。だってコイツの纏うオーラとか雰囲気がもう記憶と違いすぎて。遠い目とか今や標準装備なんだが? |