復活 | ナノ


日射病や熱射病には気をつけて、水分補給は小まめに。
…欲を言うなら紅白での前者な色合いの飲み物とか。



18.イベントにアクシデントは付(憑)き物?



雲雀さんに原作的流れでは(多分恐らく十中八九)初めてとなる遭遇の後の事。一応女の子としてそのままってのもどうかと思いあえなくチョンパされた毛先を美容院で何とかしてもらおうと直ぐ様向かったはいいものの、カットしてくれる綺麗なお姉さんにどうしたらこんな切れ方…いえむしろ千切れ方に…?とでも言いたげな顔で首をかしげられるのを何とか笑顔笑顔でくぐり抜けた。因みに頬は終盤には引き攣った。

そしてその後、どこをどう間違えたのか改悪もとい進化させられた噂…あの苗字名前自殺未遂からまさかのスタントマン志望説(クラスメイトの娘達曰く、沢田君ら三人組によるモノらしく…おのれ!)がやっと収まり残暑もヒトにとっては多少は落ち着こうかという9月下旬な現在。

ここ並盛中学校はいつになく熱気を帯び、炎暑がまた堕ちて巡りでもしてきたのかと錯覚しそうになる程の賑わいを見せていた。

学校という組織上必ずといっていい程組み込まれているであろう一大行事――

体育祭の季節がやってきたからである。

準備期間である今、皆は開催日に向けて大なり小なり意気込んで特訓や飾り付けに勤しんでいる。私が積極的に参加するイベントなんて所詮オタク物くらいなので正直面倒デース!…と言いたいところだが――意外や意外、実は割とそうでもなかったりする。
どうやらこの学校全体を包む空気に触発されたからか私も結構ワクワクしているらしい。

しかも私にとって体育祭なんて二回目の人生時は記憶が曖昧とキてる。比較的マシなそれの生前から言わせて頂くなら一体どんだけ?な程に大昔なものだから、その半端じゃないケタの懐かし具合が否応なく拍車をかけてくるのだった。
何だかんだいって学生ならではのイベントは私にとって懐かしい物は多い。

どの程度かってまず第一に、たとえ友達とわいわいやらなくとも自分なりに楽しもうと思ってしまうくらいには。…まあ京子ちゃんに至ってはもう友達だと認識されてしまったようなんだけどねうん今更だよねアハハハ!…重ねて花ちゃんも私をクラスメイト以上くらいには思ってるようで…ハァ…。

第二に、例によって(奇跡的に)原作にあるのは思い出し(せ)たのに殆ど「?」状況だがしかしそれすら気にならなくなるくらいに……や、これは気になる。大いに気にしどころだどうしよう。どうしようもないけど。だって今の私の身分は所詮一中学生もとい一並中生。

この間の応接室(というか雲雀さん)全力回避の後は脳内図式(でしかないが)、「件の雲雀さん拠点>私咬み殺す」だろうと雲雀さんの優先度を私なりに忖度してみて仮病を用いてもセーフだろうと踏んだからそうしたのだけれど、今回その手はアウトだろう。風紀にバレてみ…?

でもま、そもそも体育祭とか団体もんでの穴ってのは当たり前だが周りへ大迷惑。私お一人の為にクラスメイト全員に被せる被害と後々お小言を私が蒙る(ぶっちゃけこれが本音…ッゲフゲフ)のは避けられないだろうよ。よって、所詮チキンになぞ連帯性を伴うイベント全面回避なんて初めから不可能だったわけだ。後々クラスメイトからの白目の筵なんて胃痛で死ねる。

時に、両親に体育祭の日程を伝えたところ。


「よーしやっと来たぞ名前の晴れ舞台!どんなにこの日を待ち望んだか…ッ!…そうだ同僚に頼んで絶対休みにしてもらわないと」

「入学式は逃しちゃったからね、私とお父さんでバッチリ応援に行くからね名前!ああそうだわあなた、デジカメとビデオカメラどこにしまったかしら?」

「ああ、それならそこの棚の…」

「…」


思いの外テンションが高すぎて些か引きそうになったっていう。

行方不明だった娘が元気に行事へ出られるのだから親にしてみれば嬉しい限りなんだろう。しかしこの歳で(年齢:???)両親揃って来られるのも恥ずかしいモノがあるってのをそこのデジカメだのビデオカメラだの掲げてテンションMAXなお二人さんおわかりですか。あ、愚問ですか。

私の競技全体を観戦して楽しむだけにしよう計画(まんま)はどうやらここに潰えたようだ。

しかしこんな楽しみにしてくれてるのにがっかりさせるのもなーと…まあそんなわけで、一応私が参加する種目はそこそこ頑張ろうと思ったのである。

…いかにセーブするかを。




そんな数日前を振り返りつつ、現在私は並中校内を散策している最中だったりする。徘徊じゃないよ!

まあ何、別に意味もなく右往左往しているワケではない。単に私が出場予定のとある競技に有利になるよう布石を敷いて…は大ゲサな気もしないでもないけどつまる所、言い換えるなら「どの教室に何が置いてあるのか確認するのとついでにこの際だからいい加減並中の構造を覚えてしまおう計画(まんま)(しかも長い)」を実行中ともいう。

実のところ嗚呼何というコトでしょう。なんとその競技は女子参加の中では一番の華っていう。
何でも今年から男子の棒倒しに対抗して考案されたのだとか。とりあえずこれが原作では描かれない現地にいるからこそ体験する(はめになる)流れかと若干白目になった。因みにたまたま沢田君に目撃された。ついでに「え、コレ女子の顔…?いやオレは何も見てないよホントだよ!」と言わんばかりに全力で目どころか顔ごと逸らされた。

経緯としては「苗字名前人外説」がこれまたなんと残念なコトに程よく知れ渡ってしまったせい。華ってだけあって棒倒し並に得点を稼げるこの競技に大抜擢!…といえば聞こえがいい事もなくないが、ぶっちゃけ満場一致(またの名を組織票)で私が選ばれたワケだ間違えた。押し付けられたワケだ。

推薦理由として春の体力測定やこの前の飛び下りそして生還事件、その上あろうコトかいつぞやの入ファミリー試験時の校門飛び越えを引き合いに出してきたヤツもいた。…ってあああまさかあの時は逃げるのに夢中だったからってこんなタイミングで弊害…!(むしろ塀害?笑えねー)。

言わずもがなテキトウに目立たない物に出場したいという私の意思は無視された。お前らそんなに私が嫌いか。いや苗字さんならってコトなんだろうけどねでも何でだろうね、信頼ってこんな視界がぼやけるようなモノじゃなかったはずなんだけどな。
ただ、私だけではなく一クラスから四人出るのが救いだ。因みにあとの三人の女子も際立って運動神経の良い子が参加する事になっている。流石華である。

そろそろ明かそう。
件のその競技というのが、そう――女子限定の障害物競走。ここまではまだ普通。多分目を瞑ってでも余裕で1位はイケそうだ。というかイケてしまう確実に。
それに華という程特別でもない。

しかし、である。障害物には色々な内容がブチ込まれ、そこに借り物競走もプラスされるときたのだ。
そうなると前半は良くても後半においては、私の場合話は変わってくる。

そして最後。極め付きに、その出題内容がこの並中敷地内にある物全てが対象と聞き、いよいよ私はボーッとしていられなくなった。

私は未だに並中全土はおろか、まだ自分の行った所くらいしか覚えてないのである。何がどこにあるかなんて無知もいいところ。
普段余計な遭遇を回避したい私が必要以上に校内をうろつくハズもなく。多少京子ちゃんに案内してもらった事もない訳ではないのだが、並中の構造についてはぶっちゃけ1年生の中で私は一番の役立たずだと思う。何てこった。だがしかし自信がある。

とりあえず自ら動かない事にはどうしようもなかったので、こうして空いてる時間を利用して体育祭まで校内徘徊をする事に決めた。…しまった自分で徘徊言っちゃったよ。
いやだって、本番になって人外能力に頼って探すのは反則ってモンだろう。イッヌも驚きのトンデモ嗅覚とか。あくまで今回駆使するのは身体能力、運動神経だ。いやソコもじゃね…?ってツッコミは……フッ。

…ふむ。これで何を注文されてもある程度は何とか探せるハズだ。

一応200m走やクラス別対抗リレー、全員参加型の競技等、他にも出場するがこちらは今更どうこうする問題ではない。むしろどう力をセーブするかだからね…。そして私の意思は強制である全員参加系以外何一つとして反映されてないコトもここに付け加えておこう。例えばラクに終わるのが最大の魅力な100m走じゃないのは200m走の方が距離に因るモノか得点が高いからだったり。皆さん配役はバッチリですねーこぞって自分に白羽の矢立てちゃうんですねー。…ちくしょうが!
まあ偏り回避や不公平からして一人辺り参加出来る数には勿論限度があったから既に色々参加が決まってる私が100、200両方出(され)るなんて生徒が一致団結する事に意味のある体育祭の意義が失われかねない配役こそありえなかったが。

だがしかし人選が終わる頃私ははたと気付いた。
私、足の速さが命な競技っつー競技、片っ端から背負わされたんじゃね?…と。

勿論、満場一致また名の(略)。

だがハメら…任された以上1位は取るつもりだ。じゃないとA組が優勝しなかった時とてもしんどい。こういった勝負事は敗因を他人になすり付け合う可能性大。特に皆はまだ中学生しかも沢田君に対する態度が既にアレである。
…対応が面倒くさい事になるのが目に見えている。

私は精一杯貢献したぞアピール作戦、ここに始動。
よし、くわだ…計画は完璧である。


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