(突発)短編 | ナノ


『○○出身職業××、未来のすがたは△△。』


私がどこかの児童書のように選ばれた人間だけのモノではなく本当は誰の隣にもあるのに何故か知られていないいや理由は知ってるけど、そんな“魔法もどき”が実在する世界に飛ばされたのだと知った時、既にいい歳してたにも拘わらず(三十路♪)拳を突き上げたのは記憶に新しい。

……嘘です。かれこれ数十年は前です。

なにせ死んだ記憶もないのに赤ちゃん、というか胎児からのスタートだったので。母胎にいる頃から意識あるとかおかしいと思ったんだよなあ。死に気づかなかったってことは事故だろうか。
今思えばそんなところから意識あるとか前世ある上に世界に合わせたガワ、私も魔法少女(笑)になれた以外の転生特典がそれだったのかもしれない。しょぼすぎん? もちろん急な命の危機に役に立つとかそんなことはなかった。

ちなみに今申し上げたようにそこでもおばあちゃんにはなれませんでした。だって魔法がある割に突然の命の危機、アッサリ殺されたから。……いや突然ではなかったな。生前推しにやべぇ目を向けていたし戦友も度々私の推し活に巻き込まれてはいたがそれは別の推しを推す彼女も同じ、私は大半の人と同じく推しの迷惑になる行為はしないタイプのオタクだった。確かに生きる中で割と高頻度で3、4時間の残業とか1ヶ月休み無しとかもあったが上司を刺したりはしていない。
けれどこれに尽きる、2回目の人生は産まれた場所が悪すぎた。恨みも買う。まぁ産まれた、っていうかそこに捨てられたんだけど。

流星街。

……そらそんなとこで生まれ育ちゃあロクな人格にも人生にもならない。かろうじて私は生前の知識があったからまだ良かったけれども、それだけ。食べる物に困ればやるしかなかった。
どんなことでも。

ここ、いわゆる貧民街なのだけれども、街全体でちょっと価値観が独特だったためそんなとこで出会った仲間がマトモなわけがなかった。これは後から知ったことだが、世界から見てもこの街はそうとうにあたまおかしい国だったらしい。いや街だけども。 
いつの間にか出来上がっていた映画とかでも見たことないような極悪集団(※私込み)は、私の見てきた限り女の心を殺す行為こそしないもののそれ以外だと男女共に容赦なし。とある民族殲滅とか大量マフィア殺し☆、……とか。

だから今度こそ明確に命を刈り取られる感覚はあったし、相手を恨んでいるわけでもない。自分より強い相手が出てきたら素直に負けを認めそれに殉じるのは当然――というのは実は旅団(極悪集団の名前である)で培ったモノではなく前世の常識がそうだったためこれにほぼほぼ無意識に従っただけだが、それでも恨みを買ってた覚えはめちゃくちゃあったし致し方なしといったところ。
実のところ仇討ちで挑んできた男の子――どうしても自身の明日の命が絡まない限りの私は大量虐殺系が無理で直接参加はしていないのだが、これを言っても仕方ないというものだろう。なにせ旅団の一味であることに変わりはなかったし、円滑に事が運ぶよう言われるがまま動いていたのは事実だったから。

――だから100万回生きるのは無理でも実際伝説にでも頼んだんか? 2回もチャンスがあったのに合計の歳が世界ギネスにすら届いてなくても、もう来世を望むべくもないと、そう思っていた。
地獄行きはもちろんのこと、生けるカミサマに魂辺りを(辺りとは?)跡形もなく滅されそうだよなぁとか思ってたから。


***


ああ、何だかとっても生ぬるい。

お母さんらしき方、わたしは早く出たいです。

そうして我慢しきれず予定日より随分早く私は行動を起こした。いやマホウは使ってないけども。
猛烈に前転とかしてみただけ。


「生まれましたよ! 元気な女の子です!」

「ぁあ……名前ちゃん。こんにちは、お母さんですよ〜」

「ううっ、良かった……良かった、本当に……!」

「あらあら、あなたったら泣いちゃって……」


柔らかく抱かれ、女の人のクスクス笑う声がする。ここだけ見れば今度は少なくとも捨てられることはなさそうな家族で心底安堵した。
色々すっ飛ばして今の状況を説明すると、私はこうしてありがたすぎることに再びの生を受けていた。名を苗字名前という。下の名前を後に言う辺り、どうやら今度の世界は最初の世界と近しい感じらしい。前回は外国式と似ていて名前=苗字と名乗るのが普通だったからね。





「名前〜ご飯よ〜」

「あーい(はーい)」

「えっ……名前、いま返事した……?」

「!! ……ば、バブバブバブバー!! キャッキャッ」

「、そうよね、気のせいよね。まだ1歳ですらないんだから……」

「……(こんなん前世の仲間に見られたら……ハハッ)」


そうしてまたまた時は流れ、御歳半年歳となった現在ですけれども。
あ、言ってなかったけどこうして何を言ってるのか早くもわかってる辺り、言葉は両親の喋る言葉の音数と新聞を照らし合わせて見るに恐らく発音が同じなようだった。えっ、参考のチョイスが渋い? いやぁ机にあったからさ。ただ何と言葉が同じなのは前世もだったのだけれども。転生(仮)してきて3回とも全て違う世界っぽいのに一体どんなミラクルなのか。

ただ字は音が同じくせして3つの世界全部違ってるのだからそこはまた頑張るしかなかった。
前世、かの盗賊団(これ別名ね)のリーダーが本好き且つ歳上だったため世話を焼かれる私はあれ読めこれ読めとドサドサーッと与えられてたからあんな環境にいながらにして字を覚えるのは早い方だったけれども、今生はどうやら平和らしいから図書館にでも通ってみようか。幼児が一人で行くのおかしいけど。


「きえいあふうぉあぁ。……ふいふいえーすあょ……(綺麗な服だよなぁ。……フリフリレースですけど……)」


平和、というのは生まれた瞬間もだったし家を見てもわかる。管理の行き届いた部屋、着させられた清潔な服。私にかけられる両親の声。懐かしきかな、といっても(私にとっては)1世紀も前ではないが、最初の私の家と同じ温かさがこの家にはあった。とりあえず今生はスリとかしなくても大丈夫そうで一安心だ。……普通はそこに安堵するんじゃないんだがな?

ついに魂からしてってことはカンプなきまでに今度こそ死んじゃうエーンとか思ってたという話についてだが、最初の世界での功績をカミサマが見ていてくれたのだろうか。いやでもそれなら2回目は相当残虐なことしてたんだし此度の転生とは。
そして残念ながら本とかでしかその存在を私は見たことがないため、どのへんが神の琴線に引っかかったのかは謎である。前述した友達の方がよっぽど本物に会う機会に恵まれていたし逸話にも事欠かなかったのだけれども。


(1/2)
[back] [top]
- 7/24 -
×