(突発)短編 | ナノ


『もしもオタクだが刀剣乱舞は知らない人間が飛ばされたら。』


「全く、あなたったら…彼最後涙目だったわよ」

「しょ、しょうがないだろう…自分の妻が男に囲まれる職業なんて聞いて平静でいられる奴がいたら見てみたいよ」


お父さんがこんな頑なな態度なのもわからんでもない。給金はかなりいいらしいが絶対に敵が押し寄せないとは言い切れないし、何より自分の妻がお父さんも言うように男所帯に住み込みなんて、夫からすれば耐え難い事だろう。住み込みが難しい場合は一応自宅と行き来という特例もあるらしいが、逆にそうなると刀剣が必ず一人は護衛としてウチに来る事になるんだとか。短い付き合いだけどお父さんがお母さんラブなのは見てれば、というか聞いてれば(腹の中)わかったし…うん、無理だな!


「まあ…ふふ、ありがとう。…でも、私程度の力でも戦力に欲しがるなんて、話には聞いてたけどよっぽど人手不足なのね」

「力の強い弱いってそんなに影響するものなのか?ただ刀剣男士を召喚出来ればいいってだけじゃないのか?」

「…いいえ。審神者やってる友達の所がまさにそうだったんだけど…私も目の当たりにしちゃったんだけど、例えばあんまり力が弱いときちんとお呼び出来なかったりするの。珍しい子が中々来なかったり、酷いと本来大人の姿で出てくるはずの子が子供の姿で出てきちゃったり…とかね。ああそう、ちょうどあそこにいるくらいの子にね、成人男性のはずがなっちゃったりするの」


お母さんの声が聞こえたらしい。灰色っぽい何か(顔までは見えない)がこちらを振り向いた。言ったのは私ではないが、あっやべと思う間もなくとたたたと軽い足取りでこちらに向かってくるではないか。
お母さんが「あら、あの子は…」…知ってる子らしい。


「今剣くん、こんにちは。…ごめんなさい、聞こえてたかしら」

「こんにちは、おねえさん。いいえ、きにしないでください!」

「知ってる子か?」

「ううんあなた。この子がそうよ、だから知識としては知ってるけど知らない子、ってなるの。私は友達の所で見た事があるから、それで」

「ああ、成る程」


お父さんにはそれで通じたらしい。私にゃまだわからん。
とりあえず、いまのつるぎくん?が子供な見た目に反し礼儀正しそうなのはわかった。


「わあ…!かわいいややこですね!」

「ふふ、ありがとう。名前っていうのよ。因みに女の子」

「名前ちゃん」

「良ければだっこしてみる?」

「えっいいんですか!」

「ええ、はいどうぞ」


いまのつるぎくんに合わせて屈んだお母さんが私を彼に手渡した。見た目は小学生だが、恐る恐る抱き抱えたものの中々どうしていまのつるぎくんのだっこは上手だった。

お母さんがしてくれるのと同じように優しく抱き抱えられる。


「ちっちゃい…」

「まだ1ヶ月だからね」


男の子の大きな瞳と目が合った。長い灰色の髪と真っ赤な瞳だ。…って、その現実離れしたカラーリングに男の子にしては長すぎる髪…これ刀剣男士か!ヒエエ、ようやく顔認識出来たけど確かにかわええわ…!乙女ゲー、乙女ゲーか!?


「……ふしぎなかんじがしますね」


ぽつり、と私にしか聞こえないくらい小さな声で呟いたいまのつるぎくんの言葉にドキリとした。えっ、まさか。まさか、もう転生者ってバレた!?あ、侮れねえ刀剣男士…!
どうやら幼い見た目と中身は勘に関してもそぐわないらしい。コナンか。

…さてどう誤魔化すか。つっても今の私じゃ笑顔くらいしかなくね?なんて冷や汗をタラタラ流してると「ぼくのしりあいににてるきがします」あ、そういう事ですか。びびったー。
…それはそれで不安じゃね?付喪神のお仲間とかそれ同類じゃね?

とはいえ自慢じゃないが、ってかこれ私の顔じゃないから言っちゃうんだけど、私のニューフェイスは特別器量よしというわけでもなかったつまるところごく普通の両親どちらにもいい意味で似ていない。(二人ともごめん)。まるでどっかから連れてきたみたいに似ていない。つまり、美人。下手したら人外の類いと言われても相違ない。やや切れ長ではあるものの目はおっきいし睫毛も既に長いし、高すぎず低すぎずな鼻は小さい。勿論赤く熟れた唇もちょうどいい大きさと厚さをしている。肌も外人さん並に白い。まあこれはまだ日に焼けてない赤ん坊だからかもしれんけど。

生前の私からすれば眩しいくらいの美幼女、いや美幼児ちゃん。それが今生での私だった。もう赤ちゃんモデルとか出せばいいんじゃね?とか思っちゃうくらい。子供の間だけで良ければ出ますよ、なんたって泣かないし。まあ逆に泣けと言われたら困るんだけど。好きなキャラが死んだ時相手がいないと思ってたキャラに女の影がチラついた時。他には、現実的な話なら衣裳ペン入れ終わらん時とかの記憶フル動員すればイケるかな。たまねぎ刻めば一発だろうけどいかんせん赤ん坊だし。
幼い時に可愛かったからといって成長してからも可愛いのかどうかは知らんけども。

何の神?それともまさかの妖怪か?いまのつるぎくんがよそ見をしている時だけうさんくさそうな目で見ていると、保護者らしき人物が「今剣!ここにいたのか」と言いながらこちらにやってきた。あ…もしかしてこれが噂の審神者…って男の人やんけ。男…乙女ゲーじゃないのか?いやでも、そういえばお父さんに適性はないとか一応診断したっぽい事言ってたしな…うーん、わからん!
因みにいまのつるぎくんが再びこちらを向いた時にはどこを見ているかわからないペコちゃん顔をさらしておいた。ペロッ


「あーっすみません!うちの今剣がご迷惑を…ってちょっおま、赤ちゃんまでだっこして…!?おおお、落とすなよ!?」

「あら大丈夫ですよ。今剣くん、ちゃんとだっこしてくれてますもの。とっても上手ですわ」

「そうですよあるじさま!ぼく、おとしたりなんかしません!」


◆◆◆


あるじさまよりもっとびじゃくなきをまとうにょしょうがぼくにちゅういをむけたとき、ふだんならとくにきにせずききながすところをそのときはなぜかかのじょのうでのなかがみょうにきになり、ついたちばもわすれてそのひとたちのところへとやってきてしまいました。あるじさまにまってるよういわれたばしょからほんのすこしはなれたところとはいえ、これがしゅめいだいいちなかれなどにしれようものならおこられそうです。

みればそのこはとてもちいさく、おおきなひとみでぼくをいっしょうけんめいみつめてきました。うまれてまもないようですが、ふわふわしたかみもたくさんあります。これがあるじさまがたまにちいさくあいらしいこをみつけてはつぶやいていた「しょーらいゆーぼー」ってやつでしょうか。

名前ちゃんをおねえさんにかえしたあとも、ぼくのてにはあたたかさとやわらかさがしばらくのこったまま。
……。

よし。あるじさまもすこしまえにしゅうげんをあげたことですし、ちょっとさいそくしてみようかとおもいます。




それにしても、ぼくたちのようでもないのにかみとひとみがくろやちゃでないなんて、めずらしいですよねぇ。


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