14/07/03 23:45
続き...



海風に煽られた流璃の長い髪の毛が靡いて、霞は身震いをした。
春のくせしてまだ寒い海の傍に、ふたりだけでいる。吹き抜ける風はけして温かいものではなかった。
風に煽られっぱなしでぼさぼさになってしまった髪の毛を手櫛で直しながら、流璃が欠伸をひとつ。
それを手持ち無沙汰に眺めていた霞もつられて欠伸をすると、流璃がきょとんと目を瞬かせ、笑った。


「欠伸、移ったね」

「うん、移った」


空は青と鈍が混ざったような中途半端な色合いで、まあそれも悪くないと言ったのは霞だった。流璃も概ね同じ意見だった。
防波堤にふたり並んで立っていると、ぽっかりと空いた空洞が埋まるような気がしていて、2人は、ここにくるのが好きだった。
どんなものとも、分かりやすく分かり合えないから、2人でいる。


 



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