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『…行っちゃったね。』
「…」
一か八かジョルノが無線で敵の所在を知らせる賭けに出ると、それに素早く反応したミスタが敵に弾丸を命中させて何とか一時しのげたらしい。そこまでは良かった。
『いやさ、トラックが走り出したからって乗ってく?仲間待つか、タイヤに一発ぶち込んで足止めすれば良かったのに』
「彼らしいと言えば彼らしいですけどね」
敵が逃げ込んだトラックにミスタもしがみつき、なんと相手の正体も分からないまま彼は乗り合わせて走り去ってしまったのだ。
『でも多分、生首のお仲間は一人だけだから意外と何とかなるかもね』
「どうしてそう思うんです?」
『いやだって、あんなに慎重深いやつが何人もゴロツキ連れてくる?ああいうのは、カネが絡むと本当に信用できる一握りのメンバーとしか組まないと思うね。それに無線に出た時も2回とも同じ声だったし、逃げるってことは近くに仲間がいないんだよ。仮にいたとしても、乗り物使うくらい遠く離れてるから、その間にミスタが決着付けてくれるはず。』
「なるほど、さすがブチャラティが見込んだだけのことはある。レイは頭の回転が速いんですね。」
『え、もしかしてバカにされてる?』
「まさか。褒めてるんですよ」
いまいち感情の読めないジョルノにお世辞めいたこと言われると背筋がゾッとする。でも今なら、ずっと聞きたかったことが聞けるかもしれない。
『ねえジョルノ、そんな頭の回転が早い私から一個質問していい?』
「ええ、なんでしょう?」
『ポルポ殺したのってさ、あんたでしょ。』
「…なぜ、そう思うんです?」
少しの間の後、ジョルノの訝しげな声が低く響いた。
『あんたがライターを返した次の日にポルポが死ぬなんて、ちょっと出来すぎてるよなーってね。もしかして返す時に何か小細工でもしたんじゃないの?そう、例えば…拳銃を食べ物に変えるとか。』
ミスタの話ではポルポは自分で身動き取れないほどふくよかだったらしい。そんな体型を維持するには常に食べ物が口に運ばれなくてはならない。その中にもし植物系のもの、野菜や果物があったとしたら?最後に彼がくわえたものというのはずっしりとした拳銃だったらしいけど、ジョルノなら植物を拳銃に変えるくらい出来るはず…いや、そんなこと、きっとジョルノにしかできないだろう。
「…そうだとしたらどうしますか?」
『どうもしないよ。というかどうしようも無いし。てかそれはこっちのセリフだよ。私のことどうする?殺して海にでも沈める?』
「そうですね…正直、驚きました。」
『え、ごめん全然話噛み合ってないけど』
「いや、すみません。僕は君の力を見くびっていたようだ。レイ、あなたの強みはスタンド能力じゃあない。その核心に迫るような…勘の鋭さだ。君はきっとこのチームを良い方向へ導く存在となる。」
『それは…どうもありがとう』
こんなつらつら褒められたら、妙に小っ恥ずかしくなってしまう。茶化して誤魔化そうと思ったけど、ジョルノのこのエメラルド色の真っ直ぐな瞳で見つめられると変に取り繕うことができなくなる。でも、こんな言われた方がどぎまぎしてしまうような言葉も、きっと彼の本心なんだろう。
『ジョルノは良い人…だと思ってる。だからポルポの件も何も干渉しないし、誰にも言わないよ。』
「そうしてもらえると助かります。レイ、そして僕やブチャラティたちはこれから、もっとのし上がっていかなくちゃあなりません。」
これはあくまで通過点、そう言わんばかりの態度には尊大さは微塵もなく、芯の通った強い意志があった。そして、そんなジョルノにはなぜだかとても信頼できるものを感じる。それこそ、彼といれば私が元の世界に帰る方法も見つかるかもしれない…なんとなく、そんな気さえ感じるほどに。
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