学生服の魔法使い1
「折原君。生物部だったよね。これ、記入お願い」
差し出した『活動報告書』を受け取り、折原君は首をひねった。
「白井、生徒会だっけ」 「? うん」 「部長の顔か名前くらい覚えなよ。こういうのは部長の仕事でしょ」 「あ…御免、てっきり。じゃあ岸谷君に渡しておいてくれる?」
そう言うと折原君はすっと目を細めた。
「…もしかして白井さ、新羅のこと嫌い?」
今朝の件を話すと、当人は不思議そうな顔をした。
「何で?僕別に白井さんに何もしてないと思うけど…むしろこの間だって話したし」 「そうなの?」
新羅は食虫植物にエサをあげながら、うん、と何でもなさそうに頷く。 生物部の日課なんてこんなもので、活動報告書に書く内容はさぞ困るだろう。
「兄弟いる?って聞かれてさ、どうも自己紹介の時、両親離婚して3人暮らしだって言ったの覚えてたみたいで。セルティのこと話したんだ」 「あの化け物のこと?そりゃ引くだろ」 「違う違う。ただ好きな人と暮らしてるって言っただけ」 「ふうん。汚らわしいとでも思ったのかな」 「さあ」
他にも申し訳程度に育てている観葉植物や、メダカなどに水やエサを与え、適当に観察記録をつけていく。
報告書はというと、案の定部員の欄以外はほぼ白紙状態だった。
「こういう、事実から無理矢理それっぽく書くのって臨也得意じゃん。どうにかしてよ」 「というかコレ、必須提出なの?去年まで無かったよね」 「んー。多分任意」 「じゃあいいじゃない、別に」 「や、でもわざわざ渡しに来てくれたんだから、書かないとなーって。僕ら部員2人だし、先生からの評判気にしてくれたんじゃないのかな」 「嫌いな奴の評判のため?…なーんか腑に落ちないんだよね、あの子」 「臨也が人の真意を汲み取れないなんて珍しい」 「そんなことはないさ。分からないからこそ、面白いんじゃないか」
そうかな、と新羅はあくまで納得しなかったが、それ以上は平行線だとお互い気付いてやめた。
その代わり、ほっぽり出されたままの報告書を記入していってやる。
「毎日の活動?『部長の妄想上の未確認生物について議論する』っと」 「ちょちょちょちょ臨也!真面目に書いて!」
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