41さて、この状況
「さて、この状況どうするか」
屯所内全員を叩き起こし、手短に現状把握する。 わかったことは、屯所内全ての時計が外されていたこと、全員分の携帯が無くなっていたこと、更には靴下も靴も無くなっていたことだ。
そしてそのうち時計と携帯は見つかった。 離れの倉庫にぐちゃぐちゃに置いてあったのを隊士が発見した。 しかし時計は全て電池が外されており、結局は使いものにならない。携帯は電池切れ。そしてブレーカーは落ちていた。 電源が入れれるまで時間がかかる。今何時なのかは未だに分からない。 そして総悟と山崎の携帯だけ見つからなかったのも少し気になる。
全ての犯人は、言わずもがな祐季だ。 本人は姿を消していた。恐らくもう現場に向かったのだろう。 携帯で確認すればいいと思っていたので、俺達も向かおうにも正確な場所が分からなかった。
「くそ…。アイツ、随分手の込んだことしやがって」 「たった一人で、一晩で、俺にも気付かれず、…これだけのことをやったんですかね」 「いや…流石に無理があるだろ。昨日万事屋んとこ行ってたんなら、依頼したって可能性も無くはない」 「そうですか…。でもなら尚更気づかなかったのは失態です」
山崎が悔しそうにそう言う。 監察である山崎でさえ気づかなかったとは、祐季もそこまで本気だったということだろう。
「一体どうしてこんな…」 「祐季を取り戻すためだろ。俺達と、祐季の為だ」 「…そんな…!」 「…あのバカ野郎が」 「副長ォォォー!」
と、隊士の一人が近づいて来る。 どうした、と聞くと、
「沖田隊長の携帯、見つかりました!隊長は何処ですか!?」 「よくやった。今は多分部屋にいるはずだ。俺も行く」
…アイツが総悟の携帯を隔離するということは、必ず意味があるはずだ。 そう踏み、俺はその隊士と山崎も連れ、総悟の部屋へと急いだ。
携帯を受け取り、電源を入れると、きちんと起動した。
「…しっかり充電してあらァ。時間も解りますぜ」
今は約束の時間の30分前だった。 昨日大まかに調べた時点で、そんなに掛からないと予想している。 車で飛ばせばまだ、間に合う。
「……」
携帯を開くとすぐ、音楽フォルダが起動した。 新規の無題ファイルが一つだけある。 …こいつァ…。
「…おい、総悟?」 「静かにしてくだせェ土方さん」
立ち上げると、…予想通り、祐季の声が聞こえてきた。 …出掛ける前にこれを録音して行ったのか…。 音量を上げると、土方さんや山崎らがそれに気付き、黙った。 静かになった部屋で、俺は目を閉じ、祐季の言葉に耳を傾けた。
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