21土方さんっ
正直なところ、土方さんに勝てる気はしない。 沖田さんのときもそうだったけど。 あとちなみに銀さんとか九兵衞にも勝てる気はしない。新八くんにならギリかなってところだ。あ、あと神楽ちゃんも無理。 だからまぁ、力試しって感じかな。いや、ハードル下げる訳じゃなくてね。 むしろ上げる方向で!
「土方さんっ、私勝つ気でいますからね!」 「ほォ…、言うじゃねェか!」
距離を詰めて銃弾をくぐりながら、土方さんが笑った。
「でもな。言っとくが――、お前は俺達にゃ絶対に勝てねェよ」 「え――?」
『俺達』? 土方さんや沖田さんのこと? しかし―そうでもないように思える。
「どういう意味ですか?」 「以前の祐季ならまだしも」
キン、と私の弾を木刀で弾く。私にも何度か踏み込まれたが、紙一重でかわしてきた。 互角、とは口が裂けても言えないけど、絶対と断言されるほどに力量に差がある…とは、思えない。
「今のお前は、俺達真選組には勝てねェ。まぁ試合に負けた奴らはただの実力不足だが」 「……っ」 「何でか分かるか?」
割と肉薄してギリギリのところを撃ったり打ち込まれたりしているように思えるが、息の上がっている私に比べ、土方さんは確かに余裕そうだった。 でもでもっ、そう簡単に負けたくはない!
土方さんからの質問に首を振り、時期を見て勝負を仕掛ける。 囮の銃弾を放ち、このまま銃身で――突く! しかし――
「教えてやるよ。それはな、お前に―戦う理由が無いからだ。守るモンがねェ人間に、俺達ゃ負けねェ」
―あっ…! 突き出した銃身を、横から素早く叩き落とされた。 ガシャンと音を立て、私の手から離れた拳銃が数メートル先に落ちる。 そして、勢いよく木刀の先が喉元に迫り―
「悔しかったら、テメーの命張ってでも守りてェと思えるモンを見つけるんだな」
突き刺さる数センチ手前でピタリと止まり、優しく頭を木刀で叩かれた。
―「弾はゴム弾。刀は木刀。相手の身体に触れたらそいつの勝ちだ」
「――止め!!勝者、土方十四郎!」
こうして私は、やっぱり土方さんにも敗北したのでした。
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