17お前は負けた人数×週間分
それから一週間後。 ようやく修行という名の指導も終わり、私は無事に銃の扱いを習得した。 よく分からないけど、師匠が「100年に1度の天災だ」とか「前までの祐季ちゃんが下手糞に思える」とか何とか言ってた気がするけど、とにかく卒業。 すると早速土方さんが、
―「どれくらい出来るようになったか見せろ」
と言うので急遽模擬試合が開かれることになった。
参加メンバーは真選組'sほぼ総動員。 私vsその他真選組全員という形でやっていくらしい。 おいおいおいおい私どんだけ手練れ設定だよ。 たかだか1週間のほぼ初心者だよ!?
「祐季。お前は負けた人数×週間分指導やり直しだからな」 「ええええ私もそろそろ真選組のお仕事したいです!」 「まぁ、お前は銃でリーチがある。対してあいつらは刀だ。楽勝だろ」 「いやいやいやいや!」 「弾はゴム弾。刀は木刀。相手の身体に触れたらそいつの勝ちだ。さぁ野郎ども、始めるぞ!」 「「「おおおーーーッ!」」」 「えっ嘘っ、ってかなんで皆そんなモチベーション上がって、」 「勝ったら祐季を好きにしていい権利を得られるんでィ。紅一点も大変だなァこりゃ」 「おおおお沖田さァァァァん!?何それ聞いてないです!土方さんもそんなんでいいんですか!?」 「まぁ、いーだろ、そンくらい」 「私の身体安っ!!」 「勝てばいいだけだ」 「うわああああん!」
半ば無理やり試合が開始され、真剣勝負が繰り広げられる。 最初は1対1で無事に勝ち続けていたが、だんだんと1対2、1対3と相手取る人数が増えていった。
「ちょちょちょ、女の子一人に相手に8人がかりとか!」 「祐季ちゃあああああん!」 「うああああああ!」
悲鳴と雄たけびが混ざりながら、なんとか無敗のまま試合数を重ねていく。 でも気迫では負けた気分です。 …それから細かく休憩を挟み、1時間ほど経つ頃には、
「お疲れ様〜。お、もう山場だね。残りは沖田隊長と、副長と、局長だけだよ」
山崎さんがタオルを差し出してくれる。 受け取りつつ、疑問を口にした。
「あれ?山崎さんは?まだですよね?―あっ御免なさい!地味すぎて戦ったのに気づきませんでした!イヤホントすみまっせん!(笑)」 「やめて!俺の仕事的には寧ろその方がいいんだろうけど、残念ながら祐季ちゃんの記憶の方があってるよ!あと(笑)ってなんだァァァ!」
話を聞くと、どうも山崎さんは諜報系の仕事なので戦闘はあまり得意ではないとか。
「いやまあそれなりに鍛錬も積んではいるんだけど。でも祐季ちゃんと戦っても勝ち目はなさそうだからやめとく」
と言って今回は(今回も?)裏方に徹するらしい。 そしてコンディションも整い、総監督の土方さんに声をかける。
「つちほうさんー」 「つちほうってもはや原型留めてねェだろ!!土方だっつーの!普通に呼べ!」 「やだあテンション高い」 「てめェしばくぞ」 「すいまっせーん!」
適当に謝る。大分土方さんとも打ち解けてきた。 んで。
「次って誰なんですか?土方さん?」 「いや、近藤さん」 「えっ」
意外だ。沖田さんかなぁとも思ったけど、まさかの近藤さん。 局長が一番最後ってものだと…。
「まぁ、近藤さんも弱かねェんだが、剣術なら総悟が一番強いしな。近藤さんの希望で、その次に総悟、最後が俺だ」 「土方さん最後!トリなんですね」 「自分で言うのもなんだが、まぁそういうこった」 「解りましたー。もう始めます?」 「準備は出来てるか?」 「だいじょぶです」 「んじゃ、始めるぞ。近藤さーん、次あんただぞー!」 「ん?そうかそうか、おーし、いくぞー祐季ちゃん!俺をただのゴリラだと思っちゃいけないよ!」 「いやですねぇ近藤さん、ちゃんとストーカーゴリラだと思ってますよ!」 「それ悪口重ねてるからね!?」
喋りながらもお互い得物を構え、向かい合う。 自然と静まり返り、
「―始め!!」
土方さんの合図で試合は始まった。
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