PM6時に摘む花4
なんでェ、全然調子でねェや。参っちまうなァ。
病状を聞けば、インフルエンザとのことだった。 それも症状的には、発症は昨日今日ではないらしい。
自覚はなかった、とは言い切れないが、酒を煽っていたためその影響だとばかり思っており、今朝起きれず驚いたのが真実だ。
「起こしに行ったのが私で良かったですね。土方さんなら一回呼んで放置してましたよ」 「別にィ。つーかオメェさっきから俺のこと心配してるみてェじゃねーか、何企んでんでィ」 「失礼な。何も企んじゃいませんよ、弱ってるところを攻めるほど腐ってないってことです。病人には優しいんですよ私」 「何で」 「沖田さんは風邪引いたことなかったかもしれませんがね、私はよく引いてた。昔は特に」
残ったリンゴをしまいながら、祐季は言う。 本当になんでもない顔をして。
「風邪引くとね、凄い人恋しくなるんだよね。喋れる状況でもないのに、そばにずっと居て欲しくなる。迷惑な話だけど。だからまぁ、私がそうして欲しいから、人にそうしたいと思うっていうか」 「……」 「だから、仕方ないから私がそばに居てあげますよ。皆仕事忙しいし、一番下っ端の私が適任でしょ」
さぁもう寝たら、と身体を布団に戻される。触んじゃねェ馬鹿、とはやっぱり言えなかった。 ただあの時。こいつの膝借りちまったのはそういう訳だってェことなのは分かった。
あァ、これ以上は考えたくねェや。 大人しく布団に潜り、目を閉じる。
祐季がやけに優しく感じるとか。 そばに居てくれて嬉しいとか。 看病されて心地よく思うだとか。
そんな頭の痛くなるようなことを考えてしまいそうになり、全てを熱のせいと誤魔化した。
何より、んなこと考えてんのが俺だけってェのが一番ムカつくんでさァ。
俺は祐季に振り返ると、なんですか、と言ういつものアホ面に手を伸ばし、
「に゙っ」
思いきり鼻をつまんでやった。
fin
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