「あかん、奥村くん...意識なくしはったわ...」

学園での授業に加え、塾での授業も居眠り一つせずに耐えきった燐は、終了の合図とともに机に顔を預け白目を剥いたのだ。
肩を突ついても動かず、まるで糸の切れた操り人形のように力なく沈み込む燐を見て志磨が言った。

「ご愁傷様...」

両手をすり合わせて拝みはじめる。

「奥村くん、何かあったんやろか」

そんな二人の様子をみながら、子猫丸が心配そうに呟く。

「それにしても、授業受けるだけでこんなになるっておかしいわよ!」

「コイツ先が思いやられるわ」

周囲のざわめきに何事かと燐が目を覚ました。
目を擦り、ぼやけた視界で後ろを振り返り勝呂の方に目をやった。

(あいつ何寝ぼけてんねん...)

視線に気付いた勝呂はやれやれと思いながら、半開きの眼でこちらを見る燐を眺めた。


"勝呂竜二くん?ああ、彼は秀才だよ"

燐は入学当初に雪男から聞いた話を思い出した。
雪男も認める祓魔塾一勤勉者の顔を見て燐は閃いた。
雪男のやつは今忙しいみてーだし、たぶんまだ熱があるだろうし...勝呂なら!

半開きだった燐の眼が急にカッと見開かれて勝呂は思わず手にしていた教本を落としそうになった。

「なぁ、勝呂。頼みてーことがあるんだけど...」

釣り上がった目に鋭い眼光 おまけに今日はその下にクマをつくった燐の表情はいつにも増して迫力があった。それがこちらに向けられ自分の方へとずんずんと近寄るものだから、勝呂は何事かと尻込みした。

「...な、なんや、改まって...まあ、いうてみいや。」

「俺にベンキョ教えてくんねーかな...」

勝呂は肩透かしでもくらったような表情で燐をみた。
その場にいた他の者も皆、勝呂と同じ表情を浮かべている。


「...と、どないしたん。熱でもあるんとちゃう?ほら、今日なんか変やし、顔赤いし...」

「志磨さん言い過ぎですよ...」

フォローに入った子猫丸だったが子猫丸自身も半ば信じられないといった表情が見え隠れしている。


「俺がしなきゃいけねーのはベンキョであって、授業を受けることじゃねーんだよ...」


その言葉に一同唖然となる。
(普通は授業を受けて勉強をするものだ)
だが、燐の場合たった一日眠らずに授業を受けただけでこの有り様だ。
間を置いて納得する勝呂。

「その通りやで。奥村くん。授業なんてマジメに受けるだけ損やで!試験対策だけやっとけば、あとは何とかなるんやて!」

「お前すげーな!その対策、俺にも教えてくれよ!」

燐は羨望の眼差しで志磨をみた。

唯一志磨の試験の点を知る勝呂と子猫丸だけは、冷ややかな視線を志磨に送る。

「よし、わかった。手伝うてやるわ!せやかて、俺一人やと、少々ツライな...」

「僕で良ければ、お手伝いしますよ。」
子猫丸が応えた。

「わ、私も!教えられるほどじゃないかもしれないけど...ね!神木さん!」

「は?なんで私がっ!!」

急にしえみに促されて声を荒げる出雲だったが、燐の お願いだよ。まゆげっ!の一言でぷりぷりと怒りながら
もそれを承諾した。

「ほな、今日もみんなで、勉強会やねえ!楽しみやわぁ」

志磨は俄然ヤル気を出したが勉強目的ではないことは言うまでもない。



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