陽斗の手を握り返した後、廊下に出れば、珍しい人物が佇んでいた。 「狼?どうかした?」 陽斗も同じように不思議に思ったらしく、首を傾げながら、一ノ瀬狼に話しかければ、ゆるりとした動作で、こちらを向いた。 「雷が呼んでる」 「雷先輩が?やだなぁ。あの人、仕事押し付けて女の子のところ行っちゃうんだもん」 うんざりしたような表情の二人に、ふと首を傾げる。 「女の子のところ?」 一ノ瀬狼の“雷”といった呼び捨ての件も気になるけど、こっちの方が最優先。 うん、とほぼ同時に頷いてから、歩き始めたふたり。 陽斗と繋がれている手に引っ張られてあたしも慌てて歩き始める。 「あいつは浮気性のゼウス神だからな」 「よく結乃先輩に怒られてるよ」 ナルホド。 神話でもゼウスはよくヘラに怒られたって書いてあったような、、、 「それにしても、雷先輩もよくやるなぁ。浮気で怒られるのこれで何回目だっけ?」 さぁ?と気のない返事をした一ノ瀬狼。 はぁ……と溜息を吐く陽斗。 そんなに酷いの? 「数えらんないくらいには浮気してんだろーな」 「頭痛してきた」 頭を押さえる陽斗。 ここまで陽斗を困らせる雷先輩の浮気って。 「………問題は雷先輩じゃない」 「きゃぁ!」 不意に後ろから気怠げな声が。 いまにして思えば、烈火先輩の声だったけど、いきなり後ろから声をかけられたんじゃ、あたしの心臓が持たない。 「驚かさないでくださいよ、烈火先輩っ!」 [*←]|top|[→#] |