浮気を許さぬ女神、結乃




少し学校に慣れた4月の下旬。
地の利と人物性格以外の問題が浮上する今日この頃。

ビシバシ当たる視線の痛さにあたしは思わず顔を顰めた。

ひとつ、溜息を零す。

最初は遠巻きに見ていたのに最近では過激化している。
そろそろ校舎裏にでも呼び出されるかな。
(なぜ校舎裏かといえば、専らのイジメ現場だから)

「美月、帰ろう?」

うんざりした気持ちのまま、カバンに教材たちをしまっていると、陽斗があたしを見下ろしていた。
うん。嬉しいんだけどね?余計に視線が痛くなるっていうか、、、

そんなあたしの内心に気づかず(当たり前なんだけど)、陽斗はまるで周りの存在を無視するようにやわらかなぽかぽかの笑顔を見せる。

あ。教室の後ろらへんで死者が役4名。

生徒会のみんなはなんというか……周りを気にしない。
生徒の視線に気づいているくせに、自分の魅力すら自覚しているのに、どうでもいいと思っているのか、周りの視線すら無視する。

「うん」

あたしの居場所は陽斗に丸わかりだ。
最初は半信半疑だったけど、最近になってようやく理解した。

あたしの居場所がわかるように、あたしには陽斗の居場所がわかる。
番の存在だから。

「あたしが行こうと思ってたのに」

「ごめん。でも担任が今日は出張で7時限の先生が代わりに挨拶をしたから、早く終わったんだよ」

高校の7時限制度にも慣れて(最初は眠くて眠くて堪らなかった)、クラスメイトたちのいたーい視線にも慣れ始めた。

前者はまだしも、後者に慣れる日が来るとは、、、ゆめゆめ思いもしなかった。

あたしの手を陽斗の温かい体温が包む。
ざわりとざわめく周囲。

あーぁ、こりゃミンチかな。

ある覚悟をして、視線を上げれば、その視線に気づいたらしい陽斗が振り返って微笑む。

陽斗といると、他の無駄な――余計なことが気にならない。
彼といっしょにいるだけで湖面のように静かにやさしい気持ちになれる。





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