おかしい
「ミズキちゃん、ダイゴとのお話は楽しかい?」

「はい、とても」
 
こんやくしゃ、と庭を散歩して大体どれくらいたったのだろうか?気が付くとツワブキダイゴの父親が石を見ていた私たちのすぐ後ろに移動していた。そして彼は私と目を会わせるように腰を屈めた。


「ははっそうかそうか!こいつはいつでも石の話しかしないからな!君みたいにお話をちゃんと聞いてくれる子は初めてだよ」

「父さん!」


だろうな、そう内心納得してしまった。
私はあくまで聞く側に徹底していただけだ。語り合ってはない。こういう一方的に話しかけられるのは慣れていたし”普通の女の子”ならつまらないのだろう。


「アクアも石が好きなんだって!!今までの子と一緒にしないで!!」

いや、好きとは明確な事は言ってないけど…
はは……、と苦笑いして誤魔化すがツワブキ父は目を細めた。


「ん?君の名前は確かミズキじゃなかったかい?」

「僕が着けたんだよ。アクア!いい名前でしょ!」

「いやそんなお前女の子にポケモンみたいな……失礼だろう」

言われてみればそうかもしれない。初対面の異性にいきなり本名かすりもしないニックネーム(?)を付けるなんて普通は失礼…だろう。
だけど私は、


「レ××」



「あなたは雨の子よ。だからレ××よ」



「ッ…………、」

あたまが、いたい。
ズキズキと警告を鳴らしているみたいに



「アクア?…やっぱりこの名前嫌だった?」

私が頭を押さえていたからか、心配そうにこちらを覗き込む”こんやくしゃ”いや、ダイゴのその声に少し痛みが引いた気がした。





そう、私の名前は「ミズキ」ではない。これは借り物だから今は別の名前を名乗っていてもいいだろう。

「いえ…素敵な名前だと思ってます。ありがとう、ダイゴ」

「っ……!どういたしまして!!」

痛みは、引いた。少し頭を押さえているとツワブキ父がダイゴを連れて何やら「初対面の女の子に〜」とか「お前は乙女心ってやつを〜」とかコソコソ何か言い合っている。正直丸聞こえの地点でコソコソではない。

「ははは、いやほんと、バカ息子がすまないねミズキでちゃん。今日はもう御暇する時間なんだがまたコイツの話し相手になってくれないかな?」

「私なんかでよければ…」


もう、そんなに時間が経っていたのか。ツワブキ父は腕につけたよく分かんないけど高そうな腕時計を見て困ったように笑うと「ほら、お前もさよならの挨拶をしとけ」とダイゴの頭を無造作に撫でた。


「ちょっ…父さん!あっ…えっと、…!そうだ!」


ちょっと待ってて!!声を上げてツワブキ父のカバンをなにやら漁って「これ!」と何かを差し出してきた。

「すっごいおもしろいんだ!この本!!」

「……………はい、ありがとうございます。」



[世界の石と100種とポケモン]


ツワブキダイゴは最後までぶれなかった。




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