嫉妬してしまうから余所見しないで
北の要塞でカムイ様に使える毎日を悶々とした感情で過ごしていたそんな俺の憂鬱は気鬱だったと言うようにある日を境に日々は一転した。
我が主、カムイ様が本当は白夜の王女で彼女は祖国の為に剣を取ったからだ。
俺は暗夜王国になんの未練も無かった為、主であるカムイ様を追って今は共に白夜の城で変わらず執事をさせて貰っていた。
変わった、事と言えば二点ある。まずは環境が違うのもあるが"元"祖国であり育った暗夜王国を撃つ兵士として俺の戦闘能力を買われて戦場に出ているという事だ。そのお陰かここ数ヶ月のバタバタとした日常に俺の抑えてこんでいた気持ちを一瞬だが忘れられた日々を送れていたのだ。
そしてそんな日々にも慣れてきたとある日、暗夜王国とは違い眩い日差しに気だるげな体を起こした。
「…あ"〜……朝か……」
執事として自分でもどうかと思うが俺は朝が苦手だ。軍で一番苦手と言われても過言ではないがそこは我が愛しい主のため、布団から出たくないという体を引きずり洗面所で冷たい水を浴び、無理やり目を覚まさせる。
「よし、……」
今日はどのような紅茶を入れて差し上げようか、
カムイ様の事を考えるだけで少しずつだが眠気が失せていく。あの方が笑ってくださる…それだけで今日も頑張れそうだ。
🌸
「今日の紅茶は何だか風味が違いますね……とても美味しいです…」
「流石はカムイ様。今日の紅茶はブロッサムティーと言って白夜の桜の花を使った紅茶でございます」
「まあ!桜の紅茶なんてあるんですね……!とてもいい香りで好きです…」
よかった、カムイ様に喜ばれたと言うことは半日かけて厳選して甲斐が有る。紅茶に合わせてティーカップも新しいものを選んだんですよ、と告げると頬を染めて喜んだ。
なんとも可愛らしい主だ。
「戦時中というのに気を遣わせてしまいすみません…そこまで拘らなくても私はジョーカーさんの紅茶が飲めれば満足ですよ?」
「いえ、カムイ様に出すお茶であればいかなる時も最高の状態でお出ししなければ……それにこうしてカムイ様の為に茶器を選ぶのも私はとても楽しんですよ」
「もう、……ジョーカーさんは私を甘やかし過ぎです!!」
「貴女の「執事」ですから」
そう言うとカムイ様は桜のように淡く染めていた頬から手を離し、何処か悲しげな表情をされた。
俺が何かカムイ様の気を損ねる事を言ってしまったのだろうかーーー……!!?
「カムイ様、その私が何か貴女様の機嫌を損ねる事を言ってしまいましたか……?」
「……い、いえ……そのジョーカーさんは悪くないんですでも…あの……その、ジョーカーさんさえ良ければ…」
カムイ様が口を開いたその時、扉越しからけたたましい音が鳴り響いた。
ガシャガシャガシャーーーーン!!バリンッ!!パリンッ!!
そして「はわわわ!!」という慌てふためく声……犯人は言わずもがなあのドジメイドだ。
「ああぁぁぁ…もう…申し訳ございませんカムイ様。お話は馬鹿…ではなくフェリシアの後始末の後で宜しいでしょうか?」
「あ……はい大丈夫です。フェリシアさんのことよろしくお願いします。」
おいあのドジメイド…主人であるカムイ様に心配されるとは…やはり後で締め上げなければ。
「ありがとうございます。直ぐに済ませますの少々お待ちください!……フェェリィィシィィィィアァァァァァァ!!」
「きゃぁぁあ!?ジョーカーさんお顔がこわいですぅ…!」
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