ずっとお側に
私には奇妙な執事がいる。
名前はジョーカー。彼は私と初対面の時に感涙し,よくわからないまま忠誠を誓われた。
でもとても優秀な人,ということは分かる。
「ジョーカーさん」
「はい!カムイ様!!」
私の発する一言一言に大袈裟な位に歓喜する彼を私は邪険には出来なかったが変わった人だなぁと毎度思うのだった。
「明日はお父様に謁見できるんです!外に出れるチャンスかも知れません!!」
「このジョーカー、貴女のお側であればどこにでも付き添い致しますよ」
「い、いえ。流石にお父様の所までは来ないでくださいね」
やはり変な人だ。
身だしなみを整えて行ってきますね、と告げると直ぐに彼は新しい髪飾りを持ってきてくれた。黒い薔薇の花飾り。それをそっと私の髪に通す姿を鏡越しに彼の表情が見えた。
「とうとう"あの日"か……」ポツリ、彼が呟いた言葉を尖った耳が拾ったがこの執事は相変わらずよくわからない。
🌹
それから色々とあった。
私は実は白夜王国の王女で、暗夜のきょうだい達とは血は繋がっていなかったのだ。
でも、それでも私は……
「私は…暗夜に戻ります」
指し伸ばされたマークス兄さんの手を握ると静かに夜刀神を……祖国…いや、白夜王国に向けた。
私は育った国より、絆を選んだのだ。そんな私をマークス兄さん達は笑顔で受け入れてくれた。
だが、リョウマ兄さんは私に戻ってこい!と無理矢理それを引き剥がそうとした。
他群の白夜兵が「裏切り者」に容赦なく斬り掛かるがそれを薙ぎ払うのは私を信じて着いてきてくれた過保護な執事、ジョーカーさんだった。
「来て下さりありがとうございます、ジョーカーさん。助かりました!」
「いえカムイ様がご無事で何よりです……
今回は暗夜なのか……」
「ジョーカーさん?」
「ああいえ…なんでもありません。このジョーカー。恐れながら地獄の果てまでカムイ様に御供致します」
「相変わらず大袈裟ですね」
本当に彼なら地獄まで着いてきそうだな、と思ったけど口にはしなかった。
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