一方その頃 [ 58/156 ]
どんどん増える食べ物たちに満足げにそれらを咀嚼した。
「お前……よく食うな〜」
「人の食べ物……美味しい……魚以外は……」
綿あめを食べ終えモグモグとさっき買ったりんご飴、というのを食べ進めているとまた違うお店からいい匂いがしてきた。
「お姉さんもいかが?女は黙って焼き鳥丼って言うでしょう?」
「初めて聞いた……」
「いやいやチョコバナナもいいよー!ねぇどうどう?」
「ちょこばなな……」
「……食いたきゃ食えよ…副長に怒られない程度にな」
ピンクの髪のお姉さんが焼き鳥丼をあまりにも押してくるのでガルドを払って、ついでに白いと赤が混ざった変わった髪色をしているお姉さんからもちょこばななという食べ物を一つずつ買った。
「ていうかこれって……」
「?」
「その、デートみたいだな!」
「むぐっ…でーと?」
りんご飴が終わったので次はちょこばななを食べる。美味しい。バナナは何度か船でも食べているが「ちょこ」をかけるとこんなに美味しくなるのか……
夢中になって食べているとベンウィックがそっち寄越せよ。と焼き鳥丼を持ってくれた。
「ねぇ、でーと?って……?」
「あー……お、男と女が一緒に出かけて買い物とかすることだよ」
「じゃあベンウィックとでーと?」
「だな!あっ……副長にはこの言葉内緒だぜ?」
下手したら殺されそう……でま俺だってリアに近づいても……ぶつぶつ、アイゼンといいベンウィックといい小声て何か言うの好きだなあ。バナナを食べて終わるとベンウィックから再び焼き鳥丼を受け取った。
「じゃあさっきまではアイゼンとでーと?」
「……リア的にはそっちの方が嬉しいよなあ…うん、一応そうなんじゃないか?」
ふぅん……、焼き鳥丼を食べながら軽く返事をするとなんだよその曖昧な返事とベンウィックにため息を吐かれた。
でーと…、今度ちゃんとアイゼンと…………
「テメェ!!ふざけてんじゃねぇぞ!?」
「なんだとやんのか!!?」
ひとり思いを馳せていると男達の大きな声が小さな港に響いた。ベンウィックが何事だと声のした場所を見るとそこには見知った顔のアイフリード海賊の船員が店主らしき男と取っ組みあっていた。
「何してんだアイツら……!?えっとリア!絶対そこから動くなよ!あいつら止めてくるから!」
ベンウィックが船員と店主の揉め事を押さえるために離れていく。
動くな、と言われたので私はそのままもぐもぐと焼き鳥を食べて待っていると今度は見慣れない白い服を着た人間が声を張り上げた。
「何を騒ぎを起こしてる!!」
「げっ聖寮だ!」
「散れ散れ!!」
取っ組み合いをしていた船員と店主が一斉に散っていく。聖寮、確かアイゼンたちが言ってた「気に食わない奴ら」だ。
「こら!逃げるな!!」
「そいつらを捕らえろ!」
「おいリア!船の近くで落ち合うぞ!」
「う、うん」
焼き鳥を食べている場合では無くなった。慌ててゴミ箱に串を棄てるとバンエルティア号を泊めている停泊場所まで駆けようとすると誰かに腕を掴まれた。
「待て!お前あいつらの仲間だな!」
「痛、い」
振り払おうとして腕を降ると弾みで人間の作った道倒れ込む、膝が擦れた。砂浜と違ってなんでこんなに硬いんだ……足の裏は強化してるけど今度から膝までやろう……。起き上がると膝から血が出ていた。後で治癒術かけなきゃな……と他人事のように思っていると聖寮が私を指して声を荒らげた。
「お前……業魔か!!?」
「?……ちがう、よ」
聖寮の人が指を指すのは私の耳だった。倒れた衝撃で見えてしまったのか。
普段は髪のボリュームで隠しているが彼にはばっちり見られてしまったらしい。「業魔」は確か凶暴化したものの事だよね?船でも度々見た大きな化け物。でもなんで私がゴウマって言われているんだろうか。
「その耳!初期段階か……!」
「初期……?これは……生まれつき……」
実際耳尖っているのは言い訳できないし、そもそも船でで待ってないと行けないからどうしようか、と考えていると聖寮の1人が腕を引っ張ってきた。
「丁度いい、監獄島へ投獄する奴らと一緒にコイツも連れていけ」
「はっ!」
私の腕を引いてバンエルティア号とは違う船に乗せようとしてくる。ここで抵抗しないと、"また"連れていかれてしまう。
抵抗しようとするとガシャン、と音を立てて「ナニ」かを腕に付けられる。黒い腕輪のような……なんか嫌な気配がする。港から少し離れた場所にいた為、海は遠い。アイゼンに教わった聖隷術を発動させようと詠唱を唱えるが聖隷術は発動しなかった。
「……?でない……」
「抵抗は無駄だ」
「……離れたら、怒られちゃうのに……」
私の手を引く聖寮達に抵抗できないまま引きずられる形で船に押し込まれてしまった。
アイゼン……怒るんだろうなぁ