煮え切らない感情 [ 69/156 ]
「リア!!!!?」
ベンウィックのその声が船内に木霊する中、思わず何度もエリアスを見ていた。
「う……んただいま……?」
「だから何で疑問形なんだよぉ……!!お前ほんとに心配したんだからな!!」
はい、コイン。と1年振りの再開を相変わらず感情が点ってない目で俺を見てきたエリアスはどこからどう見ても本物だった。
尾鰭が引っかかってこれ以上登れない……と、砲口から人間部分の上半身だけ出して尾鰭が人の脚に戻るのを待っていたらベンウィックが船員の治療に来ない俺を探しに来て冒頭に戻る。
「ていうかなんでお前そんなに傷だらけなんだよ……!まさか……拷問……?!!」
「なんだと……?」
「ひぃ!!?副長顔が怖いっす!!」
脳が「エリアスが帰ってきた」という事を理解してそっとエリアスの体を引っ張ると、確かにあちこち怪我が酷く残っている。特にコインを差し出してきている手なんてひどい有様だ。表面の皮が向け肉が見えかけている。
本人はなんともないようにけろりとしているが尾鰭だった脚にも色々な傷と、何かに捕まっていた「痕」がハッキリと残っていた。
「……後で事情は詳しく聞く。ベンウィック船医を連れてこい!俺はアイツらから先に治療する」
「了解です!……っとリア立てるか?」
「う、うん立てる。」
フラフラと体を起こすとその格好にぎょっとした。
かめにんに作ってもらった衣装はスカート部分がボロボロに破れ、特殊な方法で作られているリチアの布のリボン以外見るも無残な状態だったからだ。
「おま、おまおま、お前?!!やっぱなんかごうも……」
「……?ああこれ、はロクロウに……」
ガキンッッッ!!!!
エリアスの口から出た男の名前に思わず無意識に力を込めてしまったらしい。置かれていた大砲に僅かな凹みが出来た。……貴重な武器に何してるんだ俺は。
「ヒェ……!」
「!?……」
「後で、詳しく、話を聞く」
「う、うん」
ボロボロの体、ボロボロの服、そして男の名前。生きていることが奇跡だがそれよりとにかく聞きたいことは山ほどある。
重傷の船員達が眠っている部屋に速歩で向かうと俺はかつて無いスピードでクイックネスを詠唱すること出来た。
「……あんなにキレてる副長初めて見た」
「……?なんで、怒っているの……?」