泣き虫な人魚 [ 32/156 ]
「船……だと、?!エリアス本当か!」
アイゼンが握っていた釣竿を置いて私の肩を掴んだ。ほら、アイゼンは帰りたがっている。私はそれを見送らないといけない
「大きな船だったよ。アイゼンが乗っていた船に似ていた大きな船だよ。人間たちがいっぱい乗っていてね。"食料の補給に無人島に行こう"って話していた逃れ微かに聞こえてきたんだ。だからきっとこの島のことだよ。ははー……私船を見つけたから驚いて採った貝とか置いてきちゃってね「エリアス」嘘ついてごめんね?でもね船は多分今日中には来るんじゃな「エリアス!!」」
ないかな。私が最後までその言葉を言う前にアイゼンの腕に引っ張られて気がついた時にはぎゅっと、その力強い腕の中にいた。
「アアアアアアイゼン!!?なん、なんっ?!どうしっ!!?」
「…まずは落ち着け」
むしろ落ち着けるわけがない!い、意外とガッシリしてる!!いや、そうじゃないぞ私!!ていうか意外でもないよね!!アイゼン大きいしこうして色んな女の子をきっと抱きしめたことが……………それは嫌だ………いやいやいや今はそんなことよりなんで私、その!アイゼンに抱きしめられれれれれ!!?!
「ふ……、泣いたり赤くなったりと忙しい奴だな…」
「……私、泣いてないよ?人間じゃないから……」
何のことだ?とキョトンとしているとアイゼンが私の顔を上に向けてそっと頬をなぞるように撫でた。
濡れるような感覚。そうしてようやく私の目から水が溢れ出ていることが分かった。
私が「水」に混乱しているとアイゼンは私の目を見てもう一度言った。
「泣くな」
「泣いてない…ってば…!」
私は人間じゃないから泣かないのッ!アイゼンを振り払おうとするが逆に先程より力を込めて抱きしめられる。
「……そうか…海の中では涙を流しても気付かなかったのか…エリアス、それが涙だ」
「な、みだ?」
「泣く、ということは知っていたのに涙を知らないなんてお前らしいな…」
背中をぽんぽん、と子供をあやす様に優しく叩かれると、私が堪えてたモノが決壊してしまった。
「ァ、アイゼン居なくなっちゃったら、またひとり、で!」
「ああ……、」
「せっかく、友……達になったとおもっ、たのに……!」
「……友達……?……いや待て泣くな!ああそうだな…………友…だな。……」
この状況で「友」か……いや、そうだよな。ああ……と何やらブツブツ呟いているアイゼンにもしかして友達は嫌だった……?と尋ねると首を振って否定された。
「……いいから今日は全部吐き出しておけ。俺は今すぐには居なくならん」
アイゼンのその言葉に「今じゃなくても」明日にはいなくなってしまう事を察し、船なんて来なければいいのに、と最低なことを思ってしまった。