ついに今夜は後夜祭。
髪の毛を巻いて、ポニーテールをした。
いつもはしない化粧もして、バッチリ。
よし、泣いても笑っても今日が最後だ。
私、ちゃんと笑えるかな?
ああ、緊張してきたな。
「あら、友梨可愛いじゃない。大丈夫、自信を持って!!」
「静音ちゃん!!!ありがとう。」
「友梨先輩告白でもするの?え、誰に?あ、もしかして、さゴニョゴニョ?」
静音ちゃんが五島の口を手で塞いだ。
「五島うるさいわよ。どっか行ってなさいよ。」
「はーい。…ブツブツ…。」
「ありがとう静音ちゃん。」
「ええ。そういえば櫻野くん外に行ったわよ。行ってみれば?」
「本当?ありがとう、行ってみる。」
あ、櫻野くんいましたっ。
ってあれ。隣に誰かいる。
え、あれって櫻野秀一ファンクラブ会長の子だ。
あ、櫻野くんこっち見た。
………えっ。今あの子に、キス、した?
……嘘っ。
私は逃げた。
もう追いかけたり、観察するのもできないんだ。
せめて、想いを伝えたかった。
次の日、2人が付き合っているという噂は一気に広まった。
(ねーねー。櫻野くんって本当に付き合ってるの?てか、相手ってマジでファンクラブ会長なの?えー想い続ければ報われるってこと?いや、いや今それ言うなよ。あそこに川崎さんいるし。あの子も可哀想ね。そう?でもあれはやりすぎだったでしょ。自業自得よ)
外野本当にうるさい。
ああもう。
うるさいって言おうとしたら、彼が教室に入ってきた。
ああ、今日もかっこいいな。
授業中も休み時間も櫻野くんのことを考えないのは
かなり辛かった。
私、相当好きだったんだ、と改めて思う。
ふっきれるかな…。
櫻野side
「秀一、お前何考えてんの?」
「こうでもすれば、もう追いかけまわされたりしないだろ。てか、みんなはああ言ってるけど、付き合ってはないから、言っとくけど。」
「え…」
「秀一くんっ。ご飯食べよう!」
「うん。行こっか。」
僕は別にコイツのことを好きになったわけじゃない。
ただ、便利だったんだ。
僕のファンクラブ会長らしいし。
付き合ってはない。
昨日初めて話したし。
向こうから川崎さんが走ってきたから、
顔を近づけて、キスしてるように見せかけた。
そしたら、次の日から川崎さんは追いかけてこなくなった。
僕の望んでいた事なのに、寂しいと思う自分がいた。
わけが分からない。
しかも、この女何を勘違いしたか、今度はこの女が追いかけてくるようになった。
でも、何で急に名前で呼ぶんだよ、気持ち悪いな。
アイツはずっと一緒にいても、名前で呼んだりしなかったのに…。
って僕は何考えてるんだ?
「お弁当作ってきたよ!ちょっと失敗しちゃったけど、はい、どうぞ。」
ってなんだこれ。食べ物じゃないよこれは。
「ありがとう。美味しそう(にこっ)」
偽りの笑みをする。
「う、うん//」
僕が笑えばどんな女の子も顔を赤くする。
…何この卵焼き。
甘すぎるだろこれ。
アイツの作ってくる弁当は丁度いい甘さで、
しかも見た目だってもっと綺麗だったし。
ってまたアイツのこと考えてる。
なんでだ。
「ありがとう。美味しかった。」
「うん。明日も作ってくるね!じゃあ、教室戻ろう!!」
「そうだね。あ、でも生徒会室に書類取りに行くから、先帰ってて。」
「分かった。じゃあ、また後でね!」
なんなんだ、どうしたんだ、僕。
何でさっきからアイツがでてくるんだ。
わけわかんないよ。
とか考えながら、生徒会室のドアを開けようとしたら、中で声がした。
「私、大好きなんだよ。大好きで大好きでどうしようもないの。」
「うん。あ、ほら泣かないで。おいで。」
この声は…五島と…アイツの声?
何であの二人が。
てか、大好きってなんだよ。
アイツは僕のことが好きだったんじゃないのかよ。
イライラして、気づいたら、ドアを開けて彼女の腕を掴んでた。
友梨side
五島に、好きすぎて櫻野くんのこと諦められないって話してたら、
急に涙が溢れて、五島はそっと抱きしめてくれた。
その瞬間、ドアが思いっきり開いて、
櫻野くんが真っ黒なオーラでこっちに向かってきて
腕を掴まれて、誰もいない教室に連れていかれた。
今更何なんだろう。
「川崎さんは、僕のこと好きなんじゃなかったのかよ。」
何を言い出すんだこの人は。
てか、口調が変わっとる。
「好きってもんじゃないですよ。大好きですよ。」
「なら、どうしてさっき五島のこと好きって言ったんだ。抱きしめられてたんだ。」
怒ってる。すごい怒ってる。
急にどうしたんだろうか。
「私は、あなたを諦められないくらい大好きだって話してたんです。五島に。」
「な、そうだったのか。…僕の早とちり?」
「そうですね。ふっ。でもどうしたんですか?」
「わからない。でも、川崎さんがそばにいない時、川崎さんのこと考えてた。それに、五島に取られると思ったらイラついた。多分僕は川崎さんのことが好きなんだ。」
心臓が止まるかと思った。
「え?な、何言ってるの?櫻野くん?」
「これは、嘘じゃない。本当だよ。」
「信じない。信じないよ私は。」
「僕の目を見て。嘘ついてるように見える?」
正直見えなかった。
いつもと違って真っ直ぐこっちを見ていた。
「見えない…。」
「ふふ。いつの間にか大好きになってたんだ、川崎さんのこと。」
櫻野くんの言葉を聞いて、涙が溢れ出した。
「うぅ。グスン。う、嬉しい。嬉しすぎておかしくなる。」
私がそういうと、抱きしめられた。
強く強く。
「僕と付き合ってくれる?」
「えっでも、櫻野くんは、あの会長の子と付き合ってるんじゃ…」
「それ、噂ね。しかも、こないだのキスも違うから。見せかけ。あの時は川崎さんに追いかけられるのが嫌で、突き放したかったから。ごめん。」
「もういいよ。もう、終わったことでしょ?」
「ふふ。そうだね。友梨これからよろしくね。」
急に名前で呼ばれた。恥ずかしくて下を向いていると、
顎をそっと持ち上げてキスされた。
「んな、ななな!!!!」
「ビックリしすぎ。大好きだよ。友梨。」
「私も大好き、櫻野くんのこと。てか、一生離さないから覚悟しておれ!!!」
「ふふ。分かった。楽しみにしてる。」
彼の笑顔は素敵だった。今までで一番。
今まで追いかけていた彼は、今日私の彼になりました。
だから、私はこれからも彼を追いかけ続ける。
ストーカーではなく、彼女として。
Fin
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