act 14

再び、皆が顔をあわせたときには、既に夕刻であった
それぞれが腫らした泣き顔を隠すようにと。

部屋に着く神楽は、一つの事に気付く

「う・・・・ららチャンの荷物がないアル」

皆が一瞬顔を曇らせる



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もう、此処には居られないでしょ?私も・・あんな風に愛されたいなぁ・・そんな相手・・見つ・・かると・いいなぁ・・」 

「うらら・・・総悟は・・あんなんでも、ちゃんとお前の事好きだったぞ。あの人に合わす事が大嫌いな総悟が、体だけで一年も一緒に居られるわけねぇだろうが・・自分で気付いてない超鈍感ニブチン野郎だが、お前の事は好きだった!俺が保障してやるよ」
そういうと、土方は、ニヤッと笑う

「確かにな、あいつ嫌いな奴に媚売れるほど、器用じゃないからなぁ」
高杉も、土方につられ笑う
「そうだな、うららの事、総悟は大切に思ってたんじゃないか?人一倍不器用な優しさで」
近藤は、うららの頭をぽんぽんと撫でた


「・・・っ・・うん・・・うん・・そう・・思う・・」
不器用なりにあった優しさ

神楽までには、愛されなかったけれども、それは、確かに
神楽とは違う接し方で、言葉で、ちゃんと自分たちの中にもあった物
それを自分は信じて、さらに、前に向いたい

さきほど、ようやく落ち着いた赤みがかった頬に、真新しい涙が伝った

しかし、それは、綺麗なうららの顔を、より一層綺麗に見せる涙だった

「神楽ちゃんに、離さないでね・・て言っといて」
そう笑った顔は、うららに会ってから、この何日かの間で、一番綺麗で可愛く笑えた顔だった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「どうするか?今日も一応泊まってっていいらしいが・・・帰るか?」
土方は、このまま帰るか、もう一晩うらら抜きで皆で過ごすか、問いかけた
もう夕暮れ。決断はすぐに欲しい

視線は、自然と神楽の方へと注がれた


「わ、私・・・皆と泊まり・・・たいアル」
うららが居なくなったのは、少なくとも自分の責任・・
それでも、旅行をやり直したかった。この何日かに渡って来たものをもう一度、やり直したかった
沖田は、皆の不安そうな表情を読み取る神楽の頭をくしゃくしゃといつもの様に、遊んで、口を開いた

「うちの姫さんが居たいって言うなら・・・残るほかに選択肢はネェだろィ」
神楽の顔は、ぱぁ!!!と輝いた。皆も、あっと言う間に笑顔になって、今日の夜を楽しんで、明日帰ろうとなった




..................................



「めっさ旨そうネ」

湯上りの神楽たちを迎えたのは、高級な料理ではないけれど、本当においしそうな手料理の数々だった
一日目は、大好きな料理も、沖田とうららが気になって、あまり喉にも入らなかった
いまこそと神楽は料理にかぶりつく。口一杯にほう張りながら、とにかく食べ続ける

「ホラ、付いてやすぜィ」
沖田は手を伸ばし、神楽の頬に付いてあるご飯粒を取り、舌先で舐める
そういえば、前にマックでもこんな事があったと、ふと神楽は思い出す
頬を赤らめ、沖田の舌の先を見る。そういえば、沖田はあの時から、何も変わらず自分を大切にしてくれていた

しいて言えば、毎回いつも自分が素直になれなくて、場をややこしくしている
今は、まだ沖田は自分を大切にしてくれる。好きで居てくれる、でもいつまでかなんて誰にも分からない
他に好きな人が、沖田に出来ないかなんて、誰にも、沖田自身にも保障できない

もっと素直になりたい、もっと簡単に甘えたい、ちゃんと自分が意思を表さないと、進まない

思いつめたように、考え込む

そうして、神楽は何を思ったか、座ってる席から、つつつと沖田の席のほうへ近づき、体をピタとくっつけた
「は??」
沖田は、意味が分からない。当たり前である
いきなり、神楽がずずっと近づいてきたと思えば、自分に密着したのである
思わず声を出してしまった。
皆の視線が、思わず神楽と沖田の方へ向く、それに気付いた神楽は、耳まで真っ赤にし、いそいそと元座っていた自分の席につつつと戻って、恥ずかしそうに俯いた

何が何か分からないが、顔が赤くなったのは、神楽だけではなかった
嬉しくないはずがない。自分の彼女がぴとっと体をくっ付けてきたのだ。思わず声をあげてしまった自分に後悔した
離れて行く神楽に、思わず声をかけそうになるが、我慢した
沖田の顔も、実は同じように嬉しくて赤く染まっていたのは、目の前に居た近藤と、隣に座っていたミツバだけが知っている

素直、素直って・・・何??
本気で考える神楽だった

ご飯も食べ、お風呂も入った。後は布団を敷き、昨日見たく雑談・・・と言うトコで、廊下に居る、お妙らにちょいちょいと手招きをされた

「神楽ちゃん・・・あのネ・・・」
そこまで言うと、ミツバは顔を赤くし、思わず両手で隠した
そしてその続きを妙が言う事になる

「あのネ、最後の夜じゃない?旅行だって次いつ来れるか分からないじゃない?だから、二人で過ごしたいなって・・・」
恥ずかしそうにお耐えは言う

「うん!二人で居たいアル!」
思わず声を上げた。素直になるチャンスだと、神楽は気合を入れる

「じゃあ。私、晋介様に後で声かけるッス!!」
また子も、意気込む

何も知らない男。実は積極的なのは女のほうなのではないのか・・?と思う


……To Be Continued…

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