act 12

「沖田〜こっちアル!!」

浜辺にでた沖田を、神楽が呼ぶ。日の光に当たらない様に、パーカーとフードを被って。
沖田は、マジマジと神楽の水着をみて、やっぱり見せたくないと思うが、そうもいかない。神楽は沖田の手を取り、少しだけ泳ぎたいと言う

「オメー日に弱いじゃねぇか」
「だからちょっと、ちょっとだけアル!」

神楽はそういうと、パーカを脱ぎ捨て、沖田の手を取り、海へ駆け出した。今回初となる海を、堪能する。浮き輪をもって、沖田とはしゃぐ。
あとの皆は、気を使い、うららを含めてビーチボールをしている。少しでも二人の時間をと。神楽が日に弱いのは、既に全員知っているためだった

「気持ち〜〜アル」

神楽は楽しくてたまらない。素肌を出し、今を十分楽しむ
「おま、少しは浮き輪貸しやがれ」
「いやアル〜〜」

沖田と浮き輪の取り合いになる。しかし、20分もすると案の定、神楽は日陰に入るハメになった


「だから言ったろィ・」
「だって・・沖田と泳ぎたかったんだもん」

言ってから神楽は、カッとなるのが分かった、そしてそれは沖田にも伝染する。二人とも頬を染め、真夏の雰囲気に酔う。神楽は、今なら言えるかもと、深呼吸をし口を尖らせた

「そ、そう・・」
「かぐらちゃ〜ん」

もう少しで言えそうな名前を、又もや邪魔が入った。二人の甘い雰囲気は粉々に壊れた

「ねえ、お腹すかない?何か買いに行くけど。欲しい物は??」

パァっと顔が輝いた。頭の中には、食べ物の事しか浮かんでこない、海の家を見渡し、ありとあらゆる食べ物の名前を口に出した。そんなに食べれるの??神楽には、それは愚問だった

シートの上には、沢山の食べ物が並ぶ。それを美味しそうに、沖田の隣で食べる神楽。そしてそれを愛しそうに見る沖田。そしてそれを、悔しそうに見るうらら。他の皆は視線を泳がした

食事も終わり、神楽はパラソルの中、隣に沖田は腰を下ろしている

「総悟、一緒に泳ごう!!」

何の悪びれも無くうららは沖田に声をかける

「俺はココにいまさぁ。姉上でも連れて行きなせぇ」

沖田は表情を変えず、うららの誘いを断った。ミツバは気を利かし、うららを海へさそう。しかし、その腕をうららは離し、沖田が良いと言い張る。
神楽は本当は行かないでと言いたかったが、素直じゃ無いのは、神楽の特許だ。

「行って来たら、いいアル」

は?と聞き返す沖田に、もう一度神楽は言う、逆にカチンと来た沖田は、うららを連れて海に行ってしまった

「何で、そうなるかねぇ」

呆れながら土方はタバコに火をつけた。神楽は、自己嫌悪で、座ったまま、膝に顔を埋めている。こんな自分、嫌だった。行ってほしくない・・一言でいいのに・・。
沖田の方を見ると、うららは沖田の腕に絡み付いている。沖田はちろちろと神楽の方をみる。後悔してるのはどっちもらしい。沖田の髪は海水で濡れ、それをうざったそうにかき上げる。華奢そうな体は、脱いで見ると逞しく、うららでなくても4人は目を引いた。隙あらば声をかけ様とする女が、ハイエナの様に群がる

さっきまで楽しかったのに・・・。神楽はたまらない、何でこんな旅行に来てしまったのか、バカとしか思えない。
考えると、体の内側から、こみ上げるものが溢れてくる。全部自分が悪い。沖田の所為じゃない。可愛くなれない自分が嫌い・・甘え下手な自分が歯がゆい・・こんな自分・・嫌われちゃう・・取られちゃう
思いは形になり、涙として外に出てきた

「っ・・は〜〜。もう私・・・可愛くないアルナ〜〜っ。ちょっと・・休んで・・・」

涙目は、やがてぽろっと一つの涙を落す。悟られたくない・・。皆に心配かけない。
神楽は浜辺を歩く。立ち去ろうとした時には、既に遅かった。口と手はわなわなと震え、涙交じりの声、涙だって絶対見えた。

皆の表情が固まった、少しでも遠くに。見せたくない、知られたくない・・・

「っ・・もうホント・・駄目アルナぁ・・っふ・・・っうっ」

必死に出てくるなと願う。手の甲で何度涙を拭っても、すぐに新しい涙が落ちてくる。それでも拭い続けた。
両手で瞳を覆う。お守り・・ちゃんと買ったのに・・全然不安がなくならないヨ・・・。
涙でぐしゃぐしゃになる。目は赤く腫れる。

「かぐらぁぁ!!!」

民宿の裏通り・・誰にも会いたくないと思って来たのに、意図も簡単に見つかってしまう。神楽の目は見開いて、こんな顔見せたくないと、駆けようとするが、沖田に腕を掴まれてしまった

「っふっ・・・ふえぇぇ・・・・・・」

声を出し泣き出す神楽を、思い切り沖田は自分の中に閉じ込め、ぎゅうっと強く抱きしめた

「すまねぇ・・・・!行くべきじゃなかった。ゴメン・・」
「っ。そ・そぅ・・ご・・」

涙に混ざって出てきた言葉・・形になった、ずっと待ってた言葉。神楽はやっと言えた、たどたどしく・・弱いけれど・・。

その声は、しっかりと沖田にも届いていた。一瞬驚き、抱き締めているその腕の力に、より一層の力を加えて・・
沖田は神楽を閉じ込めていた胸からゆっくりと離す。

赤く充血した蒼い瞳、潤ませて、今も尚そこから流れ出てくる涙。沖田は親指の腹でそっと涙を拭ってやった。拭っても拭っても、流れてくる涙を優しく舐める。何回も、何回も舌の先で舐めていく・・・。

「総・・悟・・好きアルぅぅ」

堪らなく神楽から出てきた言葉、沖田はゆっくりと神楽に顔を近づける。そしてゆっくりと唇に触れた。
最初は、優しくちゅっと・・音を出して離れて行く。
目と目が合い、更に近づけ重ねる。溢れるような気持ちよ、どうか伝われと神楽はキスに思いを託す。自分の頬に置かれている沖田の手に、そっと自分の手を重ねた

角度を変え、幾度も幾度も繰り返し重なり合う。音を立てて、確かめるように・・

「っんっ・・ぁ・・ふっ・・」

ぴちゃぴちゃと、舌の絡み合う音のみが、通りに広がっていく
浅く、・・深く・・沖田は神楽をただただ、貪り、味わい続け、そしてお互いの息が切り切れ、息も上がったトコで
再び、強く神楽を抱き締めた、その抱き締められる手の感触に、神楽は幸せを感じることが出来た


……To Be Continued…

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