act 10

「もう・・嫌アル・・何か惨めで・・さっきもきっと笑ってたネ」
「うららちゃん?何か言われたのね?」

深夜と言う事で、広間の自販機の前にある椅子に腰をかけ二人は話す。もう電気もちらほらとしか付いておらず、薄暗かった。しかしそれの方が、落ち着けるかと思った神楽だった。確かに伝わる涙の後、鼻をすすり、ミツバはよしよしと神楽の頭を撫でた。

「総悟と・・・その・・・したって・・」
きょうだいであるミツバにこんな事言うのはどうかと思ったが、誰かに話したかった。ミツバは柔らかく笑うと、又もやよしよしと撫でた。

「そんなに焦らなくていいじゃないの・・」
「でも・・・・」
「総ちゃんは、凄く神楽ちゃんの事大切にしてると思うわよ」
「それは分かるヨ、でも、大切だけじゃ・・」
ミツバも、土方と言う恋人がいる、悩んでる事は同じ女の子としてわかる。でも、そんなに先を急がなくてもいいんじゃないかと思う心と、どうしても負けたくないと言う心があるのが分かるから、答えを見出せない。ただ自分が一緒にいる方が、落ち着くんじゃないかと思ったのだ。神楽の手をぎゅっと握る。黙ったまま、ただそこに居る。何も言わなず手を繋いでるだけ、ただそれだけだが神楽は嬉しかった。今沖田が来たところで、上手く言えない感情をぶつける事しか出来ないと思う。そしたら又喧嘩になって・・そんなのは嫌だった。ミツバに神楽は寄りかかる。ミツバも神楽に寄りかかる。
「恋愛って、難しいアル・・」
「ふふ、そうね。でもだからおもしろいんじゃないかしら・・」
「そうアルナ・・」

二人は、柔らかく笑うと、もぅしばらくだけ、このままで居たいと思った


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「おはヨ。」
沖田が起きた頃には、神楽は既に着替えていた。真っ白のノースリーの短いワンピース。綺麗な足が、スカートの中から伸びている。昨日の事は、あえて二人とも何も言わない。ぎこちない神楽の態度が、沖田の胸を打つ。
昨日神楽はあれからミツバに中の様子を見てもらって、そっと入った。皆神楽を待っていたが、夜中と言う事もあり、我慢できずに寝ていた。その際、男女に分けられていた布団は意味も無く、皆で神楽を待ってたまま寝たらしく、男側の布団にまた子、妙、近藤、土方、沖田、高杉、それぞれ重なる様に寝ていた

ゆっくりと神楽はミツバと布団に入る。うららが近くに寝ていたが、気にしないでおこうと決めた
まさか、深夜自分が居ない中、自分の彼氏に告白をしたとも知らずに

それぞれが、むくっと起き出す。今更だが、また子と妙は、彼氏に絡んで寝ていることに気付く。ぎゃあと離れ、寝癖に又驚き、急いで支度をする。ミツバも、神楽と共に早く目覚めた。朝、もう一度、ミツバと外で風に当たりながら話をした。私は私らしく・・。ミツバと神楽は軽くなった気持ちで、皆を起したのだ。

「神楽ちゃん・・もっと早くに起してくれれば・・・」
ゴメンヨ〜と謝る。皆それぞれ着替えも支度も済ます。朝食に行こうと部屋をでる。
「朝はバイキングになってるんだって!楽しみッス」
「マジでカ!!嬉しいアル!」
「オイ。物には限度ってモンがあるんだ。其処にある物全部を食おうとするなよ、頼むから」
土方はげっそりと神楽を見た
「わ、分かってるアル。」
階段をくだり、広間に行く。近藤、妙。ミツバ、土方。また子、高杉。順に席に座る。向い合わせの広い台に座っていく。沖田は神楽の手を引き自分の横に座らそうとした。が、反対側からうららが手を引いた。
「は?」
神楽はしかめ面になる。さすがにカチンと来た
「お前いい加減にするアル!!。私の隣に座るに決まってんだろ!」
「だから反対側の隣に座れば?」
朝ご飯の時間。見れば、其処は色んな客で溢れている。夫婦、恋人、家族。そんな中で神楽は喧嘩をしたくなかった。自分たちを好奇の目で見ている者もいれば、家族ずれの客は、いかにも嫌そうな顔でみる。沖田はうららに、反対側にいけと促すが、引き下がらない。恋人、夫婦はともかく、折角の家族旅行で来ている子供に見せたい光景ではない。

神楽は手をぱっと離し、今はイイアルと反対側の近藤の席の隣に座った。向かい合わせにはなれるからと。うららは、昨日の事もあり、態度に遠慮がなくなった。総悟、総悟と絡む。思わず箸を折りそうになる。沖田は明かに面倒くさそうにしている。無視を決め込むか、適当にあいづちを打つか。
しかし、ご飯はとってもおいしく、神楽はお替りをする、うららは、よくそんなに食べれるよねと笑うが、神楽は無視をした。お腹を満たし、この後は何処に行こうかと話しになる


「この近くに神社があるんだって。色々なお守りとかあるって言うし行って見ない?」
お妙は、地元の人に地図をかいてもらったらしく、其処に行こうと言う。それに賛成し、トコトコと歩く
「ミツバ、大丈夫か?」
「うん。休みながら行ってもいいかな・・?」
土方は、ゆっくり二人で行くからとペースを落とした


「晋介様・・手を・・手を・・・」
坂道になり、また子はひーひーと言う。軽く舌打ちを高杉はし、仕方ねぇなとまた子の手を取り、引っ張ってやる

「おたえさ〜ん。僕の手を〜」
「何か言いまして??」
「な、何でも・・・!!」
お妙の表情をみた近藤は、ひたすら歩き続けた

「おき・・」
「総悟〜疲れた〜手ぇ引っ張って」
神楽が言う言葉を遮り、うららは沖田に手を差し出した。それを無視して沖田は神楽の元へ行く
「負ぶってやろうかィ」
口元を吊り上げ笑う。
「な、いいアル」
慌てた神楽をみて噴出した沖田は、せめてと自分の手を差し出した
「ほら行くぞ」
「うん!!」
神楽は沖田の手をギュッと握り締めた。うららは悔しそうに下唇をかむが、沖田は無視をする

「ミツバ姉大丈夫アルカ?」
「姉上は土方コノヤローがちゃんと見てるだろうでさぁ」
「もうヤキモチは妬かないアルカ?」
「テメーが居るからな」
「っつ。恥ずかしいアル。真顔で言うなヨ」
愛しそうに神楽の頭をわしゃわしゃとする、神楽が動くたび、真っ白のワンピースから覗く足の面積が広くなる。見ていたい。でも見せたくないような複雑な気持ちが入れ替わる




「着いた〜〜!!」
ゆるやかな斜面を行くと、確かに其処には神社があった。
大きな神社ではないが、何となく風格があり、とても落ち着いていて、汗ばんだ体に冷たい日陰の風が体にあたると、気持ちが良くて、思わず顔が緩んだ。木々が茂って、影が沢山ある。沖田と手を繋いで見て回っていると、続々と後方からも送れて到着していた。最後は、土方がミツバを負ぶってやってきた。やっぱりこの斜面は、体の弱いミツバにはこたえる物だったらしく、おとなしく土方の背に負ぶわれていた。汗をビッショリにかいた土方は、頭を水で流し、気持ち良さそうに日陰でミツバと寛いでいた。また子と高杉は、主にまた子が高杉を引っ張りまわしているらしく、ずるずると引かれていた。お妙と近藤は、色んなお守りを二人で見ているようだった

自分の隣にいると思っていた沖田に話しかけると、其処にはいなく、気が付けば、うららの所にいっていた。
何でと行くと、ヒールのある靴を履いている所為で、足を痛めたらしかった。足には血が滲んでおり、痛さで顔が歪んでいた。さすがにほっとけなかったらしく、手を差し伸べ、水のある所まで連れて行き、足に水をかけてやっていた。
<痛いから・・仕方ないアル・・>

見なかったことにし、神楽は、一人でお守りを物色し始めた。
「恋愛・・・成就のお守り・・ネ」
手にとったのは、恋愛成就のお守りだった。もう付き合ってる神楽には、特にいらない物だったが、今の不安定な自分たちには、お守りでも頼ってしまいたい位だった。そのお守りを、じーと見つめる。
「こんなモン、必要ないだろィ」
後ろを振り返ると、立っていたのは沖田で、神楽が持っていたお守りを取り上げると、別のお守りをとった
「どっちかってとコレだろ。」
とったお守りには、二人の愛と書いてある、恋人同士の中を深めたい貴方にとも書かれてある。沖田はそれを二つ取ると、さっさと持ってってしまった。沖田が選んでくれたお守りが嬉しかったが、それでも拭えない不安があって、神楽は、そっと最初にとったお守りを取った。

それぞれが、堪能し、うららをどうするかと言う事になる。当然うららは沖田に負ぶってもらいたいと言うが、妙と、また子は、気を利かして、近藤、沖田、高杉の三人で交代におぶることにした。当然土方はミツバをおぶる。
帰りはきっと沖田がおぶるのだろうと思っていたので、幾分気持ちが楽になった


……To Be Continued…

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