世の中の季節と言うものが、冬と名ずけられ、冷気が自分に纏わり付くが
ただ、ただ、一心に、竹刀を振り続けていると、額にぽつ、ぽつと汗が滲み出てくる。すると、冷気を自分の温度が侵食しはじめ、たちまち自分の周りだけ、熱気がこもる。動き続ける事でその熱気は徐々に上がり、かじかんでいた手が暖かく汗で滲み、たった一人、自分の熱気だけで道場全体が温かくなった様な錯覚に陥る。

沖田は、この時間が気に入っていた。自分の雑念を振り払うのに、この時間を持つのが丁度良かったからだ。
それが例え、自分の近頃イライラしてる原因の感情だとしても、この時間を持つ事で、その時だけ忘れることが出来た。

しかし、振りながら、頭の片隅で、その事について考えてしまった時点で、その時間は終わりを告げる。
集中力がプツッと切れたのが分かり、振るのをやめ、一息つく。まだ火照っているその足の裏を、タオルの方へと移動させた。長い息を吐き、汗ばんだ自分の顔を拭き、水分を口に含みながら、自分の集中力を切らせたそのイラつく原因をまた、頭の中でぐるぐると考えさせていた。

些細な事、いつもの些細な喧嘩の後から、彼女である神楽と連絡がつけにくくなっていた。ほんの冗談のつもりで置き去りにしたものの、あれから中々逢って貰えない事に不安、苛立ちの類の感情が渦を巻いて仕方ない。
昼間神楽に逢いに言っても、だるそうに寝てるだけ。揺さぶっても何しても寝ぼけているだけ、夜、逢いに行くと言葉を銀時は巧みに言葉を使い神楽を出さない。謝ろうとしても実際昼間は意識が殆どない上、夜は居ないじゃ手の打ちようが無かった。
沖田は真面目に携帯を持たせようかと考えていた所であり、こんな事ならもっと早くに持たせておけばよかったと考えながら、体にこもる熱気をただただ放出させた。

一度、神楽が恋しくなり、寝てる神楽に唇を重ね、抱き締めたが、全く起きるそぶりがない事に苛立ちを思える。
普段の沖田ならば、夜は居なく、昼は寝てると言う習性に、何かしら気付く点がありそうなものだったが、神楽だからこそゆえ、その考えに辿り着かなかった。

自分の体を、再び季節独特の冷気が包み出した頃、ひょっこりと近藤の顔が道場を覗いたのを視界の隅で沖田確認し、表情を和らげた。
「何かあったのか、総悟。」
いきなりの質問に少々沖田は面食らう。
「近頃、頻繁に道場にこもるだろ。お前の癖だな。何か雑念を振り払いたい時には、剣に没頭する。どうせチャイナ娘の事だろう?」
今度はハッと顔をさせ、隣に腰をかけた近藤を見る。沖田のその表情を見ながら近藤は柔らかく笑った。
「何となくな。お前が少々の事では動じないのは俺はよく知ってる。一つの例外を覗いてな。」
そう言うと、近藤は沖田の右手の薬指に視線を落とす。

すると沖田は近藤にだけ見せる屈託のない表情で照れた。
その右手の薬指には、神楽とおそろいで買ったシルバーリングがはめられていた。あげたとき、神楽はキャーキャーと昔みたいに騒ぐのではなく、唇をそっと開け、驚いた表情を見せた後、目を細めありがとうと言ったのだ。その笑顔は今も沖田の中でしまってある、宝物の一つだ。

「少々喧嘩しちまいました。」
すんなりと沖田は近藤に言うと、近藤は柔らかく笑う。喧嘩の一つや二つ、初めてじゃないだろう?そう近藤は沖田に言う。確かにそうだった。喧嘩なんて、日常茶飯事だ。しかし今回の様に10日程まともに口を聞いた事がないのは初めてだと近藤に沖田言葉を漏らす。

近藤は沖田の頭をくしゃりとさす。
「あの娘が、お前に惚れてるのは誰が見ても一目瞭然なんだ。そんな気にするな。」
沖田は近藤の言葉に、少なからず安心をする。そうですねと軽く笑って見せた。

近藤も柔らかい表情を見せた。そして、近藤は少々話を切り替えたのだ。

「―――実は、総悟に頼みがあるんだが…。」




……To Be Continued…







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