act 36

大きな馬、ちょっと小ぶりな馬、そして馬車…。くるくる、くるくる。それは回る
見えなくなったと思ったら、また見えて、満面な笑みをコチラに向ける。
「母ちゃ〜ん!」
「パピー!」
ちっちゃな手を大きく大きく振って、上がったり、下がったり。

隼人と蒼がしくしくと泣き声をあげる中、神楽は機嫌をとろうとメリーゴーランドに目をつけた。
泣きながら手を引かれ、歩く、初めて見るメリーゴーランドに涙は引っ込み、瞬く間に駆けて行く。
少々並ぶ程度で順番が来る。一緒に乗ろうとの声に神楽は流石に恥ずかしく、理由として、
「マミーが乗ったらその分、乗りたい子が次まで待たなきゃいけないヨ。だから見てるから乗ってくるアル。」
そう笑った。蒼と隼人は分かったと頷き、甲高い合図と共に動き出したその馬に興奮する。

「今までこんなトコ、連れてきた事無かったから…。」
「休みのたんびにでも、望むなら連れてきてやる。」
神楽がつぶやく様に言った台詞の直後、沖田は手を握りながら言った。
神楽はその手を握りながら、沖田の方を見ると、頷き笑う。

「可愛いですね。本当に…。」
ミツバの言葉の続きを土方は汲み取る様に、頬を掻いた。
「か、体の方は、本当に大丈夫なのかよ。」
ミツバは驚いた様に土方の方を見る。すると土方は珍しく顔を真っ赤にへと染まらせた。
そんな土方の顔を見たミツバは、たまらないように、はにかみ、一言、『はい…。』そう頷いた。
自然に手と手は絡めあう。今更そんな事くらいで照れるような間柄でもないが、二人は照れた。
しかしその手だけは、離れない、離したくないと、より一層力を込め、握られた。

.......

沖田の腕の中には、蒼が。土方の腕の中には隼人が…。
アレからもただただ遊びあるき、走り、声を出し、散々遊び、うとうとしてきた所で抱いてやると、瞬く間に寝息が聞こえ出した。
少々悪態をつきながら、沖田は土方と前を歩く。
園内の景色、花壇を見ながら、少し後方をミツバと神楽は歩いている。
「今日は日差しがきつくなくて良かったアルヨ。」
「本当ね。」
神楽は沖田が蒼を抱いている、その背中を見る。
「あたし、今凄く幸せアル。多分世界で一番、幸せアル!」
そう笑う神楽の顔を見ながらミツバも微笑む。その背中が、愛しく、頼もしく、何も、もう何も恐くない。
そう思えた。

「さっきも言ったけど、あたし、早くミツバ姉の赤ちゃんも見てみたいアル。もちろん体が一番だけど…。」
「うん…。私も本当にそう思うの。今まで考えた事無かったけど、神楽ちゃんと、総ちゃんを見てそう思えたの。それに、それに十四朗さんも…。」

神楽の口はみるみる大きくなった。その顔をキラキラと光らせて…。
「トッシィィィ!!!!」

神楽は、土方の方へ走る。そして後ろからぎゅうっと抱きついた。グエっと声を出し、土方は離れろと声を飛ばす。その後ろでミツバはくすくすと笑っている。隣の沖田は蒼を抱いたまま、その長い足をそのまま土方の腰へと蹴り上げる。土方は沖田にへと、更に神楽へと罵声を飛ばす。

「トッシィィ!えらいアル!見直したネ!」
神楽はますます背中に飛びついた。流石に大人になった神楽の体重は小娘の時とは異なり、付加がかかる。
搾り出す様に止めろと言う声を聞いたミツバは声をあげて笑う。
無理やり沖田は、神楽を剥がす。神楽はその足で、沖田の背に抱きついた。

「総悟。あたし、すっごく幸せアル!帰ってきて良かった!大好き、皆大好き!総悟が大好きネ!」
沖田は蒼を抱いたまま後ろを振り返ると神楽は本当に幸せそうな顔で微笑み、その口にちゅっと音を鳴らした。
いきなりの事に少々驚いた沖田だったが、すぐに横に神楽が来て、その手を腕に絡ませると、微笑んだ。

「―――頼むからあんな真似をお前はするなよ。」
げんなりと神楽と沖田をみる土方の隣でミツバは笑いながら、腕を組む。
「じゃあ、帰ってからなら、してもいいですか?」
神楽のようにイタズラに微笑むミツバを見ると、思わずこの先のミツバの変わりっぷりに冷や汗を掻く思いをしたが、その貌が不覚にも自分の心を強く揺さぶったので、会えてその点には触れず、短く、「あぁ…。」とだけつぶやいた…。

……To Be Continued…

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