act 35

「ばっ!馬鹿野郎…。んな簡単に進めっか!」
そんな土方の様子を沖田はクツクツと後方で笑う。
しかし、いざ長く、その狭い階段を上っている内に、ミツバと神楽もやはり恐くなってきた。
ミツバは後ろから土方の着物をぎゅっと掴む。神楽は隼人と握り締める。隼人はその恐怖を感じたようでぎゅっと握り返す。
その後方で、平然と沖田はのぼる。蒼の「父ちゃんは恐くねぇのか?」の声に即答で、「全然。」と答えた。

階段を上り終えると、赤く照明で照らされており、その雰囲気は一段と恐くなる。
ミツバは土方と並ぶ。土方の着物の袖を掴む。そして手をぎゅっと絡ませた。
神楽は沖田の袖をぎゅっと掴みたかったが隼人を抱いてるため掴めない。仕方なく進む。
城屋敷の様な作りになっており、床をふむと、ギィ、ギィと音が撓る。長い廊下を進むと、行き止まりの手前、ひと部屋の障子が左手に見えた。
絶対何かある!皆そう考える。しかし右手は壁。其処を通らなければ先には進めない。恐る恐るその障子に近づく。
丁度障子の前にくるとカッと障子が赤く照らされ、その影に刀を振り上げた武士の姿が映し出される
「うぉぉぉぉ!!!」
「「キャァァァ!!」」
土方、ミツバ、神楽は叫んだ。すると、沖田は躊躇もなく障子をスパンと開ける。
「何でィ、何にも居やしませんぜ?」
平然とそう吐き捨てた。皆唖然とする。
更に進む…。毎度キャーキャーと叫ぶが相変わらず沖田は蒼を抱いて平然とする。隼人と蒼はやはり恐さ半分、初めてのお化け屋敷にワクワク半分というところで。実際の所、大の大人三人が叫んでいただけだった。

通路も架橋に差し掛かる。その頃になると、土方も比較的落ち着いており、毎度神楽が一人で縮こまり、隼人を抱いたまま恐くしゃがみこむ様を見て、隼人を神楽の変わりに抱く。
手の空いた神楽は、沖田の腕に絡み付いて離さない。

真ん中を通りに、両側を囚人の牢屋で挟んでいる。
神楽はゴクリと喉をならし、沖田を見る。すると沖田は微笑み肩を抱いてやった。
しがみ付くように進む。牢屋の中には特殊メイクを施された死んだ囚人が居る。頭の髪を乱し、着物は着崩れ…。

「キャァァァ!!」
神楽の悲鳴に沖田は振り向く。すると牢屋から出ていた死人の手が神楽の足首を掴んでいた。神楽は嫌ァァと言いながら足をブンブンと振った後、離れた手をゲシゲシと踏んだ。低いうめき声をあげながらその手は引っ込む。
すると、最後の演出だったんだろう。先ほどの囚人が檻からぞろぞろと出てき始める。

顔から血はふき、特殊メイクもすごいわねといいたくなるほどの出来栄えだ。
此処を振り切るようにして終了。ゴールはすぐ其処。黒い暗幕の向こう側には微か外の光が見えている。
が、しかし女は腰を抜かした。
「はッ?神楽ほら立て!」
「だ、駄目アルぅぅ…腰が…。」
「オイ、ミツバ、此処は後走って抜けるだけなんだ。さっさとッ…。」
「こ、腰が抜けちゃって…。」
土方と沖田はとりあえず子供を下ろそうとする。が、しかし此処に来て迫り来る囚人に双子は火がついたように叫び、泣き、しがみ付いて離れない。囚人は脅かすのが仕事。しかも腰まで抜かすと言う驚きっぷりに自分達を誇りに思う。さらに調子に乗る。
神楽はチャイナ服を、ミツバは着物を振り乱し、あっちへ行けと、足をバタバタとする。
沖田と土方はとりあえず蒼と隼人を下ろそうと神楽とミツバをそのままに、出口に向った。
『嫌ァァァァ!!!』

その尋常じゃない叫び声に二人とも暗幕の手前で振り返る。
するとそこには調子にのった囚人が神楽とミツバの周りを囲み、さらに驚けと手や乱れた足を触る。神楽とミツバは二人しがみ付くようにその足と手をバタバタと振っている。

『何触っとんじゃボケェェェェ!!!!!』
沖田と土方は走りこむ様に子供を抱いたままとび蹴りを食らわす。
囚人。もとい、仕掛け人は吹っ飛んだ。そして、子供を抱いたまま根性で女を持ち上げ、其処から走り出た。

ゼェハァと肩を上下に揺らし、呼吸をする。
そんな男の背中をゴメンネと女は擦る。お化けから解放さえすれば、その腰は回復された。
若干まだよたつくが…。

土方と沖田は息を乱す中、お化けも恐かったけど、最後の最後でのあの行動と言葉に、やっぱり入って良かった。
さすがはお化け屋敷と神楽とミツバは目を合わせ笑ったのだった。

……To Be Continued…

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