act 33

「ミツバ姉の赤ちゃんが見たいアル。」
「「ぶぅぅぅうう!!!!」」

.....

チェックアウトである10時にホテルのロビーに下りると其処にはミツバと土方が居た。
土方はめずらしく私服で、ミツバと一緒にホテル内にある喫茶店でコーヒーを飲んで居た。
先に気付いたのは隼人で、一目散にミツバの所へと駆けて行く。それに続き蒼が土方の元へと駆けた。
神楽と沖田は顔を見合わせ、土方とミツバの元へと足を向けた。

「どうしたアルカ?」
「おはよう、神楽ちゃん、あのね、十四朗さんが今日は夕方からでね、朝食をと思ったの。それでどうせなら神楽ちゃんもと思って来ちゃったのよ。」
そう言うとミツバはあらかじめ広めの席を取っていた事で今も空席であるその椅子を引いた。
神楽が座り、その横に蒼が座る。向って反対側の土方の隣には隼人が座り、その横に沖田が座った。
神楽は、メニューを取り、ジーと見る。
その目は至って真剣そのものだった。

沖田は神楽からメニューを取り上げる。すると神楽は頬を膨らませ沖田を睨んだ。
が、それを沖田はたやすくスルーし、店員を呼び寄せ、早口に注文を済ませた。
神楽が何か言いたそうにしてるが、それを全く気にする事なく沖田は口を開いた。

「今日は俺が非番なんでさァ。姉上、このマヨラーを置いて、一緒に出かけやせんか?」
「オイ、総悟…。テメー朝っぱらから喧嘩売るなんザいい度胸じゃねェか、上等だ。その喧嘩買ってやるよ!三倍返しでなァァ。」
「だぁぁぁ!お前らはどうしていつもそうアルカ!蒼や隼人の方がよっぽどおりこうアル!ね?ミツバ姉!」
「ふふっ。本当ね。蒼ちゃんや隼人ちゃんの方がずっとずっとおりこうさんね。」
一触即発な土方と総悟をジロリと睨み、神楽はその視線を掌を返したように優しく蒼と隼人に向けた。
沖田と土方は隼人を挟み、しばらくも火花を散らしていたが、料理が運ばれた事で落ち着いた。

土方は朝食を済ませ、すでにコーヒーを口にしていた。そして沖田は来たばかりのコーヒーを飲もうと口につけた。
そこに神楽が何を躊躇する事も無く、先ほどの台詞を口にしたのだ…。


「あっちィィ!!」
「お、オイ、オメー何言ってやがる。コーヒーがミツバにフルでかかっちまったじゃねェか!」
土方はミツバの着物に盛大にコーヒーを吹き出してしまい、それをお手拭で丁寧に取っている。
沖田は吹いた時に盛大にしぶきを口に当て、声を上げていた。
「てか総悟、私にもかかってるアルヨ。」
神楽がこめかみをピクピクとさせながら静かに言う。
「オメーがわけわからねェ事を言うからじゃねェか!」

「きったないアル!てか別におかしくないアル。ミツバ姉に体調の事ちゃんと聞いたら、平気だって言ってたから…。」
「その話しはヤメロ。頼むから止めてくれ、こんな所で。」
「ふーん。」
真っ青なチャイナ服にコーヒーをぶっ掛けられた神楽はゴシゴシとお手拭でそれを拭きながら口を尖らせた。
ただ、ミツバの困った様な顔を見て、すこしだけ反省をする。
別に嫌味で言った訳でもなく、催促したわけでもない。
ただ、蒼を、隼人を見るミツバの目が本当に優しくて、多分、欲しいんだろうなァと思ったのだった。
だから聞いてみた。コソコソ聞くのではなく、はっきりと聞きたかった。

悲しそうな顔をさせようとしたわけではなかったのに…。

そんな神楽の様子を見ていたミツバは自分の着物もそこそこ、神楽の頭に手をやった。
「ありがとう。神楽ちゃん。ただコレばかりは神様からの贈り物って言うでしょ?
その時が来ればちゃんと私の所にも来ると思うの。その時までは蒼ちゃんと隼人ちゃんを可愛がってもいいかしら?」
神楽の頭をなでなでとミツバは笑った。
大きく神楽は頷く。何となく神楽の真意が分かった沖田と土方は、全く同じように項を掻いた。
その後も朝食は進む。神楽は当然だが足りないと言い張った。
沖田は、メニューをため息を吐きながら取ると、さっとそれを神楽は取り上げた。
「私が選ぶアル!」
「あんま食うと太るぞ。」
「はっ!その手にはのらないアル!太ってないヨ!」
「そうかァ、やっぱ10代の頃より肉付きがいいと昨日も思ったがッハッ!」
神楽はフルパワーでメニューごと沖田の頭に手を振り下ろし、直撃させた。
フルフルと震える神楽に沖田は、危うく意識を手放しそうになり、ミツバは笑い、土方は呆れていた。

蒼と隼人はケタケタと笑った。
神楽はくちにケチャップをつけた蒼の口を綺麗に拭ってあげると、ミツバが反対から手を綺麗に拭ってあげた。
満足気な蒼を見た隼人はまたもや口を尖らす。何度も言うが、隼人の手や口は汚れてなど居ない。
それを沖田は、あるものとし、丁寧に口を拭う。
すると何を思ったのか土方もミツバと同じ様に隼人の手を綺麗に拭いてあげたのだ。

これには神楽、ミツバ、沖田は目を丸くした。

神楽の一言で確実に土方の中で、小さく変わったものが出来たと、照れた土方を見ながらミツバは小さく微笑んだ…。

……To Be Continued…

作品TOPに戻る






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -