act 31

「すっげェ!跳ねるぜこのベット!。」
「本当だ!跳ねるよこのベット!。」
ダブルベットの上でぴょンぴょンと跳ねる蒼と隼人を見ながら神楽は微笑む。
そしてダブルベットの脇にある、テーブルを挟むようにある二つの椅子の一つに腰をかけた。

そこに部屋の鍵と明日の着替えをいれた大きめのバックを肩にかけ沖田が神楽と向かい合わせに椅子に座った。
神楽は、今もまだそのベットに夢中な蒼と隼人に視線を向け、そして沖田にへとその視線を移した

「本当にいいアルカ?なんだか勿体無いアル。」
「いや、別に大した事じゃねぇよ。」

沖田は、神楽を見つめ、ふっと笑った。

....

沖田が銀時、土方と共に浴室を出てくると、其処には既に神楽とミツバの姿もあり、女より長ブロとはどう言う事だと神楽に言われる。
神楽の手には瓶のコーヒー牛乳が握られていた。そして蒼と隼人の手には同じように瓶の牛乳が握られていて、新八、山崎、ミツバもそれぞれ片手には自販機のジュースを持っており、扇風機に皆して当たっていた。

その光景を見た銀時はすぐに定番の500mlの苺牛乳をもとめ、売店へと急ぐ。
程なくほくほくした顔で戻ってくる。風呂上りにはやっぱコーヒー牛乳アルと言う神楽の言葉に銀時は、苺牛乳の間違いだろうがと言う。言い合いを始めた二人を他所に土方と沖田も瓶のコーヒー牛乳と牛乳を買う。どうやらここでもひと悶着起きそうだと新八と山崎は肩を落とす。

そんな様子を見てミツバと近藤は微笑む。
蒼と隼人は自分の父親である沖田とそっくりなミツバを、やはり不思議な目で見ていた。
頭をミツバが撫でてやると嬉しそうに抱き付く。しかしミツバが二人を抱くことが出来るはずもなく、近藤が軽く二人を抱かかえてやった。
すると目線がぐっと高くなった光景に2人ははしゃいだ。

一時、旋風機に当たり、それぞれが談笑をする。久し振りの銭湯と言う事で、それぞれの顔も何やらテンションが高そうだった。蒼と隼人はぐるぐると広間を走り回り、度が過ぎ神楽が一喝する。
すると大人しくなった…のはほんの五分程で、まず蒼がそわそわとしだす。それにつられ隼人がちらちらと神楽を見る。その視線を神楽は合わそうとはしない。
目を合わすと負けてしまいそうになるからだ。その可愛らしく無垢な瞳に…。

それを見ていた沖田は隼人を抱き、そのまま肩に乗せた。
一気に高くなった視界に隼人は思わず声も出せずに感動しているようだった。満足そうに下からその様子を沖田は見上げる。すると当然もう一匹、言い出す子がいる訳で。

とても不機嫌に無言で沖田の服の裾を引っ張る。
その顔は酷くぶっちょうずらで。それを見かねた銀時は、ひょいと蒼の体を持ち上げ、肩に乗せる。
目を大きく開き、隼人と同じように言葉が出せない程、そのいつもと違う目線から見る光景に釘づけになっていた。

その様子を神楽はミツバと見ながら微笑んだ。
側にいた、新八も柔らかい笑みを見せ、近藤、山崎、土方も仕事の時とは別人な表情を垣間見せた。

…いざ帰る時になって、再び蒼がごねだした。
「母ちゃんと父ちゃんと一緒がいい!!。」
「だからそれ無理アル。」
「いやだ!。」
「蒼!いい加減に―――。」
神楽は聞き分けの無い蒼にいつもの様に見幕をみせたが、それを沖田が口を挟むことで止めた。

「まぁ待て、皆で寝られるトコがあるが…行くか?ふっかふかのベットもあるぜ?」
 


そう言った沖田の言葉で連れてこられて来たのは、ホテルの一室だった。
滞在先で、ホテルには何度も泊まった事があった蒼と隼人だったが、この様なふかふかのベットに横たわるのは初めてだったため、そのテンションは上がった。
ぴょンと高く飛ぶと、容易にそのベットは撓り、蒼と隼人の足を飲み込み、次の瞬間大きく二人の体を跳ね上げる。
スイートとは言わないが、そのホテルの一室は広かった。
夜景を見渡せるその大きな窓ガラスからは、夜の街のネオンがキラキラと輝いた。
神楽はしばらく其処を除いていた。すると椅子に腰をかけて居る沖田が、神楽を呼んだ。
しかし神楽はその窓から動こうとはしない。沖田は着替えなどをテーブルの上に無造作に置き、神楽へと近づいた。
「どうした?」
神楽は今沖田に気が付いた様だった。そしてふっと笑い窓ガラスの奥にあるこの街の光景に目をやった

「帰って来たアル。この江戸に…。この街に…もぅどこにも行きたくなくて…。懐かしくて、嬉し過ぎて、泣けてきたアル。」
そう言った神楽の頬には筋が一本伝った。その筋を沖田は拭う。そしてやんわりと肩を引き寄せた
「何処にもいかせねェ。絶体な…。もう離さねェよ。」

見上げるように神楽は沖田を見る。沖田は神楽のおでこにちゅっと落とす。
神楽は腕を回し沖田にぎゅうっとしがみ付く。

すると、不意に下から引っ張られた感触に包まれた。見てみると、蒼と隼人が沖田と神楽の服を引っ張っていた。
目を合わせ二人は笑い、二人を抱き上げた。
窓の外を指さし、あそこはね…そういいながら神楽は笑う。隼人は沖田に抱かれながら、その綺麗な夜景に幼いながらも目を奪われていた。
その隼人を、そして神楽と蒼を、柔らかい眼差しで沖田は見た。

その光景は、今日初めてあった父と子の姿ではなく、もう何年も一緒に過ごしてきた、幸せな家族の絵そのモノだった…

……To Be Continued…

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