act 27

まどろんでいる意識に、雫が落下して行く様に、感覚が冴えた。
冴えたとは言えど、まだ意識は奥深く…。しかし自分の周りではけたたましい音、いや声がしてる事に気付く
まだ状況の把握は出来てないが、自分が今目覚めたと言う事は確認出来た。

神楽はゆっくりとその瞼を開ける。
すると隣でミツバがそのけたたましい光景を微笑みながら見ている様が視界に入る
しばらくぼーっとしていると、神楽に気付いたミツバが声をかけた

「目が覚めた?神楽ちゃん、あの後泣きながら、私に抱きついたまま、寝ちゃったのよ、きっと疲れてたのね。今日帰って来たばかりなんでしょ?慌しい一日だったわね、朝から…。」

ミツバに言われた事で、そういえばそうだったと神楽は思いに更けた。
朝、父親である星海坊主と別れ、短い銀時と新八との再会を楽しみ、公園に行って偶然にも沖田と出会い、
そしてぶつかり、触れ合って…泣いて…。
確かに何と急がしい一日だと神楽は考えた。


ひとまず其処で考えることをストップし、ゆっくりと起き上がり周りを見る
どうやら沖田の部屋ではなく、続き部屋の何室かの襖(ふすま)を取り外し、大きな大宴会場と化している様だった。その隅っこに自分とミツバは居るらしい。

まだ半分ぼーとする意識のまま、回りを見渡す
近藤は土方と尺を交しながら飲んでいる。その貌からすると、相当飲んで居る様だった。その横に視線を向けると、其処には沖田が居た。鬼嫁の瓶を持っている。隣の二人からさっすると沖田も相当飲んでいると思ったのだが
その貌はいつも通りだった事で、酒に相変わらず強いのか、そんなに飲んでは居ないのか?と考えた。
なぜならば、その沖田の両膝の上には隼人と蒼が座っており、目の前に広げられていた寿司や料理の数々を皿に取り、無我夢中で食べているのが見えたからだった。

そしてその横には――――。

「銀ちゃん、それに新八…。」
つぶやくように言うと、ミツバが隣で口を挟んだ
「神楽ちゃんが戻ってこないから心配になって此処に来てくれてね、皆集まった事だし、久々にやるか!って近藤さんが言い出してね、」
ミツバの話を聞きながら、神楽は尚も沖田と子供達に視線を戻し、そのままじっと見ていた

この何年もの間、何度この光景を夢見た事だろう…
もう数える事さえ忘れてしまっていた。
沖田の写真を見ながら、何度泣いたか、何度帰ろうと思ったか…。だがどうしても恐かった。
こんな弱い自分でごめんなさい、こんな弱い母親でごめんね。
何回その思いにかられたか分からない。
考える事すら拒否していた夢が、目の前の自分の前に暖かい家族の団欒として映し出されて居る、
不意に、沖田の言葉が思い出された。今の今までが夢で、それに気付いた自分が覚めると全てそれは夢であった…。
沖田が恐いと言った意味がようやく分かった気がした。

其処まで思った所で、ミツバの言葉が耳の中に入ってきた
「神楽ちゃん、どうしたの… …?」

どうしたの?
何が?

そこで初めて、自分の頬が濡れている事に気付く
それに触れてみると、それは確かに涙だった。
流れている涙の量が膝に染みをつくった所で、その瞳は沖田とぶつかった



……To Be Continued…

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