なにやら雰囲気を察知した隼人は、強情に神楽の側から離れない蒼を引きずる様に連れて、再び公園で遊び出す。
最初は蒼はふて腐れて、ボールをコロコロとするだけだったが、やはり5歳と言う事もあって、すぐに隼人と一緒にボール遊びに夢中になっていた。

そんな二人の姿を確認して、神楽は、やっとの事で、沖田、土方、近藤の元に振り返った。

一時、何も口にする事なく、ただ三人を見つめていた
そんな風に見つめるだけの神楽だが、その姿は洗礼されていて、とても美しかった
三人の中では、まだまだ子供だったにも関わらず、目の前に居る女性は、まるで別人である

特に印象が変わって見えるのは、その丸みを帯びた体型。少し伸びた背も綺麗に見せる要因だった。
そして、ばっさりと肩まで切られた髪。
お団子頭か、寝癖頭しか記憶の片隅に残っていない三人にとっては、驚くと言う言葉では簡単に表せなかった。

少し笑った口元に、風に舞った桜色が、糸の様に口元に張り付く。
それをゆっくりと手で払うしぐさにドキリと胸を打たれたところで、今度こそ口を開いた

「総悟の事…大好きだった。大好きで、大好きで、周りの事なんてどうでもいい位、好きで、それでもイイと思ってた時に、妊娠が発覚したノヨ。」

間髪いれずに沖田は口を開いた
「何で言ってくれなかったんでィ!」

一度、神楽は顔をぐにゃりと崩す、あっと言う間に涙が下まつげに溜まった。
下を向いた事で、何かがポタリと落ち、砂の上に模様を作った。
そして上を見上げ…その時にはまた新たに溜まった涙が溢れそうになって居たが、何とか堪えるように、それでも声の震えだけはどうしようも無かった。

「言いに行ったヨ?嬉しくて、嬉しくて、絶対、お前喜んでくれるって思った…。っ…あたしの事大切にしてくれてるの分ってたから、きっと産んでくれって言ってくれると思ったヨ?」

「なン…俺ァ何もお前から…」

とうとう堪えきれなくなった涙が淡い頬の曲線を綺麗に沿った。
顔をくしゃくしゃに歪ませて、搾り出す様に口を開いた…
「言いに行ったネ。そしたら、そしたら、お前とゴリが話してたアル…」


そう言った直後、ハッと息を呑むように、沖田と近藤は視線を交す。
土方は何がなにやらさっぱりと言った表情で見入った。






.....

「総悟…もしチャイナさんに子供が出来たらどうするんだ?」

「子供?そんな簡単に出来やせんぜ近藤さん。」

「いや、しかし万が一と言う事もあるだろう…。付き合ってる以上はキチンと考えることも必要だぞ。」

「子供…ねェ。そんな事言われても思いつきやせんが、とりあえず今はいらないですねィ。俺ァあいつが居ればそれでいいでさァ。赤ん坊なんて生まれたらあいつ、絶対ェ俺の事無視してくるに違いねェ。だったらいらねェな。」



.....






沖田は、全て思い出した様に口を思わず覆った。

「私、言えなかったアル…どうしても言えなかった…。」

「でも、相談くらい…」
沖田はやっとの思いで口にした


「気付いた時には、お腹の赤ちゃん、6ヶ月だったノヨ!もぅ…どうする事もできなかった。
あたし、嬉しかったから、絶対絶対産みたかった。でも、総悟の事大好きだから、もし『おろせ』なんていわれたら、考えるだけで身がバラバラに壊れて行くみたいだったアル。おろしそうな自分も居そうで恐かったネ。でも、赤ちゃんが大きくなりすぎて…。生まれてきても愛してもらえないのが、辛かった…。お前の事、大好きだったからそんな事絶対耐えられなかった…。だから…ちゃんと言ったデショ?『大切な人が居る…』って…」

沖田は全て謎が解けたように、真っ直ぐ神楽を見ながら、そこの場へ愕然と立ち尽くした・・・

……To Be Continued…







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