act 22


あの後、結局、沖田と神楽は、気まづいまま下の階へとおりた。
エレベーターの中では、沈黙が続き、その沈黙に沖田が堪えられないと、土方に連絡を取り、結局皆と合流するまで、ほとんど口をきく事はなかった。

そんな二人の様子に、勿論すぐに皆気付いた。
また子は、トイレに行こうと上手く神楽を沖田から離し、お妙達と一緒になって、こうなっている原因を突き止めようと口を開いた。

「ね。何か……あった?」
お妙の控えめな言葉の直後、遠慮なしに、また子が「喧嘩ッスか?」と聞いた。
ミツバの心配そうな表情の目の前で、神楽は首をふるふると振った。
そして、思い出した様に、ポッと顔が朱色に染まった。
この様子に、何だか、自分達が心配している事とは異なるようだと、三人は顔を見合わせた。

「まさか……思い切って、沖田さんに告白しちゃったとか?」
また子の言葉に、神楽は、やっぱり違うと首を振ったが、その頬の色は、一段と濃くなった。
「告白されちゃったとか?」
お妙の言葉に、神楽はわっと、頬の色を極限まで染めた。
ミツバは、まぁ、と笑みを見せた。そしてその横でまた子は、わなわなと口を奮わせた。

「マジッスかぁぁっ!!」
また子の発狂、そしてお妙も、興奮している様だった。

「か、神楽ちゃん! つ、ついにやったのね!」
二人の事を、見守ってきたお妙達だからこそ、この神楽の態度は、嬉しいものがあった。
まさか、あの、沖田の方から神楽に告白するとは思っていなかった為、同時に驚きに駆られていた。
ミツバは神楽のちっさな手をきゅっと握り締め、「良かったね、神楽ちゃん」と微笑んだ。

しかし、次に発せられた神楽の言葉で、一気にその場のテンションは下がった。
「あの……告白、されてないアル」
三人の動きがピタリと止まった。
先ほどの神楽の態度は、どう見ても、それっぽかったはずなのに……。そんな風に三人が考えていると、続いて神楽の口が開いた。

「告白は……されてないけど……抱き締められた……アル」
三人の表情に、またもや華が咲いた。
「マジッスか?! 沖田さん、やる時きゃやるッスね〜っ!」
「神楽ちゃん、神楽ちゃん! どんな風に抱き締められたの?」
はしゃぐお妙達を前に、どんな風に? と考えたけれど、上手く言葉が見つからない。
足をもつらせた自分を支えてくれた時は、そんな風には思わなかった。
ただ、沖田の制服の匂いが自分の鼻をかすめた時、好きが溢れた気がした。だから、その直後に沖田のした行動が、神楽にはすぐに把握出来なかった。

心臓は破裂寸前なのに、変に冷静な自分が居たのも、あたふたと、心臓と同じように目まぐるしく感情の渦を巻く自分が居たのも同時に神楽は味わった。

それでも、確かな事といえば、沖田への淡い思いだけ。
だからこそ、純粋に沖田が言いかけた気持ちを、聞きたかった。
自分がずっと考えては言い出せない臆病な気持ちを、沖田が言ってくれる様な気がした。
でも……。

「上手く言えないけど……ただ、そんな雰囲気になってたのに……銀ちゃんが邪魔したアル」
何も銀八は、邪魔しに行った訳じゃないのだけれど、沖田同様、神楽の思考の中でも、銀八が邪魔をしたと言う事実が作られていた。

「もうっ! 先生ったら!」
お妙は頬を膨らせた。
「でも、神楽ちゃん、良かったわね」
沖田の姉であるミツバの言葉は、神楽のふくれっつらを、簡単に壊して、笑みを作らせた。
「でも、まだ、そうだって決まった訳じゃないアル……沖田、本当は何ていいかけたんだろ? 実は、私の事、からかったり、全然違う事を言おうとしてたんじゃ……」
そうだったら恥ずかしい。
そんな思いから、神楽の頬は又染まった。

「総ちゃんは、ちゃんと神楽ちゃんに、何か大切な事を伝えようとしたんじゃないかしら?」
「大切な事?」

確信めいた言葉ではあるけれど、この先は、本人の口から神楽の元へと届けられるのがベストだ。そんな風な思いをこめてミツバは笑った。
少し恥ずかしそうな神楽の体を、たまらなそうに、また子は抱き締めた。
「神楽ちゃん、いい匂いがするッス! きっと沖田さんも、そんな事思いながら、神楽ちゃんを抱き締めたっスね」
また子の言葉に、いつもなら返す言葉を言う神楽だったが、そうだったらいいなと思う気持ちが、素直に神楽を頷かせた……。



……To Be Continued…
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