act 21


「沖田……あの……」
いつもの神楽とは違った、汐らしい声だった。
その声を聞いた沖田は、神楽が離れてしまうかもしれない。そう思ったのかもしれない。
神楽の体を、より強く、きゅっと抱き締めた。
神楽の頬は、淡くそまった。夕陽の所為でもなんでもない。神楽の内側から発色されたものだった。

重なった心臓と心臓が、同じ様に音を奏でた。
どちらの心臓の速度も、ほぼ同じで、速かった。

たまに沖田の起こす行動が、妬きもちだろうと考えたりもして、ちょっと嬉しかった。
でも、これは、この行動は、一体なんと言う名で呼べばいいのか、神楽自身にも分からない。
自分の都合よく、考えてしまっていいものか? と言うか、もう既に考えてしまっている自分がいる。
神楽は唇をわななかせた。

「あっ、あの――」
「――チャイナ」

割って入った沖田の言葉に、神楽は目を見開き、体を強張らせた。
ほんの少しだけ香る、沖田独特の匂いに、頭がクラクラとする。
嫌なわけじゃない。むしろ嬉しかったりする。神楽はゴクリと喉を鳴らした。

「俺――」
言いかけた沖田の体。
けれどその言葉を遮るように、神楽は沖田から離れた。
いきなりの事であっけにとられた沖田だったが、その後すぐに神楽の方を見た。
そして、神楽の視線の先に、銀八の姿があった。

明らかに邪魔をされた。
沖田にしてみれば、大事な場面だったのだ。
高ぶったこの気持ちにちゃんとした理由をつけ、そして名前までつけた。
それを神楽にちゃんと言うつもりだった。流されたとでも、なんとでも言えばいい。けれど、いい加減流されでもして、変化をもたらしたかった。

その思いが一気に散った……。

神楽は気まずそうだ。沖田に対して、突き飛ばした事。
銀八に対して、まずい所を見せてしまったという所。

そして、その思いは、銀八にも伝わった。
たまたまお妙にばったりと出会い、神楽ちゃんを見てないままだけど、知らないかと聞かれたので、何となく、屋上に足を運んだだけだった。

今、銀八の視線の先には、頬を淡く染めたままかたまっている神楽の姿と、殺されてしまいそうな殺気を叩きつけてくる沖田の視線。

一気に冷や汗をどっと吹いた銀八は、空笑いをしながら、どちらにも声をかけずにそのままエレベーターの中へと消えて言った。



……To Be Continued…
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