息を呑んだ――――。
身構えていた体の体制を変え、神楽の方に体を向けた時には、刃は振り下ろされていた
近藤、土方は瞳孔をひろげたが、それに体がついていくのは遅かった
神楽は、刃が自分の方向に向くのは分かった
分かった上で避けられなかった。戦闘種族である自分が、夜兔である自分が、隼族の早さには
着いていく事が出来なかった。

そのまま立ち尽くすような形で、流れるように向ってくるその刃をまるで他人事の様に
見ていた。

はらはらと舞う様に、赤い模様が揺れ、落ちる
胸間、太股、肩、腹…それぞれ白い肌を覆う赤いチャイナ服が切り裂かれ、神楽の足元に破片を落とした

「いいねェ。こりゃあいい眺めだ。やっぱお前さんいい女だ。是非一度犯してみたいモンだろうよ。
夜兔の怪力と隼族の速さ、どちらが強いもんかねェ…」

両太股、腹周り、胸周り、鎖骨から肩にかけて、楽しむように刃で切り取って肌を表せていた
男は、感慨深そうに、言葉を出していた。
刹那、男は再び、無理やり巻き込まれるように、自分の周りをどす黒く、濁った朱のオーラが勝手に
纏わり着くのを感じた。
そして、再びそのオーラの持ち主に目を向けた

「いい加減にしろや…。」
地を這うような声を出す沖田の目は、既に据わっていた。
「そ、総悟!止めてヨ、止めるアル!」
男の手には、まだ自分のわが子、そして、沖田の子でもある蒼が居る
その男に抱えられている蒼からも、不安定なそれで居て、しっかりと殺意のこもったオーラが溢れ出ていた
男を刺激しないでとでも言う様に神楽は声を上げるが、沖田は神楽の方に視線さえ移さない

神楽の顔は歪む。確かに酷い事を自分はした
そんな事分かってる。だけど、だけど、間違いなく蒼は沖田の子。
大事な大事な子供。だからお願い、男を刺激することはしないで…。
願うように言う神楽だが、その声は沖田に届いてるかさえも分からない。

そして沖田は切っ先を男に向けた。
「殺す―――――。」

その切っ先から放つ殺気に、思わず皆その場から動けない
蒼の殺気はピタリと止んだ。そして沖田の方を見る

沖田の視線はその男から離れない。
神楽は思わず顔を覆った。歪めた貌からは、思い通りにならない沖田が歯がゆくて
動けない自分が歯がゆくて、適わない自分が情けなくて、わが子が心配で、心配で…、思いが零れた

「殺す―――――。」
もう一度、言った言葉は、まるで呪文かと思うほどに辺りをチリチリと異様な気で覆った
ぞくりとしたのは、何も神楽だけではない。近藤、土方、そして蒼にさえ分かり、
その男にも、しっかりと伝わった

沖田を睨むように視線を交わすと、ゆっくりとその腕の中から蒼を離した
地面に足のついた蒼は、一目散に神楽の元にと駆ける
走りこんでくる、その小さな体を、神楽は引くように自分の中に閉じ込めた。まるで離さないとでも言う様に…。

「分かってか、知らずか…どちらにしてもオメー、相当だな。」
沖田が向けている切っ先を沿うように、自分の切っ先を沖田にへと向けたのだった…。


……To Be Continued…







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