act 18

「えっと、次って、何処に行くんだっけ?」
修学旅行、予定スケジュールの紙を神楽は広げながら、隣のミツバと覗き込んだ。
「歴史館……だって」
ミツバの言葉に、神楽は心底不服そうに口を『エ』の字にした。
「歴史なんて、なんっにも面白くないアル」
「そうかしら? 私は結構好きよ。ほら、昔の文化なんかを知るって、何だか素敵だと思わない? いま新しい技術がどんどん進化しているのも、その昔があったからこそなのよ。ね、楽しいでしょ?」
何がどう楽しいのか、何がどう素敵なのか、全くと言っていいほど分からない神楽は、とりあえず愛想笑いだけを、ミツバに返した。

その神楽の肩を、通路側を隔てたまた子と、お妙がトントンと叩いた。
二人してそちらを向いた神楽とミツバに、同じように広げていた予定表のすみっこを、指差した。

『他校の生徒と一緒の見学になります。くれぐれも喧嘩など、間違ってもしない様に!!』
思わず顔を見合わせ、この内容の根源になりそうな人物の方に視線をやった。
「つーか、考えて見ればありえないっスよね。何で沖田さんの隣に晋介様が乗ってるスか」
「本当アル。私も今気付いたネ。やばくない? 軽くヤバクない? 現地に到着する前に喧嘩勃発しそうアル。あっ、でも一応、通路隔てた隣側はちゃんとゴリが座ってるアル」
本当は、こんな席順で乗る予定でもなかったが、元々座っている席を立たしてまで、一緒に座ろうなんて言う男達ではなく……。その結果が、いわば最悪の組み合わせだった。

神楽達が心配した様に、バスの中で乱闘騒ぎにはさすがにならなかった様だったが、到着し、バスから降りてみると、なんとも禍々しいオーラが沖田と高杉の周りを包んでいる。この短時間で、凄まじいストレスが溜まったとみれた。何となく沖田の側によりずらい神楽が、前を歩く沖田達の少し間をあけ、歩いている。

気まずい神楽を一人にしておけず、結局ミツバ達も神楽にと付いているのだが……その高杉のと沖田の雰囲気は、どんどんと荒んでいっている。近藤は必死に宥めようとしているが、どうやらそれも役立たずといった所らしい。
土方は、もとより、この状況を何とかしようと言う気はなく、
「放っておけよ」と近藤にいうだけだった。

「うわぁ〜。あの雰囲気やばいっス。ね、神楽ちゃん、沖田さんの隣に行った方がいいっスよ」
また子は言いながら、神楽の肩を持ち、前へと促した。
「な、何で私がっ……。私が行っても何も変わらないアル」
「何言ってるっスか! 神楽ちゃんじゃなきゃ、絶対駄目っス!」
神楽の意思はお構いなしに、また子はその体をぐいぐいと前に押しやる。
歴史も何もないといった感じの沖田は、ふてぶてしそうに歩いていた。
そこにひょっこりと言うか、半強制的にというか、現れたのは神楽、と、勿論、以下略の女の姿。
沖田は驚いた様に神楽をみた。
「な、なんでェ」
「べべ別にィ……」
好き勝手言ったまた子の言葉だったけれど、それは確実に的を得ていた。
沖田の周りに広がる禍々しい雰囲気は一瞬で浄化された。そしてそれは、高杉にとっても同じだった。
何だかんだ言っても、隣にまた子が居る。それだけで場が和んだのは、誰が見ても明らかな事だった。

息を撫で下ろしたミツバは、土方の隣へと、そしてお妙は近藤の隣へといった。
ミツバは土方の隣で、ふふっと可愛らしく笑う。
「やっぱり総ちゃんには、神楽ちゃんよね」
土方の方を見ると、口元を僅かにあげた。

神楽と沖田は会話となる様なものが、ほとんどないままだったけれど、その他はやっとの思いで歴史館を、堪能し始めた。特に、ミツバは本当に楽しいらしく、土方の腕を引いては、あちら、こちらと歩いている。
なるべく意識しない様にと沖田の方を向かずに、歩いていると、神楽の前が疎かになっていた。
気が付いた時には、何かにぶつかり、鼻を押さえる始末となった。
「ご、ごめんなさい……」
鼻を押さえ、痛みを堪えながら言葉を発し、前を向くと、男子高校生。しかも確実に銀魂高校ではない。
沖田は何処だと思えば、なんと神楽を置いて先にと行ってるようだった。照れ隠しのつもりか、只単に一緒にいたくなかっただけなのかは分からないけれど、神楽は安堵の様な、こまった様な表情をさせた。

しかし、よもや自分が火種になってどうすると、神楽は急いで踵を返した。しかし、肩を掴まれたかと思うと、強引に引かれ、今度は後頭部をその男子の胸でぶつけてしまった。
頭を押さえつつ、もういいや、無視してしまおうと手だけ振り払ったつもりだったが、反対に力強く掴まれてしまった。
「ね、君何処の高校?」
神楽の瞳を興味深そうに覗くと、男二人組はそう切り出した。
(うわっ、最悪アル。こいつナンパ野郎アルカ?)
神楽はあからさまに嫌な顔を表に出すと、
「銀魂高校です。ではサヨウナラ」
とその手を引き離した。が、また肩を掴まれた。その掴んだ男の肩を掴んだ手がひとつ……。

「――――何やってんでェ?」
言った男の台詞は、間違いなく神楽へとむけられている。
自分が先にいった癖に、とか、何で此処に? とか、思った事は山程あったけど、とりあえず、口から出たのは、一言だった。

「あっ……ナンパ? されたアル」



……To Be Continued…
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