act 19

沖田はそのまま神楽から、その男の方を半目で睨んだ。
すぐに男は怯んだ。しかし自分も男だ。男の意地を見せようじゃないかと同じ様に半目で沖田を睨んだ。
「何だ? 文句あんのかよ?」
彼氏ならアウトだと思った。顔よし。何だか見た目で喧嘩なれしてそう。
と言う事で、一応すぐに逃げる準備はしておいた。しかし違うなら望みはある。男達は喉を鳴らした。
ここでトドメの一言を男達は放った。
「お前コイツの彼氏か何かかよ」
神楽の目が沖田を捕らえた。そしてすぐにキョロキョロと視線を逃がす。
この神楽の様子に、男達は何となく勝利を確信した。

「ちげーな」
はっ。沖田の言葉の後に勝者の笑いを男達は交わした。
男達は神楽の手をぎゅっと握った。
「じゃぁ、テメーには関係ねーだろ? すっこんでな」
神楽の手を強くひくと、そのまま足を出した。
「だからってテメーらが掴んで良い手でもねーよな?」
男の掴んでいる場所のすぐ上、沖田は同じように神楽の手を掴んだ。
口元をあげた顔さへ格好よく見えてしまうのだから、そりゃ腹も立つ。
そんな男達を他所に、神楽は口を唖然とさせている。
あの沖田が……?、これは喜んでもいいのだろうか……。
自分が口を滑らせたとは言え、これは沖田の妬きもちだと言っていいいのかどうかが、神楽は気になってしょうがないらしい。
周りの視線が神楽と沖田に刺さる、刺さる、刺さる!
あのキスをした沖田と神楽が、今度はナンパ野郎で何だか面白い展開になっている!
そんな話題で周りは盛り上がりはじめ、当然土方達の耳にも入り、遠くから既に沖田達を、鑑賞しているらしかった。
男達もその視線に当然気付く。
「だ、だからと言って別に俺のモンみてーな言い方すんじゃねーよ」
「俺のモンねぇ?」
沖田は余裕にくっと笑った。ココで沖田は神楽のへと話題を振った。
「おい。オメーは俺のもんかどうかだってよ?」
「は、はァ!? 何で私に振るアルっ!」
沖田が神楽をからかいたいがために話を振ったのは、もう確信犯的だった。
神楽の真っ赤な顔を見ながら、してやった様な笑みを沖田は浮かべている。
「つ、つーかそんなの、自分で考えるヨロシ!」
沖田から視線をそらし、ツンとそっぽを向いた。
皆の視線は沖田の方へと集まる。
「自分で考えろ……か」
沖田は一度視線を下に落としたが、ふっと上げた。
「別に俺のモンじゃねーが、お前らにやるつもりもねー。つー事でコイツは貰っていくぜ?」
パンっと神楽に触れている手を振り払った。
あまりに冷静にするもんだから、男達はボー然とその行動を見ていた。
が、正気に戻った直後、すぐに神楽の手を掴みその場を離れようとする沖田の肩を掴んだ。
ナンパには失敗するは、彼氏でもない男にそのまま女を取られたままなど、男の面子にかかわる。
しかし振り返った沖田の表情を見るなり、ヒクリと喉を鳴らした。

「遊びは終りだっつーんでェ。俺が笑ってる間に消えろィ。じゃねーと保障しねーぜ」
「な、何の……?」
すぐに聞かなきゃ良かったと男達は思った。
「試してみやすかィ?」
聞き終えた直後、首元をねじ上げられた。
「二度とこいつに触ンじゃねェ」
さっきまでからかい半分に神楽に話を振っていた人物とは思えない様な、殺気を孕んだ視線に高速で首を振った。
それほどまでに嫉妬するならさっさとモノにすりゃいいじゃねーか。
思わず逃げていく男達は心の中で毒づいた。
ちらりと神楽の方を見て見れば、何だか頬を染めている。
チクショーと言わずには居られない。だったらさっさとくっついちまえよ! うっとうしい。そして紛らわしい!
そう男達は最後まで毒づいた。あくまで自分の心の中でだったが。


「何がナンパだ。ばっかじゃねーの」
「だっ、誰がっ! つーか、本当にナンパだったアル」
自分は別に嘘なんかついてない。本当だもの。そう言う様にぷくっとほっぺを膨らました。
その神楽のほっぺを沖田は手で掴み、中の空気を抜いた。
「何だよ。ナンパされたのが嬉しかったってーのか?」
その表情は、先ほど男に向けられた表情とは、うってかわって、どちらかと言うと、余裕がない様にも見えた。
こんなにも周りにも分かりやすく、そして半分以上相手にも伝わりかけているのに、
自分達を呼ぶ名称は、まだまだ友達以上恋人未満な訳で、核心的な言葉を、沖田は言えないでいる。
妬いたなど、口が裂けても言えるはずもないが、その顔は神楽の気持ちをくすぐった。
「嬉しかった……アル」
一瞬眉間に皺を寄せた。その後わざとらしく舌を鳴らすと、神楽の手を自分の手に絡めた。
「離れてると何するか分かンねー。つーか先になんざ行くんじゃなかったぜ」
神楽の手を引き、歩く沖田はそうブツブツと繰り返した。
掴まれた手は、最初掴まれたナンパ野郎と同じ、人間の雄なのに、こうも違うものなのか……。
神楽は感心したように、その繋がれている手を見つめた。
ドキドキして、緊張して、でも甘くて……。でも不確かなもの……。
沖田の手に、ぎゅっと力を込めた神楽は、小さく呟いた。

「お前が……助けに来てくれた事が……アル」




……To Be Continued…
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