act 16

神楽の元にまた子がやってくる時には、もう興奮の絶頂時だった。
後ろに後ろにと来た道を引き返すにつれ、聞こえてくる詳しい話……。
話の真相を確かめるべく……、と言うか、こんな面白い事が起こってるなら、神楽の隣から離れなければよかったと、鼻息は荒い。

生徒の波をすり抜けていくと、見えてきたのは神楽の頭。
また子は心臓の音を跳ね上がらせた。

「神楽ちゃっっ……」
話していたが、思わず口を噤む。なんともオイシイ状態がそこにはあって……。
また子の後ろから、ミツバ達も追いかけた。
そして、そこには映画の様なシーンが繰り広げていら――――。

「はっ、離してヨ!」
「何で逃げるんでェ」
沖田は神楽の手をぐっと掴んだまま、今だ離していない。
神楽の方は、恥ずかしいからと、その手を離すのに一生懸命ぶんぶんとふっている。

「な、何でもいいから離すアルっ!」
何だかんだいっても、確かに生徒は居て、見世物になるのは真っ平御免だと沖田は強く思った。神楽の手をするりと沖田は離す。
離された事を確認した神楽は、沖田にすぐ背をむけた。
けれど、今度はまた子の顔が其処にある。思わず神楽は顔をひきつらせた。

「神楽ちゃ〜ん。何だか面白い展開になってるじゃないッスかぁ? まったく神楽ちゃんも隅に置けないっスねぇ?」
「なぁ! ち、違うアル! これは事故っっ――」
「その割には、真っ赤ッスよ? 顔」
もう、また子は、完全に面白がっている。いいおもちゃ道具を見つけた様に、目をキラキラ? とさせて、その表情はケケケと悪魔でも舞い降りてきたかの様だった。

また子の後ろからも、お妙やミツバの姿が見えた。
神楽はそのまままた子の手を掴むと、その生徒の中をずんずんと歩いていく。
通りすがり、また子はお妙の手を掴んだ。お妙の体が反転すると、お妙はミツバの手を掴んだ。
神楽を先頭に、また子、お妙、ミツバ……とずるずると体が連なっている。
生徒の先頭に出た神楽は、そのまま、廊下を突っ走った。勿論、それに繋がれている以下三名の体も一緒に……。



「で? どうだったの?」
「えっ……何がアルか?」
お妙の言葉に、神楽が首をかしげたが、じれったそうに、再び口を開いた。
「もう! 決まってるじゃない! キスの感想よ!」
お妙から出てきた言葉に、皆、興味津々といったところだった。
「か、感想って……そんなの分からないアルっ」
「またまたァ! 今更照れたってしょうがないっスよ! ほら、ここには私達の他だれも居ないし、さくっと言っちゃってくださいっス!」
また子は、本当に楽しくてたまらないらしい。隣のミツバが、「ま、またちゃん落ち着いて……」と宥めるほどだった。
「ほ、本当に、よく分からなかったアル……。だっていきなりだったもの。あっと思った時にはアイツの顔がびっくりする位ちかくにあって……。あいつの唇が……」
話してる側から神楽は思い出したらしかった。
ボッと顔を赤らめ、ごにょごにょと言葉を濁す。
「ね! ね! 神楽ちゃん! 嬉しかったっスか?! 事故ちゅーだったとはいえ、正直嬉しかったんじゃないっスか?」
また子の言葉に、神楽は考えるそぶりを見せた。そしてまもなく自分の中で答えが出てきたようで、けれどそれを言葉にするのは恥ずかしいと、ゆっくりと頷いた。
また子は、狂喜乱舞した。思わず遠くへ届くほどに声まであげて……。
神楽は急いでまた子の口を塞いだ。「もうっ! また子の馬鹿ぁっ」そう顔を真っ赤にしながら……






……To Be Continued…

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