緋色の瞳を大きく開く。
できればもう一度先ほどの台詞を言ってくれないだろうか…。そう沖田は思う
目の前の子供は、純粋な瞳をキラキラさせながら自分を見ている
その、神楽に瓜二つの瞳は、期待をしているようにも見えた。
沖田は、神楽がよくパピー、パピーと言っていたのを思い出す

父親?パピー?
今だ状況が掴めない沖田に、土方と近藤が視線を寄せた
視線がかち合うと、二つの視線はすっと逸らされる。しかしその行動がより自分の中にある
一つの仮定を、確定にへと導いた。

(俺の… …)
まだ信じられない気持ちを飲み込む。
キラキラと光る、その吸い込まれそうな瞳を見ながら、思わず手を差し出そうとした時だった。
ピリッと、空気を切り裂く様な殺気がそこに居る全員に分かる様に感じられた。
ほぼ同時に、全員でその殺気を手繰った。

近藤は息を呑む。土方もにわか信じられないような面持ちで双眼をおっぴろげた。
沖田の視線の先…。其処には男の肩に担がれてて居る、蒼が居た。
その不安定な肩の上から、思わず冷や汗が出そうになる程の殺気が漏れている。
恐らく自分を担いでる男に向けたものだろうが、まだ年齢が僅かにしか経ってない不安定さが原因で、その周辺にまで当たり散らす形となっていた。

沖田は、目の前の男の子に神経を持っていかれ、今更ながら、もう一つの存在に気付いたトコだった
遠目にはよく分からねェと、足を踏み入れた瞬間だった。
男が動き、神楽の喉元に鋭い剣の切っ先を突きつけた。ほぼ同時で、茂みからその黒い隊服を纏った男たちが姿を現し、側に駆け寄った。

神楽は、体を動かさないまま、視線だけを沖田にやった。
その目の前で、やっぱり居やがったか…と男は言葉を吐き捨てる。そして僅か口元をあげ笑った。
自分達が、側に駆け寄る事で、その小さな少年から滲み、溢れ出てきた殺気の糸がぷつりと切れた。そして男の背から、顔を上げ蒼の視線が沖田の視線とかち合った。

「父ちゃん…?」

一体先程までの殺気はナンだったんだ。本当にこんな年端(としは)もいかない子供が出したものかと疑った。

子供らしい声を出しながら、男の背中から顔を上げた少年を見た瞬間、各々が思わず「な…!」と口を開いた

隼人と同じハチミツ色の髪に、隼人と同じ整った顔。しかし何よりもまず驚いたのは、その瞳の色だった
沖田と全く同じ緋色の瞳。人を吸い込むような深い緋色は、クリクリと大きく、全身を通して見てみれば、沖田の幼少の頃のものと瓜二つだった

神楽の口からは、まだ何も聞いて居ない。しかし、近藤、山崎、土方は勿論。本人である沖田にさえ感じ取れた。
しかし会った事も無い自分が何故子供にパピーと分かるのか?やはり似ているからか…。そんな思いに一瞬気を取られたが、神楽の喉元に切っ先が向けられたままだと気付き、すぐに全員は腰に手をやった

「ま、待つアル!」
神楽の少し低く、女の声に変化した声が響いた。

「この女も、テメーらも、動けばこのガキを殺す…」
男はにやりと口を開け笑う。神楽の顔は引きつり、待ってと声をかけた。
人質を取られていては、動けない。しかも捕らえられているのは今知ったばかりの自分の息子。
さすがに沖田も冷静さを欠かかれた。ジリっと足元を僅かに動かすが、男の視線が落ちた所で止めた

シンとした空気の中を切ったのは蒼の声だった。気付いた時には当たり一面先程より、更に深い殺意が漂い始めた
「オイ…母ちゃんに触ってみろ、俺がぶち殺してやらァ」
男の背中で項垂れるような形となって居るが、その目だけは違っていた。
とても子供じゃない様なオーラを纏い、その緋色の瞳には影が落ちている

「蒼!やめるアル!ちゃんとマミーの言う事聞くネ!」
神楽は思わず声を上げた。すると男は切っ先を喉に突きつけた。神楽の喉からプッと血が僅か飛び散る。
「触るなって言ってンだろィ…。殺すゾ…」

思わず全員がゴクリと喉を鳴らした。男の背に担がれて居るものの、その殺気はビリビリと強くなるばかり。
何処にこんな度胸が、この小さな体に潜んで居るのかと…。
「蒼!わ、私が人質になるアル!だからその子を離すアル!」

沖田らはギョッと神楽を見た。しかし神楽は真剣そのもので真っ直ぐな瞳を見せたのだった

……To Be Continued…

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