act 12

「脅されてる?! アイツがか?」
出してしまった言葉を、沖田と高杉の表情に照らし合わせてみて、ようやく理解が出来たのは、備品室へと呼び出された土方と近藤だった。
シンとした部屋は、沖田達姿しかなく、その空気は彼らの周りまで冷たくしていた。

「あァ、それも結構ヤバイ奴に……」
「マジかよ……。相手は誰なんだ?」
沖田の話で、理解は出来たが、まだ信じられない様な目をしている土方が言葉を出した。
だが、土方の問いには沖田も高杉も、答える事が出来ず、ただ首を振った。
そこに付け足すように、今度は高杉が口を出した。

「アイツは何もしゃべらねェ。多分この先も口を割る事はねーだろう。二度試したが駄目だったんだ。絶対に無理だって断言できらァ。――とにかく、後は外から探るしかねェ。しかもアイツに分からない様に……。だが、二人じゃ無理だ。徹底的に普段の行動を観察するには人数が足りねェ……」
だから自分達に声をかけたのか、と二人は納得した。

確かに二人とも、神楽の様子がおかしい事には少し前から気になっていた。しかしこんな大げさなものではないだろうと思ってはいたし、まして、お妙やミツバ達には何も知らせないと言う沖田達の覚悟から見ても、軽く考える事は出来ないだろうと察していた。
とは言え、何をどうするものか……。

ただ見てるだけでは神楽の憔悴が酷くなる一方だと言うのも分かってはいる。だが相手は神楽だ。凶暴で、女だてらに腕っぷしも強い。よほどの事がないかぎり、今の状態にはなりえない……。沖田達は神楽の周りで、例えば人質にされる様な人物を想像してみたが、頭には浮かび上がらなかった。あの神楽が手出しできなくなるような、あんな泣き叫ぶ様な状態になるまで追い詰められる人物が、何処にいて、何をどうして追いやっているのか、全くと言っていいほど浮かび上がらない。

大抵の事は、自分達が手をださなくても、神楽であれば解決してしまうだろうと思う。仮に相手が強盗だろうが、アイツであればと飛びかかって行くだろう。だからこそ、沖田の相手が務まっていたのだ。だが、今の神楽は全く抵抗をしていない様に思える……。

「チャイナさんは、大の動物好きだが、例えばその動物を人質に取られているとしたらどうだ……? 考えられなくはないだろう?」
近藤の言葉に、沖田は考え込むそぶりを見せた。しかし納得のいかない沖田は、おもむろに口を開いた。
「確かにその線も考えられる。だが、あいつなら動物を抱きこみながら、相手の鼻をへし折ってそうだと俺は思うんですが……」
「その動物をどこかに隠している……と言うのなら」
近藤が再び口をはさむ、しかし沖田もその言葉に返した。
「だったら俺らなり、少なくても姐さん達には言ってると――」
「誰にも言うなって脅されてるから……とかはどうだ」

沖田はますます考えこんだ。二人の会話を聞いていた高杉と土方も眉間に皺を刻んだが、やはり言葉は出てこなかった。
「その線は置いといて、結果的にアイツは何に、苦しんでいるんでしょう?動物だろうが、人だろうが、結果その相手は、アイツに何をして追い詰めてるんでェ……」
問題は其処だ……。皆が無言になった。

その相手は、結局の所、神楽に何かをしてるんだろうか……。そう考えると、嫌な汗が沖田達の背中に伝った。
いやいや、まさか……考えられねェ……。
思った時には皆首をひねっていた。あの神楽が? そんな…。考えたくもない――。
「けど、そこら辺しか、とりあえず……、とりあえずだが考えられねェんだけどよ……」
土方は呟くように言った。その土方の目を、沖田が鋭く睨んだ。考えるだけでも許さないとでも言う様に……。土方が思わず喉を鳴らすと、沖田は無意識に舌をならしていた。

けれど実際、沖田の方も、嫌でも考えてしまっていた。
 
そうにせよ、違うにせよ、とりあえず早急に動く必要がある。

議題もそこそこで、沖田達はとりあえず教室へと戻った。胸の中のモヤモヤは全く晴れていない。それどころか、土方と近藤の方にまで、とばっちりが行ってしまい、嫌な感情が占めた。
そんな沖田や高杉達は、まだ神楽が戻っていない事を知り、表情が曇った。しかし彼らは信じられないものを見てしまう……。
「まもなく教室へ入ってきた神楽に、沖田は話しかけようとした。それを高杉が止めたのだが、明らかに、神楽の様子が違っていた。明るく、そして強く、可愛く……。

沖田、今日のテストは負けないアルヨ!」
たった今さっきまで自分達が見た神楽と、最近のおかしかった神楽など微塵も感じさせない程の、今まで通りの【神楽】だった……。



……To Be Continued…

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