act 4-2


携帯がボトリと地面に落ちた。たった今携帯を持っていた神楽の手は、その携帯を見ていた瑠璃色の瞳は、信じられないほど震えている。
厭らしい音と一緒に見えるは、朝の光景…。
そしてスカートの中だった。

「何でっ…。何でェッ…。どうしよ…どうしよぅ…。」
玄関から靴も履かず、逃げ込む様に走りこんだ先は体育館裏。そして神楽は、その場に力なくへたり込んでしまった。
冷めればいい…。何もかもなかった事にできればいい…。
そうおもった出来事が、悪夢として自分に降りかかってきてしまった。
カチカチと歯と歯がぶつかり合った。落ちた携帯の画面は再生が終わり、その物語の終わりと、新たなスタートを告げている。最悪で悪夢な…。

「オイ。」
背中にかかった声に、神楽は心臓が飛び上がる思いをし、目を見開いた。震える手で携帯を拾い上げると何処のボタンを押したかさえ分からない程の速さで動画を、そのページを消した。振り向かないまま平常心を駆り立て声を発した。
「な、何アルカ…。」
相変わらず心臓はバクバクとその音を神楽の体全体に刻みつけて居る。この声、このトーン。振り向かなくても分かる。
沖田だ…。
「何って…。オメーこそこんな所で何してんでェ。」
「わ、私?あ、あれアル。これから帰る所だったのよ。」
背中に疑わしい声がかかる。
「靴も履かずにか?」
「い、急いでたから…。」
「体育館と校門を間違えたって?」
神楽は言葉に詰まった。
何も言えなかった。下手に口を滑らすと、大変な事になりそうだと悟った。
神楽はまだ沖田に背を向けている。今の沖田の態度からして、携帯の事には気付いてない様だった。
もし、知られたら…。考えただけで神楽は震えた。そんな神楽の背中の後ろで気配がした。
「ほら、帰るぜ。」
手を差し伸べてきたのは、考えなくても沖田だ。此処で初めて神楽は沖田を見上げた。差し出された手を、じっと見つめると、ゆっくりとその手を取った。沖田の手はいつもより10倍優しく、10倍温かかった。
ゆっくり神楽は立ちあがる、けれど此処で、自分が腰を抜かしていたと気付いた。そして気付いた時には膝をカクンと折っていた。

「あっぶねー。何腰抜かしてんでェ。」
ぶっきらぼうに言いながらも、沖田は優しく神楽の腰へと手を回し支えた。至近距離、斜め上、沖田の顔…。
「あ、ありがとう…アル。」
「おぉ…。」
一歩、踏み出しては見たが、カクンと、足は支えてくれなかった。
「しゃーねーなァ…たくっ…。」
「おわわっ!な、何する――。」
「ちょ、お前暴れんなって…。」
ひょいと抱き上げられた神楽は、そのまま沖田の腕の中で暴れた。暴れる中、沖田の顔がまん前に来ると、息を呑み急に大人しくなった…。
「動けねーんだろィ?大人しくしててくだせェ。ま、歩ける様になったら下ろしてやらァ。」
本当に大人しく神楽は、コクンと頷いた。
本当は、告白するつもりだった。もししていたら、沖田は何て返事していただろう…。神楽は沖田の腕の中で思った。こんな事をされたら、本当に期待する自分が居る。大切にされてるって、そう考えてしまう…。

ほんのちょっと前まで真っ白だったのに、今はぐちゃぐちゃに染まった自分が、悲しくて、惨めで、もうどうしていいのか分からなかった…。


……To Be Continued…

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