act 11


もうここまで来たんだ。
何かあるとは思っていたが、確かに沖田と高杉は確信した。
神楽は何か隠している……。
それも尋常ではない事……。

神楽は、興奮してちゃんと話せる状態ではない。高杉は沖田にまずはお前が冷静になれと神楽から手を退かせた。
そして高杉は改めて神楽に声をかけた。とても低いトーンで、けれど優しく……。

「チャイナ。何を隠してやがる」
「だから何も隠してないアル!!」
保険室に、ビリビリと神楽の張った気が飛び散った。その迫力は、二人を圧倒させた。出来るなら何が何でも吐かせたい。沖田にも此処まで知られてしまった以上、何も手加減する必要性がなかった。
先ほど、自分の無力さに腹を立てて居た高杉は、強くそう思った。此処で神楽の言う事を聞くことが神楽を救うことには、もう繋がらないだろうと。

「あっち行ってヨ〜。一人にしてアルぅ……」
壊れる様に神楽はそう言った。しかし此処で引く必要性はない。もうなくなったのだ。ネックであった沖田と言うキーワードに触れてしまった以上。
「チャイナ……。俺に話して見ろィ。何がなんでも助けてやる。絶対ェお前を守ってやる」

守ってやる?そんなの無理ヨ。だって沖田に知られたら、皆に知られたら、私きっと死んじゃうアル……。
神楽は静かに首を振った。沖田は苛立ってくるその感情を必死に押し殺した。
「ね、もう大丈夫だからほっといてアル……」
ぐちゃぐちゃの顔で神楽は必死に微笑んだ。
出そうと思った言葉は山程。それでも高杉と沖田は飲み込んだ。特に高杉に至っては、本当に込み上げて来る自分の感情を隠すのが精一杯だった。これじゃさっきと全く変わらねーじゃないかと。

「俺じゃ力になれねー事なのか……」
高杉が神楽の顔を探る様にいった。
「なれないアル」
神楽は即答した。
「どーしてそんな事テメーに言える事が出来んでェ。そんな事言って見なきゃ分かんねーだろう」
沖田は怒りを堪えるので声が震えた。神楽はスンと鼻を啜りながら真っ直ぐに沖田を見た。
「分かるアル」
「何ででさァ!」
堪えきれないように沖田が声を張ってしまった。
けれど、神楽の顔がくしゃりと歪んだので声に詰まった。

「――言ったら私死んじゃうアル。」
吐き出された言葉は沖田と高杉を凍らせた。
神楽の吐き出した言葉は間違いではなかった。ただ、死んじゃう、ではなく、死にたい。だったが……。
他人の手でイかされ、それを録音された。神楽にとってはそれくらい追い込まれてしまう事だった。
アレを知られるくらいなら、もういっそ居なくなってしまいたい。沖田の側から、永久にだっていい。離れてしまいたい。本気でそう思っていた。

自分でも知らなかった自分の奥そこの部分。太股に伝わったあのぬるぬるの液体は自分の内側から出てきたもの。
しかも自分の意思じゃないと思いたいが、それは確かに自分の体の意思で出てきたものだった。
むず痒い様な感じの中、18歳の自分とは違う、多分もう一人の人格が喜んでた。もっと、もっとって……。
そんな事実から逃げ出したくても、結局は逃げられない。
高杉がそんな自分を知ったらどんな顔をする? 沖田がそんな自分を見たらどんな目で見られる?
 
そんなの耐えるくらいなら、死ぬほんの一分程の苦しみを我慢する方が、きっとマシ……。絶対マシネ……。

「出てって。私の事はほっといてアル」
「ほっとける訳ねーだろうっっ!」
もう我慢できるかと、沖田が神楽につかみかかろうとした瞬間だった。その声を塞ぐように、実際沖田の口を塞ぎながら高杉は後ろへと下がった。

「分かった。俺たちゃ、もうお前にかまわねー。それでお前はいいんだな」
一瞬、神楽が傷ついた寂しい表情を浮かべた。けれどすぐに笑った。
「いいアル。そうしてヨ」
沖田の目は血走った。
「何考えてんでェ。頭イってんじゃねーのか?!」
沖田はそのまま高杉の胸倉を掴んだ。しかしさすがの高杉だ。顔色一つ変えず、そのまま沖田をずるずると部屋の外へと連れ出した。


聞こえて来たのは、神楽のすすり泣く声。
沖田は間髪入れずその戸へ手を伸ばした。けれどそれを高杉が掴んだ。
「あいつは何も言わねー。追い詰めるだけだ。だから外から探りを入れる」
高杉の言葉に沖田は、やっと冷静さを取り戻した。
「探れんのかよ」
「探るんだ。ただし、これは女には一切漏らさねー。だが協力者も必要だ」
高杉の言葉に、沖田は瞬時にあと二人の顔を思い浮かべ、微か頷いた……。





……To Be Continued…

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