act 12

「ちょっ!マジっスか?!」
また子は勢いよく階段を駆け上がろうとした。しかしすぐに足を止めた。
「わ、私はいいから、早く上に…。」
視界があっと言う間に雨に埋め尽くされる。ミツバは額を拭いながら言うが、また子は当然、神楽、お妙も首を振った。しかしそんな僅かな合間に雨は土砂降りへと変化した。また子が手をミツバに差し出すと同時、頭に何か被せられた。高杉の制服だった。

見てみると、同じように、ミツバの頭の上から、お妙の頭の上から、それぞれ制服が被せられていた。

「ほら、コレ着てろ。」
素早く脱いだ沖田は、制服を神楽の頭へと被せた。神楽は驚いた表情をしたが、すぐに可愛らしくはにかんだ表情を見せた。ただし、雨に邪魔され、沖田の視界には映らなかったが…。
土方はすぐにミツバを抱かかえると、そのまま階段を駆け上がった。ミツバはおろしてと言ったが、それに耳を貸す様子は全く無かった。しかし土方が、いくら体力馬鹿といえど、まだ階段の半分を上った所、先は長い。土方の息があがった所で、俺が代わる、と沖田が申し出た。

男としての面子、彼氏としての面子、そしてプライド…。しかし、とろとろと駆け上がっている所為で、明日もしミツバが熱をだしてしまえば、せっかくの修学旅行が台無しになってしまう。プライドを投げ捨てても、ミツバが悲しむ様な事は避けたかった土方は、素直に沖田と代わった。ミツバは、沖田に、ごめんさないね。と謝ったが、ミツバだけに見せている弟の顔で笑うと、そのまま駆け上がった。

その後も同じように高杉、そして近藤、体力が続く限り全力疾走で階段を駆け上がり、とうとう頂上へと辿りついた。寺の中へと駆け込むと、どうやら他の生徒も、突然の豪雨に驚き駆け上がってきたのか、息を上がらせていた。

高杉や沖田はシャツを脱ぎ、力強く絞った。ドシャーと大量の水がシャツから落ちると、パンパンと更に水を弾き、冷たいといいながらももう一度袖を通した。しかし反対に神楽達の方は、途中から被せられた制服のおかげで、濡れはしたが、ビッショリになる程ではなかった。
お妙は、微笑みながら近藤に制服を返し、ポケットからハンカチを取り出し額に当てた。近藤は感動し、お妙に抱きつきそうになった。だが、自身がびしょ濡れになってるのに気付くと、ぐぬぬと一生懸命に我慢した。

「十四朗さん。ありがとうございました。」
「別に、結局全部登れなかったしな。礼なら俺じゃなくて他の奴に言えよ。」
土方は言ったが、ミツバはゆっくりと首を振ると、もう一度、ありがとうと微笑んだ。ちょっと照れた様にそっぽを向いた土方は、視線を合わせないまま、おう。と声を出した。

「うぅ〜。何か風邪引きそうっス。」
ブルルとまた子は震えた。
「コレ着てろ。ないよりマシだろ。」
高杉は、また子が一度返した制服をもう一度また子に持たせた。
「だ、駄目ッス、風邪引いちゃいますって。」
「俺はひかねーよ。」
「――バカだからッスか?」
ギロっと高杉が睨んだと同時、だったら返してもらおうじゃねーか。とまた子に持たした制服を掴んだ。
「じょじょ、冗談っスよ。やだな〜もぅ晋介様ったら。」
言いながら、そそくさと高杉の制服に袖を通し、これみよがしに、あったか〜いと引きつった笑みを見せた。高杉は一時冷めた目を向けていたが、軽く息を吐くと、やれやれと言った面持ちでまた子を見た。



「お、沖田。はい、コレ…。」
伺うように神楽は沖田に制服を差し出した。あぁ、と受け取ろうとしたが、間も無くギョッとした表情を沖田は見せた。
「お、おまっ…。」
「何?」
キョトンとした神楽だったが、沖田の視線をそのまま追うと、すぐに気付いた。わっと声を上げると、差し出した制服をもう一度使い、前を隠した。

桜色した可愛らしい下着が、シャツ越しに透けている。雨に濡れたのは神楽だけでは無かったが、上の制服を脱いで居たのは神楽だけだった。確かに沖田には見えないよう、前を隠していたが、後ろの部分はシャツにピッタリとくっ付き、そのラインと色を、くっきりと浮きだたしていた。

「おまッ!何で!」
「えっ。だ、だって昨日のとは違うのにしたアル!」

それじゃぁ意味ねーんだよ。沖田は額を覆った。昨日見かけたのは淡い水色の下着。天気予報では、天気が崩れるとの事。だから止めとけと釘をさしたのだった。しかもまさか今更気付いたのだが、神楽が上の制服を脱いでいるとは思いもしなかった。

雨に濡れた胸元は、くっきりと神楽の胸の形を強調し、桜色がそれを更に浮かせていた。
対する神楽は、天気の事など何も聞いてなかったし、そもそも今回、何を期待した訳でもなかったが、ちょっとでも沖田と進展を見せたいとの思いから、気合を入れまくった下着は、黄色や水色、桜色に黄緑…と白い下着など一枚も持っていない。だから沖田に言われた通り違う下着にした所で、結局こうなる運命だったのだ。

沖田はイライラしながら神楽に、もう一度着せた。
確かに神楽だって恥ずかしい…。けれどこんな形で、沖田の機嫌を損ねるとは思わなかった。
「ご、ごめんアル。」
何故自分が謝るのか、正直腑に落ちない。けれど沖田の機嫌が悪いままなのはもっと嫌だった。俯く顔を少しあげて沖田を見てみると、沖田の方も何だかバツが悪そうに頭を掻いていた。
神楽は唇を噛んだまままた顔を俯かせた。

「ま、ぁ…。とりあえず、ほら、中に入らない?美味しい甘味処もある事だし…。」
お妙が、この微妙な雰囲気を汲み取ってくれ声をかけてくれたので、神楽は沖田の方をちらりと見ながら、本当は二人だけで入るはずだったその場所に、足を向けた…。



……To Be Continued…

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